ビジネスホテルプリンスは四国の香川県高松市にある出張滞在や観光の拠点として好評いただいているファミリー経営のホテルです。

kabu_aqua2009

アクア・スペシャル < 戻る


風林火山と来年の相場予想

2009/12/22 vol.435

株式投資を行っていますと、利益になることもあればその逆のときもあります。なぜそうなったかについて振り返ってみることは投資力アップの第一歩です。

株式投資の結果を左右するものとしては四つの観点があります。一つ目として、経済環境や企業業績の行方など。二つ目が相場の中長期のトレンドや外国人投資家の動向など。三つ目に相場の短期的なトレンドや相場の地合い、そしてテーマ性など。四つ目として、投資家自身の感情の起伏や資金の出処進退の技術などがそれにあたり、これら四つのポイントは以下のように区分されます。

・経済環境(景気の良し悪し、企業業績の見通し)・・・・・「天の利」

・相場の中長期トレンド、外国人投資家動向・・・・・・・・「地の利」

・足元の相場トレンド 地合いの良し悪し 投資テーマ・・・「時の利」

・投資技術(資金管理や出処進退)、感情のコントロール・・「人の利」

ここで言う「利」とは、状況や勢いというような意味です。このように分けてみますと、儲かったときというのは上記のような「利」が複合的に重なったときであることが分かります。反対に、損したときというのは上記のいずれかの判断で明らかな誤りがあったり、過剰な期待や恐怖のままに売買を行ったり、タイミングなどに問題があります。

孫子は言います。「彼(相場)を知り己を知れば、百戦して殆(あや)うからず。彼を知らずして己を知れば一たびは勝ち一たびは負く。彼を知らず己を知らざれば、戦う毎に必ず敗る」と。

「彼を知り己を知れば」とは、上記の「利」をよく考え己をコントロールする術を身に付けるということになります。そして上記の「利」をもって「三法(買う、売る、休む)」を判断するわけですが、例えていうならば「風林火山」です。

・「利」が来るまで山の如く動かず 林の如く心静かに待ち続け
・「利」が来たら疾風の如くに仕掛け
・「利」が消えたら火が侵(おか)し掠(かす)める如く速やかに手仕舞う

孫子は、進んではいけない時に進み、我慢すべき時に撤退することを忌むべきこととし、戦うべき時と戦ってはいけない時を知る者は勝つとしています。つまり、投資の際は「天の利」「地の利」「時の利」「人の利」をもって「三法」を判断し、「風林火山」の如くに行うことが勝利へつながる

最後に、この時期恒例の相場予想をご紹介して今年のスペシャル版を終わりたいと思います。

<平成二十二年 株式市場大観>
・一月 強象月。新甫から買い方針を取るも、実のない情報に空騒ぎせぬよう注意。
・二月 前半もたつく場面あるも、不安材料が少なく平穏。押し目買い方針が良い。
・三月 上旬から中旬に一波乱あるか。高値飛びつかず、逆張り方針を。
・四月 桜開花と共に相場も活気づく。押し目はすかさず、買い増しが良い。
・五月 強象月。満つるは欠けの始めと心得、「小満」前後から利入れ、建玉減が良い。
・六月 強象月。強気材料に耳を傾けず、戻り売り一貫。積極姿勢なら空売りも良し。
・七月 保合月。手掛かり難から往来相場だが、弱気継続。「もうはまだなり」は金言。
・八月 弱象月。八方塞がりで身動きできぬ。右顧左眄(うこさべん)せず、売り方針を貫け。
・九月 極陰が当てはまる衰運環境。戻り待ちに戻りなし。月末さらに安し。
・十月 弱象月。弱気の逆張り方針。突っ込みは追わず見送り、戻りを売れ。
・十一月 続いて弱象月。中旬売り手仕舞い良し。「まだはもうなり」で、月末は仕込み姿勢。
・十二月 往来相場は翌年への期待のふくらみとみて、強気に買い進めよ。翌月は強象月。

来る2010年が皆様にとりまして素晴らしい年であることを心よりお祈りしております。

考え方次第、努力次第

2009/12/16 vol.434

現在の日経平均株価は、1989年の史上最高値3万8915円から見れば半値以下で74%も安い水準にあります。結果だけを見て、この期間にチャンスがなかったかと言えばそうではありません。

いくつか例をあげますと、バブル時の高値から現在までの間に下記のような上昇期間があります。

1995年  7月 3日 1万4485円 
        ↓               【上昇幅  8181円】
1996年  6月26日 2万2666円

1998年 10月 9日 1万2879円
        ↓               【上昇幅  7954円】
2000年  4月12日 2万0833円

2004年  4月28日   7603円
        ↓               【上昇幅1万0697円】
2007年  2月26日 1万8300円

95年の80円を突破した円高局面からの立ち直り、97年に拓銀や山一が破たんし、98年には参院選で自民が大敗するなど先行き不透明感から2000年のIT相場へ駆け上がり、IT相場崩壊と不良債権の最終処理で8000円を割り込み、日経平均が3千円になるとの見方が広がると同時に底をつけ、その後は景気回復期待やNYダウの最高値更新などで日経平均は上げ幅を拡大しました。
 
これ以外にも大小の天底があり、相場が動けば当然儲かるチャンスもあります。

2007年の高値以降は、米住宅市場の崩壊を発端に、サブプライム問題、リーマンショックへと繋がり08年10月には過去に例を見ない暴落に見舞われ、日経平均は瞬間的に7千円を割れる水準にまで落ち込みました。

そして現在は底値から3千円ほど回復した水準にあります。それだけを見て「買えない」とする投資家もいますが、上昇してもさらに上値が期待できれば買いのチャンスはいくらでもあります。上昇したことのみを買えない理由にする人は下げても買えない理由を見つけます。買えないのであれば売っているのかというとそうでもなく、要は上げても下げても動けずに結局チャンスを逃し続け、挙げ句の果てに皆が強気になった最終局面で参加してしまうのもこのタイプです。

現在は7千円の安値からわずかに回復したばかりですが、だからと言っていつ何時でも、どのような銘柄でも「買い時」というわけではありません。たとえ素晴らしい銘柄でありましてもチャートも見ずに飛びつくのは論外です。

株式投資で成功するには効率的に儲けることを考える必要があります。どんなに素晴らしい銘柄でありましても、急騰すればその後は反落する可能性が高く、高値で飛びついては反落しその後の戻りを待つというのでは効率が悪すぎます。

資金配分を考え、数回に分けて買い付けすること。一本調子で上がり続けることはないので、下げたところで購入することを実践するだけで、投資の成果は様変わりになるはずです。

株式投資では、前向きに努力する人には必ずチャンスが訪れます。

「求むれば 求むるままに 月雪も 花も紅葉も 玉も錦も」

強気のサインと弱気のサイン

2009/12/09 vol.433

これを見れば相場の帰趨は一目瞭然とされる一目均衡表は、相場の節目ふしめで話題になります。

ちょうど日経平均株価が一目均衡表の雲の領域にさしかかっている現在、改めて一目均衡表にふれておきたいと思います。

一目均衡表は下記にあげる5つの線で構成されており、各線はそれぞれ短期・中期・長期の押し(上昇過程の下げ)や戻り(下落過程の上げ)の限界(上値抵抗や下値支持)として機能しやすいという傾向があります。

【基準線】
当日を含め過去26営業日間の(高値+安値)÷2
その名の通り相場の方向性を見るための基本となるもので、相場の大勢方向を示す。

【転換線】
当日を含め過去9日間の(高値+安値)÷2

【先行スパン1】
(転換線+基準線)÷2を、当日を含む26日先に記入

【先行スパン2】
当日を含む52日間の(高値+安値)÷2を、当日を含む26日先に記入

【遅行スパン】
当日終値を、当日を含む26日前に記入

先行スパン1と先行スパン2との間に構成される「雲」の意味するところは、およそ2カ月以内に購入した人が、今日を含めておよそ1カ月後に売却する場合の採算株価の価格帯です。

採算価格帯であるということは、移動平均線と同様に、イコール抵抗帯でもあります。具体的には、雲の領域が、上昇してきた株価の上値抵抗になり、株価が雲の中に位置する時には、上に向かえば雲の上限で跳ね返され、下に行けば雲の下限で跳ね返されやすいという傾向があります。そして株価が雲の領域を上方に突き抜ければ、今度は雲の領域が下値支持となり、相場も上昇傾向を鮮明にします。
また、2本の先行スパンで挟まれた抵抗帯(雲)が交差す付近では、相場に変化が生じやすくなります。この場合の変化とは、それまでの流れが転換するというケースばかりでなく、流れが加速するという意味も含まれます。直近では11月12日がそうでした。
その他の一般的な見方としましては主に次のようなものがあります。

  • 株価が基準線の上で推移すれば相場も強気を継続。
  • 転換線が基準線を下から上に交差することを「好転」と言い、相場が上昇基調に転換したことを示唆します。
  • 遅行スパンが株価の下から上へ抜け出し(遅行スパンの「好転」)、基準線も上向きならば、相場が上昇基調に転換したことを示唆します。
  • 転換線が基準線を上回り、遅行線が株価の上に位置し、株価も抵抗帯(雲)の上に位置するように時を特に『三役好転』と言い、一目均衡表では最も信頼度の高い買いサインとなります。
  • 株価が基準線の下で推移するようなら弱気相場。
  • 転換線が基準線を上から下へ交差することを「逆転」と言い、相場の下落基調に転換したことを示唆します。
  • 反対に、遅行スパンが株価の上から下へ突き抜けた時(遅行スパンの「逆転」)に基準線も下向きならば、相場が下落基調に転換しことを示唆します。
  • 転換線が基準線を下回り、遅効線が株価を下抜け、株価も抵抗帯(雲)の下に位置した場合が『三役逆転』で、勝ち目がないとまで言われる売りサインです。

ちなみに、日経平均株価において、三役好転は今年4月1日、三役逆転は11月9日に示現しています。そして現在は、新たな変化を模索する段階となっています。

相場が内包する変化の予兆

2009/12/02 Vol.432

様々な材料が次から次へと表れ、刻一刻と変化する株式マーケットにおいて、先にある変化を捉えることは容易ではありません。しかし、様々な雑念を取り払い、市場の動きそのものから相場行く先を読み取ろうとすることは大切です。

もちろん、その他の材料等も考慮する必要がありますが、相場が内包する「変化の予兆」として以下の項目を是非ご活用頂きたいと思います。特に、日々の本誌無料版に掲載している、指数の騰落、高安銘柄数や出来高上位銘柄などを見る際に思い出して頂ければと思います。

☆相場上昇の予兆(地合いの良さの表れ:一般的な傾向)

  • 平均株価が下落している場合でも、値上がり銘柄数が値下がり銘柄数を上回っている時は、相場の基調は強く遠からず上昇する可能性が高い。
  • 平均株価が上昇するなか、値上がり銘柄数が値下がり銘柄数を上回る場合は、相場は上昇を続ける可能性が高い。
  • 平均株価の下落トレンドの中で、先導する銘柄の質が良くなっていく(まともな銘柄に買いが入りだす)場合は、相場上昇の予兆として捉えられます。
  • 平均株価の上げ下げにかかわらず、出来高上位銘柄の中で上げている銘柄が優勢であれば、翌日の相場は上昇する可能性が高い。
  • 平均株価が急落した場合や5日以上下落が続いたような場合、突っ込み警戒感からの自律的な反発が起こる。
  • 株価が下落して新安値をつけたものの、引けにかけてその日の下落分を帳消しにしたような場合(ローソク足:下影線)、その相場は底を打った可能性が高い。
  • 日々新高値銘柄数が増える、あるいは新安値銘柄数の減少は、相場の基調が強いことの表れ。

★相場下落の予兆(地合いの悪さの表れ:一般的な傾向)

  • 平均株価が上昇している場合でも、値下がり銘柄数が値上がり銘柄数を上回っている時は、相場の基調は弱く遠からず下落する可能性が高い。
  • 平均株価が下落するなか、値下がり銘柄数が値上がり銘柄数を上回る場合は、相場は下落を続ける可能性が高い。
  • 平均株価の上昇トレンドの中で、先導する銘柄の質が悪化していく(ボロ株や3番手、4番手銘柄に物色対象が広がっていく)場合は、近い将来相場は手詰まり状態となり、相場下落の予兆として捉えられます。
  • 平均株価の上げ下げにかかわらず、出来高上位銘柄の中で下げている銘柄が優勢であれば、翌日の相場は下落する可能性が高い。
  • 平均株価が急騰した場合や5日以上連騰しているような場合、急ピッチな上げへの警戒感からの自律的な調整安は避けられない。
  • 株価が上昇して新高値をつけたものの、引けにかけてその日の上昇分を帳消しにしたような場合(ローソク足:上影線)、その相場は目先的な天井をつけた可能性が高い。
  • 日々新安値銘柄数が増える、あるいは新高値銘柄数の減少は、相場の基調が弱いことの表れ。

以上、相場の先行きを見通す上で参考にしていただければ幸いです。

スプレット取引、バフェットの銘柄選定4項目

2009/11/11 Vol.431

通常は一つの銘柄の上げ下げを単純に予想して売買を行いますが、2銘柄間の価格差(スプレッド)に着目して割高な方を売り、割安な方を買うという両建てで取引を行う方法があります。一般的に「スプレッド取引」あるいは「ペアトレード」と呼ばれる取引手法です。

スプレッド取引は両建てであるため相場全体の上げ下げによる影響が軽微であり、上手く取引きできれば通常の株取引きよりも利益を確保できるチャンスが広がります。

同業2社間の相関関係に着目し、2社間の過去の動きと照らし合わせ、両銘柄の価格差が統計的に拡大し(縮まり)過ぎている時に、割高な方を売り、割安な方を買うというポジジョンを組むのが一般的ですが、他にも様々なアイディアを活かせるのがこの取引の特徴でもあります。

例えば、競合するメーカーが同じような商品を発表した際、A社の商品は前評判も良く、実際に使ってみれば性能が良かったものの、一方のB社の商品は宣伝の派手さのわりには使い勝手が良くないというような場合、この商品の売れ行きが株価を動かすと考えた投資家はA社株を買い付ける一方で、B社株をカラ売りするスプレッド取引を行うというケースもあります。相場全体がどうあれ、両商品の売れ行きを反映して両社の株価の差が大きく開いた際に利益確定のチャンスとなります。また別なケースとして、親会社と子会社の関係にある2社間のスプレッドに着目するという発想も可です。

相場全体の変動の影響を受けにくいスプレッド取引ではありますが、手仕舞い(反対売買)の際は利益と損失を相殺しトータルでプラスを目指すことになるため、通常の株取引きのように特定の銘柄に投資し、思惑が当った場合よりも平均的な利益額は小さくなる傾向があります。また、2銘柄の値動きが自分の予想と逆行してしまうケースもあり、損失が限定されているわけではありませんので注意が必要です。

スプレッド取引では一般的な株式投資にあるような夢やロマンといった匂いは薄く、職人的・機械的といったイメージが濃くなりますが、単に上がるか下がるかの通常の株式投資とは異なり、個人の個々の発想で無数の投資戦略を考える事が可能です。また、世間の常識や一般の投資家には気が付かない発想で様々な銘柄間の関係の変化を予想するのもこの取引の醍醐味の一つといえます。

スプレッド取引は多分にドライなやり方であり、一般的な中長期投資とは趣を異にします。しかしその考え方には役立つ面が多々ありますので、このようなやり方を知っておくことも良いのではないかと考えます。

話は変わりますが、投資の腕一つで世界有数の大金持ちになったウォーレン・バフェット率いるバークシャー・ハザウェイは、1960年代当時繊維会社だった同社の株式の過半をバフェットが取得して投資会社に転換。傘下に70を越える企業を抱え、保険部門は世界最大の再保険会社であり、現在は合計従業員数は20万人を超える巨大企業グループの統括会社となっています。

バークシャーは、先日も米鉄道大手バーリントン・ノーザン・サンタフェを完全子会社化することを発表しましたが、他にも飲料大手コカ・コーラやクレジット大手アメリカン・エクスプレス等の筆頭株主となっています。

バフェットの基本戦略は「バリュー株(割安株)投資」で、割安なら買う(そうでなければ買わない)というのを徹底し、長期保有前提で短期的な収益を追求せず、企業の成長力は必ずしも重視しないとされています。

参考までに、バフェットが銘柄選定の基本原則としている4項目をご紹介させていただきます。

・事業内容が分かりやすい。(事業内容が理解できない企業には投資しない)
・強力なブランド力がある。(価格決定力がある。人々の必需品となっている)
・長期的に安定した収益を上げている。(変化の激しい業界は避ける)
・優れた経営者に率いられている。

条件注文という方法

2009/11/11 Vol.430

株式投資では「売る」ことが難しいといわれます。100人の投資家のそれぞれの投資スタンス、資金の性格、本人の性格など個々人がもつ要件の差により、ある特定の売りタインミングが全ての投資家にとってベストのタイミングになるというわけではありません。

売るという行為によって初めて株券は現金となります。その金額の価値は、投資家毎にまったく違う価値を持っていると思われます。例えば、1カ月で少しでも儲かれば良いと思う投資家と、数年単位で利益成長を狙いたい投資家とでは、同じ銘柄でも売りのタイミングは全く違うはずです。1カ月の保有で10万円評価益がでたとしても、前者と後者では受け取りかたが違ってきます。

売る行為は自身の経済活動に決定的に影響します。その意味では、株式投資の勉強とは「売る」ことに関して自分なりのルールを確立していくことかと思います。

ちなみに、投資家が売りを判断する際には大きく分けて次ぎの三つの要件が存在します。

一つは「株価水準」そのものであり、過去の高安やトレンドラインなどを基準にするやり方。もう一つは、当初は良好だった事業環境が悪化するなど、買うきっかけとなった事由に「変化」が生じたい際。そして「利益と損失」、つまり期待どおりの利益が上がった時と損失額が許容限度に達した時です。

最後の一つは、片方は利益でもう片方は損切り(損失確定の売り)になることは自明ですが、それ以外の二つも買値よりも上であれば利益、買値よりも下であれば結果として損切りとなります。

もちろん下がった場合の対処方は、損切りが常にベストの方法というわけではありません。辛抱すれば儲かっていたというケースもありますが、それ以上に多いのが損切りしておけば良かったというケースです。

先行きを完璧に見通すことや、百戦百勝で勝ち続けることなどは不可能であり、常に不確実性が伴う状況下では、損失を早めに確定しておくとの有効性は疑う余地がありません。早めの損失確定が失敗だったとしても買い直すことができますが、様子見して損失額を拡大させてしまった場合は資金的にも精神的にも深手となる可能性があります。

とは申しましても、相場を見ている時間は限られ、急な変動には対処が難しいという方も少なくないかと思われます。そんな時に重宝するのが逆指値などの条件注文(予め売買の条件を決めておいて、その条件に合った注文が自動的に発注される予約注文)です。

逆指値とは「指定の株価まで下落したら売り」「指定の株価まで上昇したら買い」とする注文形態で、基本的には動いた方向に仕掛けるトレンドフォロー(順張り)の手法です。ロスカット(損失確定の売り)はもちろん、「800円で買った株が順調に上昇し1000円を超え、1200円まで行くと思うが、1000円を下回ったら売り」といった利益を守るための売りも可能にします。

さらに最近の注文形態は、例えば約定単価から100円上昇すれば利喰い売り、約定単価から30円下がれば損切りを入れるという注文が、わずかな入力で完了します。

また、高値や安値に合わせてリアルタイムで逆指値注文を自動修正するトレーリングストップも可能で、少しでも有利な価格で売買するために株価動向に合わせて逆指値を自動的に修正してくれます。例えば高値から50円下がれば売りを出すという逆指値を入れ、高値を更新する度に自動的に逆指値の引き上げが行われるため、株価が上昇した後に急落してしまった場合でも利益確定のタイミングを捉えることができます。

ただしこれらの注文形態はシステム的にプログラムされた注文であり、実際に市場に発注されている注文は指値や成行といった市場が受け付けている注文であり、約定するかどうか、いくらで約定するかについては通常の市場ルールに基づきます。通常の注文で指値の価格に達しても約定しないケースがありますように、条件に合致したからといって必ず約定できるものではなく、通常の注文と同じく相場が急変し注文が一方に偏った場合に思いがけない価格で約定する可能性もあります。

今回ご紹介した注文方法はカブドットコム証券で可能ですが、他のオンライン証券でも多様な注文方法を用意していますので一度確認されてみてはいかがでしょう。実際に利用しなくても、その仕組みを理解することは売買のコツを掴む上でも大いに参考になるはずです。

局面で違う売り買いの意味

2009/11/11 Vol.429

株式投資では特徴的な売買の仕方を表現した様々な用語があります。それらの表現からは、今自分はどのような売買をしようとしているのか、あるいは目の前で展開されている相場ではどのような売り買いが交差しているかをイメージすることができます。

以前にもご紹介いたしましたが、下記にあるような売買に関する表現の意味を改めて認識することで、自分自身の投資行動を見直すきっかけとしていただければ幸いです。

「飛びつき買い」
勢いのある相場のさらに上値を狙って急いで買い付くこと。すぐに儲かるような気がするため、資金配分を無視して一度に多くの資金を投じてしまう傾向があります。

「ちょうちん買い」
上がっているから、他の投資家も買っているから買うというスタンスで、相場の動きに追随するやり方。自分なりに売り時を判断できない場合、買った株が塩漬けになってしまう可能性が高いと言えます。

「押し目買い」
相場では飛びついたところが高値圏ということが往々にしてあるため、それを避けるために押し目(上昇相場の一時的な調整局面)を狙って買い付けること。上昇トレンドに変化がなければ、移動平均線や支持線の付近まで調整した時が絶好の押し目となります。

「悪目買い」
相場が下落している中で、売り優勢の展開にも関わらず買い向かうこと。
 
「突っ込み買い」
相場が突っ込んだ(急落した)時に、自律反発(下げ過ぎの反動)を狙って買い向かうこと。狙いはあくまでも自律反発であるため長くは持たないというのが一般的です。例えば、マイナス乖離が大きくなったところで買い、移動平均の水準に戻ったところで利益確定をするようなケースです。この場合、相場のトレンド云々とはまた違った観点での売買といえます。尚、銘柄固有の材料以外で相場が崩れた時などは、比較的短日のうちに元の相場に復帰する場合もあります。

「採算買い」
相場の地合いが悪い時というのは売りたい、手放したいというムードが強く、そういう時は収益性や資産からみた妥当水準などに関わらず下落するものです。そのような時に、PER(株価収益率)やPBR(株価純資産倍率)などから見て割安な銘柄に買いを入れることを「採算買い」といいます。

※採算を買い、人気を売る
この相場格言は、人気圏外にある割安な銘柄をそっと仕込み、人気が出て相場が急上昇している時に売りに回れば利益を得ることができる、ということを言っています。ここでの利益確定の売りに買い向かってくれるのが上段の「飛びつき買い」です。

「損切り」
損失を確定する売り。どこで判断をするかは様々。機械的なシステム売買ならば損失が何%を超えたら自動的に確定。また、当初の想定シナリオが崩れた場合(例えば事業環境が悪化した場合)や下値支持線を割り込んだ場合なども、損失を確定しておきたいタイミングとなります。具体的には押し目を狙って買ったものの、下値指示となっていた前回の安値を割り込んだり、あるいは下値支持線として機能(上昇トレンドの前提として株価の下値をサポート)していた移動平均線を割り込んだ場合などに損切りして、損失が拡大する可能性が高いポジションから離れ、冷静になって相場の動向を見極める時など。

「吹き値売り」
何かの好材料等で株価が急騰することを「吹く」と言いますが、そこを狙って売りをぶつけて利益を確定することを言います。「採算を買い、人気を売る」と同様、飛びつき買いが殺到したところをやすやすと「売り抜け」ます。

「戻り売り」
下げ相場の中で一時的に相場が上昇する場面を「戻し」といい、「押し目」と対になる用語です。下げ続けていたが故に売れずにいた投資家が、損失縮小(戻し)を待って売ること。

「やれやれの売り」
上記「戻り売り」とも重複しますが、買った後に損失の縮小あるいは採算ラインに近づいたところで売ること。下げ相場の場合、一定期間の買いコストである移動平均の水準で「やれやれの売り」がでるケースが多く見られます。

※高値覚え、安値覚え
過去の高値水準ではそこから下がったという記憶をもとに売りが出やすく、過去の安値近辺ではそこから上昇したという経験から買いが入りやすくなります。これがボックス相場を形成する心理的根拠ですが、その水準を抜けると抜けた方向へ加速をつけて新たな相場展開へと進む傾向があります。

「ろうばい売り」
堅調だった相場が突然急落した時や、相場が下げ止まらない時などに、うろたえてむやみに売り急ぐこと。後から見れば、安値を叩き売っている可能性がある売り方です。

皆様もよくご存知の相場用語をあえて取り上げてみました。ただ単に売買するのではなく、今しようとしている売り買いはどのような局面でどのような結果を狙って行うのか、あるいはどのような局面で(相場に)売り買いをさせられているのかを冷静によく考えてみることが大切です。

ウォーレンからの警句

2009/11/04 Vol.428

最も成功した投資家と称えられるウォーレン・バフェット。昨晩は、米鉄道大手バーリントン・ノーザン・サンタフェに総額3兆円を投じて完全子会社することが明らかになり、市場の話題をさらいました。

今でこそこのような大規模な投資を行っていますが、初めは一人の個人投資家に過ぎませんでした。当然ながら信奉者は多く、バフェットの投資のやり方を真似ようとした投資家もたくさんいるはずですが、残念なら「もう一人のバフェット」と評される人はまだ世に出ていません。

バフェットと他の多くの投資家との違いは何なのか。下記にて彼から発せられた言葉をいくつご紹介させていただきますがその中から何かをつかみ取っていただければ幸いです。

『仕事選びも投資と同じ。いかなる手間も惜しんではならない。正しい列車に乗りさえすれば、金と痛みを節約できるのだから』

『天と同じく、市場は自ら助くる者を助く。しかし、天と違って、市場は右も左も分らぬ者を許さない』

『独力で考えることを心がけなさい。わたしの場合、他人と話していて良いアイディアが浮かんだことなど一度もない』

『適切な気質と適切な知的素養が合わさったとき、理性的行動が生まれる』

事前に調べたり、研究したり、いくつかの事態を想定したりと、「考える」ことの後に「行動」がくるのが普通なように思えますが、「行動」した後で「考える」投資家が実際には少なくありません。無知と貪欲が合わされば、時間を待たずに窮地に陥るのは明白です。

また、バフェットは急騰している時に急騰している株を買うことはなく、安値圏にあってファンダメンタルズから見て十分に割安という銘柄を好みます。その逆を行く投資家が多い現実を、「古いことわざにあるとおり、賢者が最初にやることを愚者は最後にやっている」と評しています。

『投資家を破滅させるのは経済ではない。投資家自身である』

『穴にはまっていると気づいたとき、一番大切なのは、掘るのを止めることだ』 

『トラブルから抜け出すことよりも、トラブルを避けるほうが簡単だ』

上記もいわずもがなです。

『我々が歴史から学ぶべきなのは、人々が歴史から学ばないという事実だ』 

市場の動きを見ていますと、多くの投資家が株式市場で何度も何度も同じ過ちを繰り返しているのは明らかです。

『ほとんどの人は皆が注目している株に注目する。しかし、注目すべきは誰にも注目されていない株だ。人気銘柄を買って高利益にありつくことは決してない』

『株式市場のコンセンサスにいそいそ参加するなら、とても高い代金を支払わなければならない』 

『他の人々が思慮に欠ける行動をとればとるほど、我々自身はより思慮深い行動をとらねばならない』

上記はいずれも同じことで、その反意として下記のように言っています。これも昔から言われていることですが、それが口をついて出てくるということは、そうでない投資家がいかに多いかということの証です。

『我々がすべきことは単純だ。他人が臆病なときに強欲になり、他人が強欲なときに臆病になりさえすれば良い』

今回ご紹介した言葉の数々は、投資の考え方としては至って「普通」の事です。裏を返せば、相場に身をおいた際に「普通」にやる事が如何に難しいかということでもあります。そしてバフェットは全ての投資家に下記のヒントを与えてくれています。

『株式市場の乱高下は、敵とみなすのはなく、友とみなしたほうが良い。また、愚行は参加するのではなく、利用するものである』

知識と感覚

2009/10/21 Vol.427

株式投資に限らずですが、その道で大成するには多くの知識と経験が必要とされます。
株式投資おきましては、経済原則やテクニカル手法、売買のルールなど覚えておきたい知識がたくさんあります。

しかしながら、たくさんの知識を身につけて儲かるならば、学者やクイズの得意な人なら容易に儲かる理屈です。例えばテクニカル手法を知ることは大変に有益ですが、その計算方法まで詳しく覚える必要はないと感じています。

もちろん基本は大変重要です。一流と言われる人でも基本の習得には長い時間をかけています。なぜそうなのか。それが必要だからです。その段階を踏まないと、その上には登れないからです。

株式投資におきましても、経済記事や相場解説等を見聞きして理解できるような基本的な事はしっかり理解しておく必要があります。ただし、覚えた知識の字義にこだわり後生大事にると、新しい発想が生まれないばかりか、そらなる上達にとって妨げになる可能性すらあります。

スポーツも経済も教科書どおりに行かないことの方が多く、基本を覚えただけでは対応できない場面が多々あります。そういった状況に対応しようとすれば、感覚を磨く必要があります。ちなみにここで言う感覚とは、ある事態に直面した際に適切な答えを導き出せる能力のことです。

相場格言には「知識と情報が多過ぎると勘が鈍る。勘は知識と情報の裏付けがないと確度が落ちる」とありますが、格言に言うところの「勘」はすなわち「投資感覚」であり、知識や情報に頼り過ぎる弊害を危惧し、知識のない人のヤマ勘の危うさを指摘しています。

性格がそれぞれ違うように、感覚も人によって異なります。ある絵を見て、つまらないと思う人もいれば、深く感動する人がいるのと一緒で、感覚が違い、個性が違う人が集まり、好きなようにできることが投資の面白味であり、そこに儲かるチャンスも生まれます。

投資感覚、あるいは投資の技術と言ってもいいのですが、それを磨くにはどうするか。
投資の知識はもちろん重要ですが、それだけではどうにもなりません。一つ一つの場に真剣に向き合い、工夫し、努力し、見聞を広め、結局は自分自身を磨く作業が必要になります。

昔の剣客が、禅を組み、書や絵を書いて、己を鍛えたように。そういった努力を積み重ねることによって、相場の見方が広がり、相場の動きもそれ以前とは比べものにならないくらい分かるようになってくるはずです。

ところで、伝統芸能や武道など、「道」の世界には「守・破・離」という言葉があります。

「守」・・・基本の型を確実に身につけ、徹底的にそれを守ること。

「破」・・・型どおりのやり方を守るばかりでなく、その意を理解し、その上であえて型を破り自分に合うように、実戦に合うように工夫を試みること。

「離」・・・型をも離れ自分流のやり方に昇華させること。

最後の段階では基本を無視した自在形にも見えますが、実際には基本を会得しているのでどのような局面に際しても揺らぐことはありません。

どの世界でもそうだと思うのですが、一見して派手な技や格好良いやり方ばかりに注目が集まります。基礎や基本を身につける前にそのようなやり方を真似てみても、継続して勝つことなどまず不可能です。

一流選手の一流のプレイの裏には地道な努力、継続、単調な作業や練習、決して諦めない意志があります。イチロー選手然り、石川遼選手然り。トップクラスの選手ほど技術の向上にどん欲で、人一倍努力し常に工夫しています。

また、投資においては何が何でも儲けなくてはと思う人が少なくありませんが、儲けることばかりに囚われて思考の柔軟性を失いますと、儲かるものも儲からなくなってしまうという悪循環に陥ります。

勝負では勝った方が良いし、投資では儲かった方が良いに決まっています。しかし、勝負も相場も良い時ばかりではありません。勝った負けたで一喜一憂する前に、基本を身につけ、投資感覚を磨くことが先決です。

過度の焦りや恐怖を和らげる効果

2009/10/14 Vol.426
 移動平均線やトレンドラインなどのテクニカル手法は、「上昇トレンドにある株は買う」「下降トレンドにある株は売る」というように、基本的には相場の流れに従って売買をするために使われます。このような投資スタンスを「順張り」といいます。

 これに対し、株価が上昇しているときに「これは買われ過ぎ」だから売る、株価が下がっているときに「これは売られ過ぎ」だから買う、といったスタンスを「逆張り」といいます。

 「買われ過ぎ」「売られ過ぎ」と言いましても、どこからが買われ過ぎでどこまでが売られ過ぎなのかについては絶対的な基準があるわけではありません。相場の変動が大きくなりますと場当たり的で心情的な判断となってしまいがちですが、その客観的判断を補佐するのがテクニカル指標です。

 買われ過ぎ・売られ過ぎを判断するテクニカル指標には移動平均線カイリ率や騰落レシオ、サイコロジカル等があり、本日ご紹介する「RSI」も同様に広く利用されています。

 逆張り指標と言いましても、中長期での上昇トレンドが継続している場合は、上昇が続いた後の目先的な調整、下げた後にまた元のトレンドへの復帰(上げ下げの小休止)を捉えることに重点を置き、サインが示す水準によって買いを手控え少し様子を見たり、あるいは押し目買いのポイントを探る際に参考指標として利用します。

 RSI(レラティブ・ストレングス・インデックス:相対力指数)とは、ある期間内の上昇と下降の平均を比較することで相場の強弱を測ろうとするもので、逆張り的な用いられ方をするオシレーター系テクニカル指標の一つです。

 相場は、一方的に上げ続けるものではなく、一方的に下げ続けるものでもありません。一時的に一方的に動いていたとしましても、実際にはある程度の上げ下げを繰り返しながら動いていきます。RSIは、その繰り返される上げ下げの中で、下げ過ぎ・売られ過ぎと思われるポイントを捉えて買い、上げ過ぎ・買われ過ぎと思われるポイントでは買いを手控えるいうもので、高値買いや安値売りを避ける場合にも役立ちます。

 ちなみにRSIの計算方法は、ある一定期間の株価を前日比で「上昇した日」と「下がった日」に分け、それぞれの上昇した値幅・下落した値幅を合計します。この両方を合計したものを分母、上昇した値幅の合計を分子にして、パーセンテージを計算します。

 RSIの数値は%で示されるため、その変動の範囲は0から100に限定されます。その数値が100に近いほうにあれば「買われすぎ」、0に近いほうにあれば「売られすぎ」と判断します。サイコロジカル・ラインは変動の方向のみを考慮していますが、RSIは変動の幅も加味していますので、RSIはサイコロジカル・ラインの改良版と言うことができます。

 RSIの一般的な見方としましては70%以上が買われ過ぎ、30%以下が売られ過ぎです。

 もちろんこうしたテクニカル指標は絶対的なものではなく、その見方を知ったからといって必ず儲けさせてくれるわけではありません。RSIも他の手法同様、総合的に判断する必要があります。株価のトレンドを見ながら売買することを基本として、相場が目先的に行き過ぎを感じるような時に参考材料の一つとしてRSIを確認するのが良いでしょう。
 
 相場の上げ下げに影響され気持ちが定まらないような場合、このようなテクニカル指標は過度の焦りや恐怖を和らげる効果も期待でき、客観的判断の手助けになります。

日頃からできること

2009/10/07 Vol.425

日頃からできること
 株式投資は「不特定多数の投資家が参加して行われる推理ゲーム」といわれ、ケインズの「美人投票」のたとえも同じ意味で使われます。これらの根拠として次のような点があげられます。

1.何らかの要因(材料)あって株価が動くわけですが、まずその要因を推理する必要がある。

2.先行き拡大が見込める材料か否か、あるいは先行きそのものを推理する必要がある。

3.自分だけでなく、自分以外の「不特定多数の投資家」は相場をどのように見ているかを推理する必要がある。

 結果が当初の推理どおりにならないらない場合ももちろんありますが、株式投資においては推理能力あるいは連想力が重要となります。

 こういった推理力や連想力は、新聞記事や世の中の動きから「株式相場にどのように影響してくるだろうか」と考える習慣があれば身につくものです。

銘柄抽出の設定例及びユニークなスクリーング・サービス

2009/09/30 Vol.424

投資銘柄を選定する際は、材料性やテクニカルな妙味とともに、PER(株価収益率)や利益の伸び率などのファンダメンタルズを分析し銘柄を抽出するやり方がある一方で、例えば売買高の増減などのボリューム指標のみで投資銘柄を選ぶ人もいます。つまり、人気が出てきたタイミングで飛び乗るというやり方です。ただしそういった場合も、こうなったら売るという「売りのルール」をきっちりしておかないと、降り時が分からず成果を得られないという結果になりがちです。

 多くの人はすぐに上がりそうな銘柄を探しまわるという狩猟的なやり方を好みます。しかし、割安な銘柄を丹念に拾い(複数回に分けて購入し)、人気が出てきたところで利益を確定するという農耕的なやり方は比較的ゆっくり安全に大きく儲けることを可能にします。

 このような農耕的な“待ち”のやり方で銘柄を絞り込むする際は、オンライン証券等のスクリーニング(条件検索)・サービスが便利です。一般的なスクリーニングでの設定項目としては下記のような事例を参考にしていただければと思います。

 <好業績+割安銘柄>

   連結PER         15倍以下
   予想連結売上高伸び率   + 5%以上
   予想連結経常利益伸び率  +10%以上
   13週移動平均線カイリ率 + 5%以内

 <高成長銘柄>

   連結PER         40倍以下
   予想連結売上高伸び率   +20%以上
   予想連結経常利益伸び率  +30%以上
   連結ROE         15%以上

 <資産からみた割安銘柄>※有利子負債が株主資本を上回っていないことが要件

   連結PBR          1倍以下
   予想連結売上高伸び率   + 5%以上
   予想連結経常利益伸び率  +10%以上

 決算月や投資金額の設定もあれば重宝します。ご利用のスクニリーング・サービスと設定項目が違うところもあるかもしれませんが、考え方を参考にしていただければ幸いです。相場環境に合わせて検索条件を柔軟に設定し、抽出された銘柄の数が多すぎる場合は追加の条件設定等で絞り込み、事業の内容や決算データ、過去のニュース等を確認し、材料性があればなお良しです。

 条件検索で抽出された銘柄は将来の値上がりを保証するものではありませんが、利用価値は大です。各社とも複数の条件を指定できるようになっていますので、ある程度独自の銘柄を抽出することができます。様々に試行した上で、抽出された銘柄を株価チャートや材料面からチェックし、実際の相場で動きを確認、そういったことを継続して行うことは相場に対する独自の観点を養うことにもつながります。

 尚、ユニークなスクリーング・サービスとしては東京証券取引所の「東証上場会社情報サービス」をご紹介しておきたいと思います。こちらは投資対象を絞り込むという性格付けではありませんが、本社所在地で絞り込むことができたり、決算発表予定日や継
続企業の注記の有無といった他社にない項目を確認することができます。

 ちなみに、継続企業の注記とは、企業の事業継続に疑義が生じた場合に記載を義務付けられているもので、要件とては売上高の著しい減少、継続的な営業損失の発生、営業キャッシュフローのマイナス、主要な仕入先からの与信または取引継続の拒絶、主要取引先の喪失、債務超過、借入金の返済条項の不履行や履行の困難性、新たな資金調達の困難性、巨額な損害賠償金の負担の可能性などがあります。

株価と出来高の関係

2009/09/16

株価と出来高は連動性が高く、株価上昇とともに出来高も増加、株価が下落してきますと出来高も細るのが一般的です。また、しばらく下落した頃に「そろそろ反転近し」との思惑買いが入ることで、出来高増加が先行して株価が反転するケースや、株価が天井を形成する前に出来高が細るケースがあります。

 このような、株式相場で出来高が株価に先行して動く性質は、「株価は出来高の影」あるいは「出来高が原因で価格が結果である」という言葉で表現されてきました。こういった相場の特性を活かし、銘柄スクリーニングにおいて「出来高変化率」の上位に登場した銘柄を狙うという投資方法を好む投資家もいます。

 株価と出来高の関係を見た場合、一つの典型的な事例としましては、底値圏でほとんど動きがなかった株価が、出来高が増加し始め、それとともに株価も上昇、株価上昇と出来高増加がしばらく続いた後に高値をつけるという一連の動きがあります。その後、出来高が細りつつも高値近辺で推移、その辺りが天井となり、そこからまた相当期間の下落が続き底値に至るというのが典型的な相場サイクルです。

 このような株価の一生とそれに伴う投資判断を局面ごとに分けてみますと下記のようになります。こういった局面認識は、相場の流れを読む際に重要なヒントを与えてくれるはずです。

1.出来高が増加し始めるが、株価は底値圏でほとんど横ばいで推移。
  (買いの準備)

2.出来高の増加が続き、株価も上昇傾向を鮮明にする。
  (買い転換)

3.出来高は高水準を保ち、株価はさらに上を目指す勢い。
  (買い継続)

4.出来高が減少傾向を示す一方、株価はなおも上昇。
  (天井圏間近と見て新規の買い増しを見送り、徐々に利喰い売り)

5.出来高はさらに減少、株価は頭打ち横ばい傾向に。
  (急ぎ利喰い売り)

6.出来高の減少傾向が続き、株価も明らかに下落に転じる。
  (本格的な売り転換)

7.出来高が低水準のまま、株価が下げ続ける。
  (売り方針継続)

8.株価は下落傾向にある中、出来高に増加傾向も見て取れる。
  (底入れ近しと見て売り見送り、買いタイミング待ち)

 このように、株価トレンドにおいて転換が自明となる前にまず出来高に現われるケースが多々あります。これが「出来高は価格に先行する」という所以です。

 通常、相場が大きな動きを見せるときには出来高の増加を伴います。但し、株価が大きく動きましても出来高の増加を伴っていない場合や高水準の出来高を維持できない場合はそれが一過性の動きである可能性あり、上昇トレンドの中で出来高が減少しながらも高値を抜いたような場合は買い勢力の減退を警告するものとなります。反対に急落場面で出来高が急激に増加し、下ヒゲを伴うローソク足があらわれた場合は、売り圧力を覆す買い勢力が出現した可能性があります。

 出来高は相場のエネルギーを示しており、価格の変化とともに出来高の変化を把握することは、価格の変化だけでは捉えきれない相場の強さや弱さ、相場の背後にある買い圧力や売り圧力を知る手がかりとなるため、株価の変動とともに出来高の推移も注目されます。

 ちなみに上記の流れを、縦軸に株価、横軸に出来高をとり、交差する点をつなげていきますと時計と反対の左回りの曲線ができます。これがいわゆる「逆ウォッチ曲線」で、相場観測において出来高先行論に基づく日本生まれのテクニカル分析です。

暗示するボラティリティー

2009/09/09

ボラティリティーとは、有価証券など金融商品の価格変動性を指しており、期待収益率が期待通りとなる度合いを示します。一般的にボラティリティーが高い状態は価格の変動性が大きく(要は、相場が大きく動きやすい状態)、期待収益率から大きく外れる可能性が高いと言え、相場のトレンドが大きく変化する際もボラティリティーが高くなります。

 日経新聞朝刊のマーケット面には2種類の日経平均株価のボラティリティーが掲載されています。

 一つは、過去の推移から算出する「ヒストリカル・ボラティリティー(HV)」で、過去20日間の日経平均株価の騰落率を基に、年間の営業日数(250日ベース)に換算し年率で示され、小幅な値動きが続くと数値は下がり、変動が激しいと数値は上がります。

 もう一方の「インプライド・ボラティリティー(IV)」は、オプション価格から逆算して求められ、市場参加者の先行きについての見方が反映されるため「予想変動率」とも呼ばれます。IVが高い状態は、オプション(買う権利・売る権利)の価格が高いことと同義で、オプション取引の参加者が将来の価格変動率が高いことを予想していることになります。そのためインプライド=暗示するボラティリティーと呼ばれます。

 ボラティリティーの落ち着きは市場の不安心理の後退を示しますが、ボラティリティーの低下が続く際は相場が膠着状態かあるいは三角もち合いを形成している状態であり、その後どちらかに相場が振れる可能性が高いと考えるのが一般的です。また、下落局面で変動率が急上昇した場合には、市場が悪材料を大方織り込んだとする見方もあります。

 ちなみに、日経平均HVは、リーマン・ブラザーズが破たんした昨年9月中旬から急上昇し、11月には算出開始以来の最高値となる115%を記録。IVも昨年11月に108%まで上昇しました。その後はブレもありますが徐々に低下を続け、現在はリーマン・ショック以前の水準の20%前後で推移しています。

 尚、米シカゴ・オプション取引所(CBOE)がS&P500種株価指数オプションを基に算出している「ボラティリティー・インデックス(VIX)」は、相場の予想変動率を示しており、株式相場が急ピッチの下げに見舞われ投資家の不安心理が拡大すると上昇する傾向があるため別名「恐怖指数」とも呼ばれます。

 恐怖指数は投資家の心理状態を測るモノサシとして利用されており、10から20の範囲での動きが通常です。30で「総悲観」、30を超えてくると「パニック(恐怖)」、40を超えてくると「メガボトム(大底)」といわれ、逆張り指標として注目する向きもあります。ちなみに現在は20台半ばで推移しています。

 実際に、相場下落によって恐怖指数が35前後にまで上昇した後で株式相場が反転上昇に転じた例は数多くあります。

 リーマン破たん後の11月に記録した過去最高の80.86は例外としましても、1997年のアジア通貨危機の際の恐怖指数は38で天井(株式相場は反転上昇)となり、1998年のロシア通貨危機の際は45、2001年の同時多発テロの際は43、2002年のエンロン不正会計事件の時は45、03年の米軍のイラク侵攻の時は34で恐怖指数が天井を打ち、時を同じくして株式相場は反転上昇に転じています。

 このようにボラティリティーの動向は、投資家の不安心理や相場の予想変動率を示すことから、今後の値動きや資産配分を考える際に活用されています。

トレンド把握に便利な回帰トレンド

2009/09/02

株式投資では結果的に儲かれば良いのですが、高いところで買い付けますと利益になるまでの時間効率が悪化します。そうならないためには、どこが「高いところ」でどこが「安いところ」かという指標があれば非常に便利です。

 一般的に使われる株価チャートには移動平均線が描かれており、株価と移動平均線との関係が「上げ過ぎ」「下げ過ぎ」や「トレンド(方向性)」を判断する一つの目安として用いられます。

 その他、株式投資には様々なやり方、様々なアプローチの仕方がありますがが、チャート上にトレンドラインを引いただけでも株価の位置が非常に分かりやすくなります。

 株価チャートを見る際、最も基本的で重要なことは、相場の方向を示している「トレンド」を読むことにあります。「トレンドには逆らうな」あるいは「トレンドはフレンド」という言葉が示しますように、株式投資においてはトレンドに沿った売買(順張り)が基本となります。

 上昇トレンドに沿って動いている銘柄を対象に、なるべく安く買い付けるという方針で投資を行えば、利益を得るチャンスはたくさんあります。その際の売買ポイントも、トレンドラインを引くことで自ずと明確になってきます。

 トレンドラインの描き方は簡単です。右上がりの上昇相場にトレンドラインを引く場合は、底値と次の安値等、二つの安値を線で結べば出来上がります(下落相場の時は上値を結びます)。あまり厳密にならずに相場の下値(下落相場の場合は上値)を的確に捉えていると思われる線が引ければ十分です。

 トレンドラインを引いて見ることによって、これまでの無軌道のようにも見えた株価変動が一定のレールに沿って動いているように見えてきます。それがトレンドであり、そのトレンドに沿ったポジション(上昇相場での買い、下落相場での売り)であればまず安心です。また、トレンドラインを引くことで、トレンド転換を認識することも容易になります。

 ところで、オンライン証券会社のサービスはそれぞれ独自で多様なものがありますが、トレンドラインの自動描画ではカブドットコム証券のスーパーチャートの回帰トレンドが便利です。

 回帰トレンドは、上記のような高値や安値を結んだ線をトレンドラインとするのとは少し違い、任意の期間の値動きの中心を通るように線を引き、それに平行な線(具体的には値のばらつき度、いわゆる標準偏差が用いられます)が上下に2本ずつ描かれます。

 例えば、実際に回帰トレンドが描画されたチャートをご覧になっていただけますと一目瞭然ですが、何本かの線を引いただけで現在までの株価のトレンドと高安の水準が非常に分かりやすいものとなります。

初めが肝心

2009/08/19

相場で財を成した本間宗久は、彼の残した秘伝書「三昧伝」の最初の部分で次のように述べています。

  • 米商いは踏み出し大切なり。踏み出し悪しき時は決して手違いになるなり。又商い進み急ぐべからず、急ぐ時は踏み出し悪しきと同じ。売買共、今日より外、商い場なしと進み立ち候時、三日待つべし。是伝なり。米の通いを考え、天井底の位を考え売買すべし。是三位の伝なり。天井値段底値段出ざる内は幾月も見合わせ、図に当たる時を考え、売買すべし。商い急ぐべからずとは天井値段底値段を見ることなり。天井底を知る時、利運にして損なきの理なり。
  • (訳) 商いは仕掛けのタイミングが大切であり、そのタイミングが悪ければ失敗することになる。また、商いは決して急いではならず、急ぐことは仕掛けのタイミングが悪いことと同じである。相場の動きに急かされ、今日しか買い場(売り場)がないと思うような時は三日待つべきある。これは秘伝である。相場の方向や需給を考え、上値や下値に気を配り天底を考えて売買しなければならない。これが売り・買い・休むの「三位の伝」である。天井や底の値段が出ない時には忍耐強く何カ月も売買を見合わせ、天底が見えタイミングが合う時を考え売り買いすることが大事。売買を焦るなとは、相場の方向性や天底を見極めるということである。これを守れば利運に恵まれ損をすることはない。

また、宗久は「三昧伝」の最後の方で、天底やタイミングを考えない安易な売買について次のようにも言っています。

  • 相場保ち合いの時うっかり慰みに商い仕掛くることあり、はなはだ宜しからず、慎むべきなり。この商い強いて初念の思い入れを離れ難きものなり。よほど玄人ならで、見切りできざるものなり。例えば百両売り付け候て、少々上がる時、最初踏み出しの百両分に念を残して買うことを忘れ、又々売り重ねる心になるなり。段々踏み上がる時はここにて売りならすべしと売り込む故、自然金高成嵩み、後々は売り返しも買い返しも自由ならず、大事に及ぶなり。付き出し商いを慰みのようにうっかり仕掛ける商いより発するなり。例えば百両分仕掛けるとも容易に心得ざるものなり。とくと米の通い運びを見定め、作割金割を考え、売買とも付き出し申すべきことなり。
  • (訳) 軽い気持ちで相場に手を出すこと、これは甚だ良くないことであり決してやってはいけない。こういう商いでは最初の考えから離れることができず、よほど慣れた人でなければ見切ることができないのである。例えば百両売って後(あるいは買って後)、少しばかり上がった(下がった)時に最初に仕掛けた百両の玉が頭にあるために損切りの買い戻し(手仕舞い売り)ができずに、売り上がる(買い下がる)ことばかりを考えてしまうものである。その後も上昇(下落)が続くとナンピンしようと売り(買い)を重ね、その結果、自然と金額がかさみ、二進も三進もいかず大変な事態になってしまうものなのである。これは最初の商いを安易に仕掛けてしまうからであり、例え百両(この場合は少ない金額と考えてください)を仕掛ける時でも安易に考えてはいけないものである。少額であっても初めが肝心で、よくよく相場の動向を見極め、需給動向を考えて商いをしなければいけないのである。

このように、宗久は多少くどいくらいに商いの初動とそのタイミングの重要性を説き、安易な商いを戒めています。

これは現在の株式投資にも通じることです。相場の流れや売買のタイミング(投資行動の目安となる水準)などをよく考えて、慎重にスタートしなければいけません。そういった技術や見極める目を養い、しっかりと利益を重ねていきたいものです。

理と非との中にこもれる理外の理

2009/08/05

相場の世界は「三五の十八」と言われますように、単純な数式で表せる世界ではありません。相場が世界で常に1+1=2が通用するのであれば、理論的に徹底的に研究しさえすれば、皆が思うような好結果が生ずることになりますが現実は決してそうではありません。そうでないところが相場の難しさであり、無限の面白さでもあります。理屈を積み上げて相場に挑みましても、「理に勝って非に落つ」の格言のように、理論の上で勝ちましても事実において負けるということが多々あります。

 企業業績や景気動向を示唆する数値などは確かに相場に影響するものですが、相場にはそれ以外の「理外の理」というものが存在します。

 例えば、経済活動が季節的要因で変化しますように株式相場も季節的要因と無縁ではありません。暑い夏が来ると予想されれば早い段階で関連銘柄が動き、春と秋の医学会シーズンには新薬の臨床結果や治験例が発表されることを先取りし医薬品株が動き出すこともあります。

 また、戦後東証再開以降を通してみた場合、4月相場がほぼ7割の勝率を誇るのは、新年度入りという季節的要因が影響しているということは否定できません。年度末となる3月は運用する側としては動きにくく、新年度から改めて運用を始めるケースが多いため、4月は株式市場にとって資金が入りやすい月と説明されます。

 また、例えば休日中に株式相場に影響を与えそうな重要な事が発生すると予想されるとき、休み前に投資残高を減らそうとする動きが見られます。「ポジション調整の売り」あるいは「手仕舞い売り」などと言われる動きで、特に目立った悪材料がないにも関わらず弱含み、休日のため株式市場が開かず対応できないというリスクに備えようとする動きを指しています。大きな資金を動かしている投資家ほどこの傾向が強く、先行きの不透明さを嫌います。休日前の動きに限ったことではありませんが、このような不透明要因による変動のリスクを「イベント・リスク」と言います。

 株式相場を動かす要因には様々あります。しかし、最終的にはそれぞれの投資家が判断することであり、詰まるところ相場全体の強弱は投資家心理の影響を受けることになります。

 悪材料が出て売りが多いと思われる相場状況にありましても、思ったほど下がらないという状況がありますが、そういった時は「地合いが良い」などと解説されます。「地合い」とは、好材料や悪材料が出るような外部環境を指すわけではなく、様々な材料に対して相場がどのような反応を示しているのか、投資家心理はどのような状態なのかといった「市場の雰囲気」を指しています。あるいはより直接的に「買い方と売り方のどちらが優勢か」という意味で使われることもあります。

 下落トレンドが継続している場面では少々の下げで株式を手放したくなるものですが、上昇トレンドの中での少々の下げは「押し目買いの好機」と正反対の捉え方をされるということも地合いの良し悪しです。

 もちろん投資家心理は、景気や企業業績、自然現象、海外動向、株価水準や自身の懐具合、将来への期待感や不安感などというものにも影響されます。そういったこを踏まえ、現在の投資家一般の状況はどうなのか、地合いはどうなのかを読みとることは株式投資を行う上で極めて重要です。

 地合いや投資家心理などというもは、数式で表せるような論理的に明快なものではありません。しかしながら、様々なデータで相場や投資家の状況を推し量るなど、株価の動きを見極めるためには地合いの良し悪しとその裏付けについて考える必要があります。

  • 「高安の理は空理にて眼に見えず、かげも形もなき物が体」(三猿金泉秘録)
    意味: 高値も安値も企業そのものの価値でははなく、需給関係で決まる
  • 「理と非との中にこもれる理外の理、高下の源と知れ」(同)
    意味: 理屈では割り切れない人気が相場を動かす

アニュアルリポートの活用

2009/07/29

長期投資で財を成した著名投資家のウォーレン・バフェット氏は、「アニュアルリポートを読むだけで、投資に値する企業かどうか大体分かる」と言っています。実際にバフェット氏はアニュアルリポートを読んだだけで米コカ・コーラへの投資を決断しており、同社株は同氏率いる投資会社バークシャー・ハザウェイの最大保有銘柄となっています。

 アニュアルリポートとは、日本では年次報告書と呼ばれ、会社が年に一度発行する財務、活動などの報告書のこと。すべての会社が発行しているわけではありませんが、最近は自社ホームページのIR(Investor Relations)の項目で開示しているケースが増えてきました。

 ところで、企業と株主間の理解を深めるために企業が個人投資家や機関投資家向けに公開している情報、いわゆるIR情報には決算短信、有価証券報告書、アニュアルリポートなどがあります。

 決算短信とは、決算の速報であり、決算短信の開示=決算発表となります。決算短信の表紙(1枚目)に記されているのは経営成績、財政状態、キャッシュフローの状況、配当の状況、業績予想です。

 経営成績の欄には損益計算書の要約が記載されており、売上高や営業利益(本業の強さを示す)、経常利益、純利益に加え、1株当たり利益(EPS)や売上高営業利益率等も前年同期と比較できるようになっています。続く財政状態の欄は貸借対照表の要約版で、株主資本(純資産)や1株当たり純資産(BPS)等の増減が把握できます。

 決算短信では上記のような情報の後に業績に対する分析が簡潔にまとめらた項目があり、セグメント情報へと続きます。セグメント情報では収益状況が事業別に記載されており、どの事業が伸び、どの事業が全体の足かせで、どの事業が将来収益に寄与してくるかが分かるようになっています。この情報は、イメージとは異なる企業の隠れた一面を知る手がかりにもなります。

 経営方針や事業計画の項目では企業の方向性を知ることができます。また、原材料の調達や為替変動等に限らず、最近問題になった出来事による影響などのリスク情報も開示されています。

 次に有価証券報告書(有報)とは、投資家が投資を行う際に十分投資判断ができるよう、事業の状況や財務状態、経営成績、事業に関わるリスク等が詳細に記載されたもので、金融庁は上場企業に対し各事業年度終了後3カ月以内の提出を義務づけています。

 有報には、貸借対照表や損益計算書、ならびにキュッシュフロー計算書といった財務諸表の他、大株主の状況、資本金等の推移、設備投資の状況など主だったデータが網羅されています。中でも「対処すべき課題」「事業等のリスク」「財政状態及び経営成績の分析」といった項目は企業の現状と先行きを想定する上で大変役立ち、アナリストもレポート作成の際は必ず参考にしているデータです。下手なアナリストレポートよりも詳細で情報の宝庫とも言える有報には、将来の株価材料が記載されているケースも少なくありません。

 上記二つは法定開示資料であり、定められた形式に則り財務数字と文字で企業の姿を投資家に伝えますが、アニュアルリポートでは経営者が会社の現状と将来についてどのように考えているかを率直に伝え、会社のビジョンや社風、長期の業績トレンド、経営戦略、競争力などを写真やグラフを用いて企業本来の姿を伝えています。

 長期投資では過去よりも将来、確定した数字よりも経営者の考え方、将来のビジョンや社員のモチベーション(やる気)等、これら「見えない資産」の重要性が高いのですが、

「バックミラー(過去)はピカピカだが、フロントガラス(未来)は常に曇っている」

 と言ったバフェット氏は、曇った先を推し量り未来に投資するためにアニュアルリポートを読んで投資対象を探すということは大いに参考にすべきところです。

 ちなみにアメリカにおいては、アニュアルリポートに書かれた経営者のメッセージの質が高い会社への投資は、質が低い会社への投資に比べて中期的に高い成果が出ているという調査結果があります。経営者が自身の言葉で、わかりやすく、ビジョンを語り、悪いニュースやリスクも率直に伝え、人材への投資など見えない資産についてのメッセージがあるかなどが経営者のメッセージを読む際のポイントです。また、長期投資の観点で重要な企業活動の一貫性や持続性も、アニュアルリポートでチェックすることができます。

 参考までに、決算短信、有価証券報告書、アニュアルリポートにはそれぞれ下記のような特徴があります。

決算短信有価証券報告書アニュアルリポート
財務内容
速報性×
経営者のメッセージ××
会社の個性××
長期の視点××

 尚、アニュアルリポートの発行は義務ではないためすべての企業が発行しているものではなく、英文のみというケースもあります。

ギャンブルにおける必勝法について

2009/07/22

投資と事業(経営)は似ています。相場動向に応じて有限な資金を未知の将来性に投下し、そして手仕舞う。投資も事業もリスクを認識しながら、いかにリスクを最小限にとどめるか、という技術の面で相通じるものがあります。

 また、投資はギャンブルとも似通った面があります。投資にしてもギャンブルにしても、いかに「負けるときは小さく、勝つときは大きく」するかというのがポイントであり、どちらも「所持金を増やしたい」「長くプレイしたい」との願望を持つという共通項があります。しかしながら、投資を一発勝負のギャンブルとして捉えてしまえばその成果もギャンブル同様になってしまいます。

 人類がギャンブルに興じる姿は、紀元前3500年前のエジプトの古代墓地にも描かれているそうですが、運や不運に左右されると思いがちな未来(ギャンブルの結果)を現在の統制下に置こうとする試みが長い間行われてきました。そうした試行錯誤を経て生まれたのがギャンブルにおける「必勝法」というもので、今回はそれをご紹介したいと思います。

◆マーチンゲール法

 最も有名な「必勝法」で、日本では「倍賭け法」とも呼ばれます。ルールは至って簡単。負けたら賭け金を2倍にしていく戦法で、勝った時点で掛け金を最初の単位まで戻します。

 資金が無尽蔵にあり、それを相手が全て受けてくれるのであれば、理論的にはこの方法は負けることのない「必勝法」になりますが、大抵は先に資金が底をつきます。

 1万円の掛け金でコインの裏表を当てるギャンブルを始めたとしますと、9回連続で負ければ10回目の勝負では掛け金が512万円まで増えており、それも負ければその時点で負け金総額は1024万円に膨らんでいます。

 倍賭け法では勝った場合は少額で、負けが連続した場合に掛け金が倍々に増えていってしまうことから別名「破滅法」とも言われます。

◆逆マーチンゲール法(パーレー方式)

 その名の通りマーチンゲールとは反対に、1単位賭けて勝てば掛け金を2倍にし、さらに勝てばその倍の4倍にしてゆく手法で、負ければ1単位に戻します。

 コインの裏表を当てるギャンブルを1万円から始めた場合、10連敗しても負け金の総額は10万円ですが、10連勝すれば1023万円になります。

 勝っている間は大金を稼ぐことにできますが、どこかで負ければその時点で膨らんでいる賭け金を一挙に失うことになります。つまり、連勝中に潮時を見て止めないと、負けが積もっていくことになります。

 ギャンブル必勝法あるいは攻略法というのは他にも多種多様にあります。連戦連勝などありえないという前提の下に、昔から多くの人がいかに所持金を増やして、長くプレイを続けることができるかということに知恵を絞ってきた試行錯誤の歴史ですが、もちろん完全無欠な必勝法など存在しません。

 マーチンゲール法では、「資金が無尽蔵にあり、それを相手が全て受けてくれる」というあり得ない条件の下に初めて可能になる必勝法(最終的に負けないというだけで、大金を稼ぐことは困難)であり、そのために相当な金額があるとすれば定期預金にでも積んでおいた方が合理的です。逆マーチンゲール法は、連勝中に止めることができれば大勝の可能性もありますが、そうなりにくいは人間の欲深さ故です。そして多くの場合、コツコツ勝利を重ねても、1回の負けで一気にマイナスに転じてしまうことになります。

 ギャンブルにおける「必勝法」をあえてご紹介しましたのは、必勝法とはつまり「マネーマネジメント(資金管理)」であり、「リスクコントロール」であり、「自己の管理(抑制)」に他ならず、これらの考え方は投資家にとりましても重要な示唆を与えてくれるからです。

節目とは

2009/07/18

【節目】(ふしめ)とは、株価が下がってこのくらいになれば買ってみようと思う人たちが現れやすい「押し目メド」や、逆にここまで上昇したら一旦売ろうという人たちが出てきやすい「戻りメド」のことを言います。

 例えば、ある時点の安値500円を底にして上昇を開始して1000円まで上昇した株があるとします。このケースで押し目メドを想定してみますと、その判断で重要なのは『3分の1押し』、『50%押し(半値押し)』、『38.2%押し』『61.8%押し』と呼ばれる4つの水準となります。

 「3分の1押し」は、安値から現在の株価までの値幅の3分の1下げること、「半値押し」は2分の1下落することです。残る2つは『黄金分割比』と呼ばれ、自然界に存在する最も美しい形の比率です。

 具体的に計算してみます。このケースでは株価の上げ幅は500円(1000-500)です。その3分の1は166円(500÷3)、50%は250円、38.2%は191円、61.8%は309円となります。

 つまり、3分の1押しなら834円(1000-166)、50%押しなら750円(1000-250)、38.2%押しは809円(1000-191)、そして61.8%押しは691円(1000-309)となり、それぞれが押し目メドとなる訳です。

 相場ですから、必ずこの4つの押し目メドで下げ止まるとは限りません。しかし、チャートを参考にしている人たちは多く、予想通りに株価が下げ始めましたら、834円、750円、809円、691円という水準はそれぞれのチャート上の節目として意識される可能性は高くなります。

 次に、この株が「半値押し」の750円で下げ止まって上昇に転じた場合の戻りメドを算出してみます。高値1000円から安値750円までの下げ幅は250円。この3分の1は83円、38.2%は95円、50%は125円、61.8%は154円となります。従いまして、3分の1戻しは833円(750+83)、38.2%戻しは845円(750+95)、50%戻しは875円(750+125)、61.8%戻しは904円(750+154)となります。

 手堅く利益確定するなら3分の1戻しの833円や38.2%戻しの845円が売り目安となります。一方、株価が半値戻しを超えて61.8%戻し水準まできますと、節目はこの上に存在しません。つまり、高値の1000円まで節目が存在せず、そこまで戻りやすいことになります。

 その他にも移動平均線やトレンド分析等々、様々【節目】はありますが、本日ご紹介しました『4つの節目』は基本となりますので、実際のトレードでご活用頂ければと思います。

評価益を損失に変えないためのヒント

2009/07/15

投資に際しましては、まずはファンダメンタルズ分析(業績や相場環境等)やテクニカル分析(チャート分析)を行うことでリスクを計り目標を定めます。しかし、そのようなことに関わらず上がりもすれば下がりもするのが相場であり、そこに思惑や願望、恐怖・失望、損得勘定といった恣意性が絡んでくるため相場で利益を上げることが難しくなってしまいます。

 今回は、そうした恣意性を排除し、尚かつ相場の上がり下がりに対応しながら利益を追求するやり方をご紹介させていただきます。上昇過程で利益確定ができず、その後下がる過程で売却できずに評価益だった投資が損失になってしまい悔やんだという経験をお持ちの方もいらっしゃるかと思いますが、下記の方法はそういったことを防ぐための何らかのヒントになると思います。

 この方法で大成功を収めたW.D.ギャンは、自身の「ギャン理論」でも推奨しており、一般に『ピラミッディング』と呼ばれる売買技法です。相場の本質は洋の東西を問わず同じものでありますから、負けないやり方も洋の東西を問わず似通ってくるもので、ピラミッディングは日本古来の相場格言「上げるにつれ、買い玉は細くすべし」あるいは「利食いは遅く、損切りは早く」の実践と言えます。

 具体的には、買いを数回に分散しつつ、1回当たりの買い株数をしだいに減らしながら全体の量を徐々に増やしていきます。加えて相場に対応してロスカットあるいは利益確定の価格を変化させるというもので、以下に一例をあげてみたいと思います。

1.銘柄Aを200円で1万株買い付けしたと仮定します。
  と同時に180円まで下がれば損切るという注文(逆指値)を入れます。
  ※売り注文が執行された場合の損益 -20万円

2.株価が220円まで上昇、ここで6千株買い増しします。
  と同時に200円まで下がれば全て売るという注文を入れます。(前回の売り注文を訂正)
  ※売り注文が執行された場合の損益 -12万円

3.株価が240円まで上昇、さらに4千株買い増しします。
  と同時に220円まで下がれば全て売るという注文を入れます。(前回の売り注文を訂正)
  ※売り注文が執行された場合の損益 +12万円

4.株価が260円まで上昇、さらに2千株買い増しします。
  と同時に240円まで下がれば全て売るという注文を入れます。(前回の売り注文を訂正)
  ※売り注文が執行された場合の損益 +48万円

5.株価が280円まで上昇、買い増しはせず、売り注文の条件を
  260円に引き上げます。(前回の売り注文を訂正)
  ※売り注文が執行された場合の損益 +92万円
  以後、上昇が続けばその都度利益確保の売り注文の水準を上げていきます。

※備考
・銘柄選定とタイミングを十分に検討していることが前提となります。
・上記の例ではわかりやすくするため取引コストは無視しています。
・上記の例ではわかりやすくするため売買のタイミングを20円幅に設定しています。

 このようにピラミッディングは相場の強さを確認しながら買い上がる手法で、上記の場合、全体的なポジションは0→10→16→20→22・・と推移します。買い増す際の株数を徐々に減らしていくと同時に、一定の値幅あるいは下落率等でロスカットあるいは利益確定の売り注文を出しておくことがこの手法のポイントです。

 このやり方の大きなメリットは、実行する際に自己の心理的な抵抗を排除することが可能あるという点です。もっと細かに相場に対応してタイミングを決定していくという方法もありますが、複雑さが増せば主観(期待や都合のいい考え)の入り込む余地も増し、客観的な決定と実行が難しくなってしまいます。

 最終的に予め設定していた水準で全て手仕舞いますと、最後に買い増した株数の分のみが損失となり、それ以前に買い付けた株はすべて利益になります。上記の例で言えば、最大リスクを1回目の買付け時でロスカットした場合の値幅20円×1万株に抑えながら、利益の伸長は相場の上昇に任せることで、期待される最大利益(実現益)を伸ばしていくことが可能となります。

 利益を狙いつつも相場反落時の痛手を最小限に抑えるという効果が期待できるこの売買技法のもう一つの大きなポイントは、予め注文を出しておくため、四六時中相場をウォッチしている必要がなく、予期しなかった急落にも対応できるという点です。

 ちなみに、上記のように買い増し量を逓減させながら全体のポジションを徐々に増やしていく方法を「スケール・ダウン・ピラミッディング」と呼びます。

 他にも様々なバリエーションが考えられ、予想される上昇値幅の半分程度まではスケール・ダウン・ピラミッディングと同じように買い増しの株数を逓減させながら徐々にポジションを積んでいき、その後は徐々に利喰っていくというやり方もあります。この場合の全体的なポジションは0→10→16→20→16→10→0と推移し、このように上昇半ばでポジションが最大となるやり方を「リフレクティング・ピラミッディング」と言います。

 「儲かるならば最初から全額・・」というのが率直な意見かとは思いますが、投資家の思惑どおりに行くとは限らないのが相場でありますから、上記のようにリスクをコントロールしながら利益を確保するための対処は考えておくのが得策です。

酒田五法

2009/06/11

酒田五法とは、江戸時代の相場師(米相場)本間宗久が確立し、今に伝えられるテクニカル分析の古典中の古典です。

 本間宗久はローソク足の組み合わせにより、売り場・買い場を読む五つの法則を編み出しており、それが現在においても使われています。ちなみに相場解説等で「三尊天井」「明けの明星」などと言われるローソク足の形は、この酒田五法に基づくものです。

 酒田五法とは、具体的には「三山」「三川」「三空」「三兵」「三法」と言われるローソク足の組合せを指しています。今回は「三山」について簡単に解説させていただきます。

  • 三山
    「三山とは大天井の体型を表す線にして、底値より波乱を繰り返しながら順次上進して高値より下押す。これを三度同じ運動を繰り返すという体型にして、大天井となるものなれば、断固売り放つを良しとす。」

 これは、いわゆる長期上昇の後に出る「三尊天井」です。典型例としては、真ん中の山が最も高く、左右(両肩)の高値は最高値よりやや低く同水準にとどまり、三つの山を形成します。

 ちなみに三尊とは仏像の配置からきており、中央に釈迦なら両脇が文殊・普賢の両菩薩。阿弥陀三尊の場合は阿弥陀・観音・勢至。薬師三尊は薬師・日光・月光との組み合わせです。

 トリプルトップ型の典型であるこの形は、海外でも「ヘッド&ショルダーズ」と称し、同じく天井形成のパターンとされています。

 なお、これと反対の形が長期下落の後に出る「逆三尊」型となり、大底形成のシグナルとされます。

  • 三兵
     特に「赤三兵」といわれる型は、安値圏でもみ合い相場が続いた後、上値・下値を切り上げる形で小ぶりの陽線が3本続いたケースを指しており、上昇開始を知らせる合図としての意味を持ちます。

 反対に、しばらく上昇が続いた後で、前日陽線の終値よりも下で寄り付き、前日の安値を下回って引けた陰線が出現し、続いて同じように上値・下値を切り下げる形の陰線が2本、合計3本の陰線が続いた形は「三羽烏(さんばガラス)」と言って、相場暗転の象徴と見られます。

 尚、しばらく下落が続いた安値圏で下放れせずに大陰線が3本続いた際は大引けで「買い」とされており、その翌日が陽線となればさらに底打ちの確度が高まります。

 ちなみに「赤三兵」という名は、日本では以前、陽線を赤で描いたいたことの名残りです。酒田五法などの日本古来のローソク足(キャンドル・チャート)は、その見方とともに欧米にも広まり、欧米流では陽線を白抜きで描くことから「赤三兵」は「3 White Soldiers」、「三羽烏」はそのまま「3 Black Crows」と呼ばれています。

ミスを犯しているのは自分かもしれないという客観的視点

2009/07/08

「株式投資における最大の敵は自分である」といわれますが、売買を行うプロセスにおいて、相場や情報云々の前に自分自身が何らかのミスを犯している可能性は誰にでもあります。

チャールズ・エリスはその著書『敗者のゲーム』で次のように述べています。テニスには二種類のゲームがある。
すなわち「勝者のゲーム」と「敗者のゲーム」であり、この二つは決定的に違うものである。

どちらのゲームでも、プレーヤーは同じ道具、服装、ルール、得点計算方法、そして同じ作法と慣習に従ってはいるが、プロは得点を勝ち取るのに対し、アマは得点をミスにより失う。

エキスパート達のテニスは、長くエキサイティングなラリーの間、強力なショットを放ち、どちらかが敵の手の届かない所へボールを打ち込んで勝ちを掴む。対して、アマチュアのテニスは、長くエキサイティングなラリーとか、奇跡的なリカバリー・ショットというものはめったになく、ボールをネットに引っ掛けたり、あるいはコートの外に出してしまう。ダブル・フォルトも珍しくない。いつも自ら墓穴を掘って終わることになる。この種のテニスの得点は、ほとんど相手のミスによるものである。

エリスによれば、プロのテニスは勝者の勝つべく起こした行動により結果が決まる「勝者のゲーム」であるのに対し、アマチュアのテニスは敗者がミスを重ねることによって決まる「敗者のゲーム」であるとし、二つのゲームは基本的性格において正反対であり、株式投資も同様であると指摘しています。

株式投資で失敗する個人の共通項は「短期、人気、不勉強」です。よくあるのは、計画性や下調べもなく短期間で儲けることを狙い、上昇してきたという過去のデータとこの先どのくらいの上昇が見込めるかという将来の可能性を混同してその時々の相場で人気の銘柄に、よく勉強もせずに飛びつくというケースです。

 長期間の右肩上がりの相場が続く場合には、上記のやり方でも相場上昇が続く限りおもしろいように儲かるかもしれませんが、そうでない場合には取り返しのつかない痛手を被る可能性があります。
 
 視点を変えて、例えば700円を底値に1300円まで上昇(その後下落)した相場で、800円で購入し、1200円で売却できた投資家Aは「勝者」であると言えます。ここで気づくべきことは、自分が購入する際に800円で売りを出した投資家がいて、自分の売り注文の1100円に買い注文を入れてくれた投資家がいたということであり、投資家Aにとりましてはいずれの投資家も「敗者」と映ります。

 全く反対のケースも考えられます。ジリジリと安くなっていることに嫌気がさし800円で売却した銘柄が1300円まで上昇し、損を取り返すべく人気沸騰の別の銘柄で勝負をかけたら半値になってしまったというケースです。この場合、その水準で売りを出したことで安く仕入れた人がいて、自分が買ったおかげで高値で売却できた人がいるということになります。

 その時々において個々の事情や思惑があって売り買いが行われますが、常に自分とは反対側(「買い」に対して「売り」、「売り」に対して「買い」)の立場の人がいるということを認識しておくことが大切で、感情を排して、ミスを犯しているのは自分かもしれないという客観的視点が投資家には必要です。

 話は変わりますが、100億円以上の株式資産を有する竹田和平氏(「タマゴボーロ」で有名な竹田製菓の会長)は株式投資について次のように語っています。ちなみに竹田氏は、昨年からの株価急落で数十億円も株式資産が目減りしたと試算されます。その上での下記の言葉です。

「株価の数字なんて幻だがね。会社の価値は何も変わらんのに評価だけが上下する。僕みたいに百姓経験があると良く分かるが、投資は農業と同じ。『株』はまさに植えつける1株1株のこと。そこから上がる収益を目的に田畑を買ったのに、その地価が上がった下がったという意味は全くないがね。」ここで言う収穫とは配当のことで、竹田氏は配当収入だけでも年間数億円あるとも言われます。

 勝った負けたを競うゲームのようなやり方で、相場の上下に一喜一憂している投資家がいる一方で、上記のような姿勢で投資を行っている投資家がいます。前者の株式投資にはスリルと興奮がある一方で、後者のそれはおもしろみのない地味なようにも見えますが、勝者のやり方というのは得てしてそういうものです。

相場の神様が「投資の極意」としたこと

2009/07/01

本間宗久と同時代の人、慈雲斉牛田権三郎が残した「三猿金泉秘録」は、宗久の「三昧伝」とともに相場の聖典として現在まで読み継がれています。金泉秘録にある「ただせくな、せく商いに徳はなし」「万人が万人ながら弱きなら、のぼるべき理を含む相場なり」など、七五調の相場格言の多くは現在においてもよく使われているものです。

 その中から、時間分散と資金分散についての言葉を今一度ご紹介したいと思います。

  • 『一度に買うは無分別、二度に買うべし、二度に売るべし』

 よく耳にする相場格言の一つですが、リスク分散の観点から資金分散と時間分散の必要性を説いています。判断に自信がある場合でも、相場はそのこととは無関係に動くわけですから、常に余力を残しつつ、資金とタイミングを数回に分けてながら慎重にいくべきです。さらにはそうすることで、不測の事態や次にやってくるさらに大きなチャンスを活かすこともできます。

 もちろん、相場の流れを読む確かな目も必要です。また、昨日今日とでいくらも違わないで買い付けしたような場合は一度に買ったも同じ事で、上記にいう「二度に買うべし」とはなりません。「二度に買うべし」しかし「せく商いに徳はなし」です。

  • 『ただ急くな、百表上げて百表は、下げたためしが多きことなり』

 相場は上がることもあれば下落することもあります。相場が急上昇しているときは乗り遅れまいと買い急ぎたくなるものですが、上記はチャンスを待つことの大切さを説いています。天井付近ででの飛びつき買いも、底値付近での安値売りも、「今売買しなければチャンスを逃す」という「あせり」が原因です。相場は決して逃げないのですから焦る必要はありません。

 宗久は言います。「急に儲くべしと商いを急ぐときは、日々の高下に迷う故、相場を追いかけ、追いかけ商い致すゆえ、その都度毎に損出るなり」と。また、「是非是非上がるべし、今日中に買うべしと進み立候節、二日待つべし。是非是非下ぐべしと売気進む時は、是又二日待つべし。是極意の秘伝なり」と。宗久は別のところでは「三日待つべし」と言っていますが、要は焦らずに冷静になれということです。

  • 『売買に徳の乗りたる商内は、半扱商内(はんきゅうあきない)のすくい場と知れ』

 大きな利益を追求することが相場のロマンですが、一方で利喰いするときは半分だけに留めることの有効性を上記の格言は指摘しています。相場が上がるのか下がるのかについては可能性としては五分五分で、利喰いを入れた後に上がることもあれば下がることもあるはずです。そういった不透明な中での一つの心得です。半分の株数で利益を確定しながら、上だろうと下だろうと次の相場展開に対応できる余裕を持つことは、精神的に非常に楽となります。

  • 『高安に、気の安らかな半扱商内、寝ても起きても徳とれるなり』

 半扱商いを実践し、利益確定を入れながら相場に取り組むならば気分的には非常に楽なものです。半分を残し、もう半分で利喰いを入れることにより、利益の増減はあっても通常は損になるようなことは稀であるということを「寝ていても起きていても儲かる」と表現しています。もちろん「これがベストのやり方」ということではありませんが、一つの例として参考にしていただければ幸いです。

 株式投資では、相場のことや銘柄のことばかりが話題になりますが、資金の出し入れの仕方によって結果は大きく違ってきます。常に資金の温存を計り、安静な心理状態を維持することこそが昔も今も変わることのない「投資の極意」です。

はらみ足とつつみ足

2009/06/24

株価チャートの見方については様々な手法がありますが、株価チャートを構成するローソク足も要所要所で先行きを暗示する重要なヒントとなります。

 数あるローソク足の中から、今回は相場解説などによく登場する「はらみ足」と「つつみ足」について取り上げてみたいと思います。

  • はらみ足(孕み線)
     当日の値動きが、前日の始値と終値の間(前日のローソク足の実体部分)の範囲内で推移した際のローソク足で、前日線を母親に、当日線をお腹の子に見立てた表現です。

 この足型が底値付近や高値付近で現れた場合は、前日までの流れの中で、売り勢力と買い勢力がせめぎ合い煮詰まった状態にある見ることができます。「孕みは分岐の前兆」と言われますように相場の分岐点に現れることが多い足型です。

 しばらく下落を続けた後の底値圏で、陰線の後に陽線が孕むケースがよくありますが、この場合の2本のローソク足を1本として見ますと安値圏における下ヒゲが長いローソク足の出現となります。下ヒゲとは下に行きかけた相場が押し戻された形で下値に対する抵抗の強さを表していますので、この線の後に上寄り陽線(前日の終値を上回って寄付き、そのまま上昇して終わった形)が出れば底値形成の確度が高まります。

 反対に上値での陽の陰孕みの場合は、さらに翌日の下寄り陰線(前日の終値を下回って寄り付き、そのまま下落して終わった形)の出現で目先的な天井形成を疑ってみることになります。

 孕み線は必ずしも相場反転の急所ではなく、攻防の分岐点として捉えるべきで、「孕みは放れにつけ」と言われますように翌日の動きが決め手となります。

 尚、天井圏での前日の陽線が当日の小陽線を孕む形となる「陽の陽孕み」は、寄り付きよりも高く終わる陽線が2本連続しているものの、上昇力の息切れを示唆しています。反対に安値圏での「陰の陰孕み」は下げ圧力の消耗を意味します。いずれの場合も相場転換点に現われやすい足型ですので注意が必要です。

  • つつみ足(包み線、抱き線)
     前述のはらみ足とは長短が前後した形で、この名称も形状そのままの表現です。

 天井圏や底値圏で、前日までの流れと逆の陰陽で包み足が出現した場合は、それまでの勢力を一気に包み込んでしまうほどの反対勢力が出現した証で、相場転換の可能性を示しています。

 また、同じ陰陽での包み足となった場合でも、天井圏で陽線が陽線を包む形あるいは底値圏で陰線が陰線を包む形の出現は、最後の力を振り絞った勢力出尽くし型となりますので注意が必要です。

 つつみ足もはらみ足同様、「分岐の前兆」と見られる足型で、しばらくの上昇の後、またはしばらくの下落の後に出現した際に天底を形成する可能性のある足型です。

 参考資料 http://www.aqua-inter.com/special/411h.html

 ところで、酒田五法を編み出した本間宗久は相場の心得を今に残しています。いわく、「機に待つに即ち仁、機に乗ずるに即ち勇、機に転ずるに即ち智」。

 チャンスが来るまで精進しながら待つことを意味する「仁」、チャンスが来れば果敢に乗るのが「勇」、気持ちや考えを切り替えて柔軟な対応ができることが「智」です。もちろんこれら三つを為すには、それを阻害する自分自身に打ち克つ必要があります。

 投資を行うということは、相場との闘いではなく、今も昔も自分自身との闘いです。その上で、上記の言葉をしっかりと理解し相場に臨みたいものです。

切り込みとカブセ

2009/06/17

四本値(始値、高値、安値、終値)を表現するローソク足からは、その出現の場所や形によって様々な情報(投資家心理)が読み取れます。

 先週ご紹介した下ヒゲ(下影)の長い線は、相場が一時的な安値からたくり上げるように値を戻した際の形で、線の陰陽に関わらず「タクリ線」と呼ばれます。下落が続いた後のタクリ線の出現は、相場が下に行きたくないと言っている線であり、反転のサインとして注目されます。ただし、これが上位に出れば逆の意味となり、その相場の上伸力は尽きたと判断されます。※下記参照

 ・株価チャートの基本 → http://www.aqua-inter.com/hint/chart.html

 尚、長いヒゲを描いた翌日以降の相場で、改めてヒゲの水準を抜いた場合、その方向への相場の強さを確認したことになります。

 ところで、陰線(下げた事を表わす黒塗りのローソク足)の後に、前日の安値を下回って寄り付いたものの、前日陰線の下げ幅の大部分を戻して終わる形を「切り込み線」と呼び、大幅安からの急激な反発が底堅さを示しています。

 ・切り込み線 → http://www.aqua-inter.com/special/410h1.html

 しばらく下落した後でこの形が出現した場合、底値形成・上昇転換となる可能性が出てきます。2本のローソク足からなる切り込み線を、1本のローソク足に見立てますと上記で説明したタクリ線(下影線)になる点がポイントです。大陰線が出た翌日に安く始まって反発した場合に、その日の終値が前日の陰線の大部分を戻すかどうかが注目となります。

 また、切り込み線と逆のパターンで、大きな陽線(相場上昇を表わす白抜きのローソク足)の後にその高値を上回る水準で寄り付き、前日の上げ幅のほとんどを押し戻す形の陰線を「カブセ線」と言います。

 ・カブセ線 → http://www.aqua-inter.com/special/410h2.html

 これはそこから上の水準には売りが控えていることを示しています。2本のローソク足からなるカブセ線を、1本のローソク足に見立てますと上ヒゲが伸びた上影線の形になり、しばらくの上昇の後にこれが出ればトレンド転換の可能性を考慮する必要があります。

 ちなみに今回ご紹介した足型の要点は、それまでの勢いを打ち消す意味のヒゲになるかどうかです。
 
 チャートの見方と言いましても全てのローソク足の1本1本について意味を求めても詮無いことです。しかしながら、相場が天井や底値を形成する時、あるいは中段もち合からの放れなど、相場の重要な転換点には、その前後の投資家心理の葛藤の姿が如実にローソク足に表れるものです。

 もちろん上記のようなローソク足の形状は、その後の展開でその意味が打ち消されることもあります。また、これが出たら天井、これが現れたから底値というのは結果であって、必ずしもその時点で確定するわけではありません。ただ、そういった場面に出現しやすいローソク足の形状はしっかりと覚えておきたいものです。

ローソク足のシグナル

2009/06/10

ローソク足はもともと日本で生まれ、日本で発展してきたもので、「罫線(けいせん)」あるいは「陰陽足」と呼ばれます。「罫」が変じた「卦」は陰陽をもって占う(易)の意味を含んでいます。

 既にご存じのこととは思いますが、改めてローソク足の描き方を簡単にご説明しますと、始値よりも終値が高い場合は白ぬき、あるいは赤塗りで描き(下辺が始値、上辺が終値)、これを「陽線」と呼びます。反対に、終値の方が安い場合は黒塗りの「陰線」(上辺が始値、下辺が終値)となります。始値と終値との間の部分(実体)の長さは相場の変動幅(陰陽の強さ)を示しており、高値と安値は上下に伸びた「ヒゲ」(または「影」)で表わされ、これらの形がまるでローソクのように見えるため「ローソク足」と呼ばれています。詳しくは下記にてご紹介しておりますので参考にしていただければと思います。

 ・株価チャートの基本 → http://www.aqua-inter.com/hint/chart.html

 ローソク足は陰陽をもって先行きを読むために用いられるものであり、ローソク足を材料に皆が動くこともあるため、その読み方を知らないと流れに取り残されることもあります。ということで今回はいくつかのローソク足についてその意味をご紹介したいと思います。

 上記サイトにてもご説明しておりますが、始値と終値が同値となった場合は「寄引同事線」あるいは「十字線」と呼びます。十字線は、株価が上に下に動いたけれど、結局は始値に戻ってきたということであり、売りと買いの勢力の拮抗・投資家の迷いを示唆しています。この線が天井付近や底値付近で現われた場合は相場の転換点となるケースが少なくありません。

 安値から大きく回復して引けた場合は、下に大きなヒゲを作りますが、これは安値から買い戻された形で「下値が堅い」あるいは「下値には買い勢力がある」と読み取ることができます。とくに安値圏で下ヒゲの長いローソク足が出ると、株価が下げ止まり、反発する可能性が高いとされます。反対に、高値から大きく離れて引けた場合は、上に大きなヒゲを作り、この形からは「上値が重い」あるいは「売りが待ち構えている」と見ることができ、とくに天井圏でこれが出た場合は反落を警戒するサインとなります。

 ・参考資料1 → http://www.aqua-inter.com/special/409h1.html

 次に「赤三兵」についてご説明させていただきます。赤三兵の「赤」は、陽線を赤塗りのローソク足で描いていた頃の名残で、しばらく下落が続いた後の安値圏で陽線が3本連続で出現すれば、その後は大幅反騰に突入する可能性が高いとされます。

 相場の下落が続くということは、耳にする情報は弱気のものがほとんどで、大多数の投資家はそれまでの下落の動きがまだ続いているとの認識を持ち、買い意欲が萎えている状況でもあります。そのような時に、短線であっても陽線が3本連続して出現したという事実は買い勢力の盛り返しを示しており、この形は昔から底打ち・打診買いのサインとされています。

 反対に、天井圏での反落のサインとなるのが「黒三兵」で、「三羽烏」という名で知られています。

 天井の判断は、その後の反落の動きがあって確定されるものであるため、高値圏から多少反落してもその時点では市場は楽観的な見方が支配しています。そのような中で、つたいの陰線が3本連続して現れるのが三羽烏です。押し目買いのチャンスと見る向きの買いも入るため出来高が増加しますが、それでも株価を浮上させるに至らない場合は本格的な下落転換を注意する必要があります。

 ・参考資料2 → http://www.aqua-inter.com/special/409h2.html

 以上、いくつかのローソク足をご紹介いたしましたが、相場の流れの変化を読む際の情報の一つとしてローソク足の意味を知っておくと大変便利です。

 ちなみに、米相場にルーツをもつローソク足(キャンドル・チャート)は、その意味とともに欧米に広がりました。「赤三兵」は、欧米流では陽線を白抜きで描くことから「3 White Soldiers」、「三羽烏」はそのまま「3 Black Crows」と呼ばれています。

相場の一生 ~8つの局面~

2009/06/03

株価と出来高は連動性が高く、株価上昇とともに出来高も増加、株価が下落してきますと出来高も細るのが一般的です。

 また、しばらく下落した頃に「そろそろ反転近し」との思惑買いが入ることで、まず出来高が増加しその後に株価が反転するケースや、株価が天井を形成する前に出来高が細るケースがあります。このような、株式相場で出来高が株価に先行して動く性質は、「株価は出来高の影」あるいは「出来高が原因で価格が結果である」という言葉で表現されてきました。

 株価と出来高の関係を見た場合、一つの典型的な事例としましては、底値圏でほとんど動きがなかった株価が、出来高が増加し始め、それとともに株価も上昇、株価上昇と出来高増加がしばらく続いた後、高値をつけ、出来高が細りつつも高値近辺で推移、その辺りが天井となり、そこからまた相当期間の下落が続き底値に至るというサイクルがあります。このような相場の一生とそれに伴う投資判断を局面ごとに分けてみますと下記のようになります。

1.出来高が増加し始めるが、株価は底値圏でほとんど横ばいで推移。
  (買いの準備)

2.出来高の増加が続き、株価も上昇傾向を鮮明にする。
  (買い転換)

3.出来高は高水準を保ち、株価はさらに上を目指す勢い。
  (買い継続)

4.出来高が減少傾向を示す一方、株価はなおも上昇。
  (天井圏間近と見て新規の買い増しを見送り、徐々に利喰い売り)

5.出来高はさらに減少、株価は頭打ち横ばい傾向に。
  (急ぎ利喰い売り)

6.出来高の減少傾向が続き、株価も明らかに下落に転じる。
  (本格的な売り転換)

7.出来高が低水準のまま、株価が下げ続ける。
  (売り方針継続)

8.株価は下落傾向にある中、出来高に増加傾向も見て取れる。
  (底入れ近しと見て売り見送り、買いタイミング待ち)

 つまり出来高とは人気のバロメーターであり、普段と人気化した際の出来高の状況は銘柄ごとに違うため、株価チャートなどで予め出来高の増減の推移を掴んでおく必要があります。

 もちろん実際の売買の際は複合的な要素で投資判断を行うわけですが、上記1から8までの局面認識は、相場の流れを読む際に重要なヒントを与えてくれるはずです。

 尚、ここまでの話は東証1部上場銘柄のような普段の取引量の多い銘柄についてですが、新興銘柄のような普段の出来高が極端に少ない超小型株については上記の法則が当てはまらないケースがありますので注意が必要です。

 一時のブームのように、個人投資家の間で特に新興市場の銘柄が値動きが軽く、短期的に大きな利益を出せるとして好まれる時期が時々あります。しかし、値が飛ぶのは普段の出来高が極端に少ないところに急に人気化したためであり、ひとたび人気が弱まれば急激な下げになりがちです。

 一般的に、取引量に比例する商いのし易さのことを「流動性」と呼び、「換金性」という言葉に置き換えることも可能です。「流動性が高い」という場合は取引量が多く(売り注文も買い注文もたくさん入っており)いつでも希望に近い価格で売買が可能であることを指しています。反対に商いが薄く、商いが一方に偏りやすい、それ故に希望価格での約定が難しいことを「流動性が低い」と言います。

 近い将来の換金を前提にした投資においては、「買いたい時に買いたい価格で買え」「売りたい時に売りたい価格で売れる」ということが重要で、特に投資初心者においては流動性の低い銘柄は避けるべきです。

システム売買に見るやり方のヒント

2009/05/27

買えば下がり、売れば上がるということを幾度も経験し、思惑で売買するとどうしても上手くいかない・・という人は案外多いものです。そういったことを踏まえ、買いたい思惑や売りたくなる気持ちなど、自己の感情や思惑と離れたところに判断の基準を置き、それに沿って売買をしてみたらどうだろうかという発想があります。

 このような考え方の下に、ある一定の条件で必ず売買をするような取引手法を「システム売買」と呼びます。売買の時点で損をしていても儲かっていても、先行き上がりそうな感じでも下がるような気がしても、「買いシグナル」で買い、「売りシグナル」で売るという具合に機械的に売買を繰り返すやり方です。

 そこでシステム売買のシンプルな例として、移動平均線のゴールデンクロス(短期線が長期線を上抜く)とデッドクロス(短期線が長期線を下抜ける)利用するやり方を取りあげてみます。具体的には、ETF(上場投信)の中でも出来高の多いTOPIX連動型上場投資信託(1306)について、5日移動平均線と25日移動平均線のゴールデンクロスを買いサイン、デッドクロスを売りサインとし、以下の売買ルールの下で過去6カ月における検証(バックテスト)を行ってみますと下記のようになります。

  ・運用株数は1万株
  ・株価材料等は一切考慮しない
  ・ゴールデンクロスorデットクロスの当日の終値で売買
  ・信用売りも利用(途転商い:買いを手仕舞って、売りにまわること。
                また、売り手仕舞って買いにまわること。)

   08年12月15日 866円×1万株 買い
   09年 1月15日 812円×1万株 売り   (54万円の損失)
             812円×1万株 途転売り
   09年 3月19日 781円×1万株 買い戻し (31万円の利益)
             781円×1万株 途転買い (買いポジション継続)

 ※参考チャート:TOPIX投信(1306)ラインチャート
       
         http://www.aqua-inter.com/special/407h1306.html

 検証の結果、過去6カ月で売買ポイントは3回、実現損益は23万円の損失ですが、買いポジションを継続している現在(昨日終値909円)は128万円の評価益となっています。ちなみに過去1年で検証した場合、昨年6月に売りサインが点灯、11月の買いサインでおよそ456万円の利益が加算されます。結論としましては、一時的に損失は出ますが、トータルでは利益を確保できそうです。

 上記では5日線と25日線を使いましたが、一定の範囲を上下するもみ合い(横ばい)相場ではダマシ(無用なサイン)が頻繁にあらわれる可能性があるため注意が必要です。また、他に最適な組み合わせがあるかどうか、上昇相場あるいは下落相場について向き不向きがあるのかどうかなどについても検証の必要があります。

 尚、上記のようなシミュレーションを行う場合には、松井証券の「ディーリングブラウザ」、カブドットコム証券の「スーパーチャート」、マネックス証券の「マーケットウォーカー」などのトレーディングツールが役立ちます。

 株式投資において百戦百勝はまず不可能です。その上で、機械的な判断で売買することのメリットは、ニュースや相場状況に一喜一憂する煩わしさから解放され、工夫しだいで損失を限定しつつ利益を伸ばすことが可能であるという点です。

 株式投資において売買のポイントを間違えれば、上手く利益を上げることはできません。上記のシミュレーションは結果としてベストな投資収益を上げられたわけではないかもしれませんが、上記のように売買のポイントを意識して投資を行うことができれば、相場の逆をやってしまいがちな人の投資成果も格段に違ってくるはずです。

 株式投資では売買ルールあるいは損失限定のルールさえきっちりしていれば、2勝5敗でもトータルで利益を得ることができます。こうした点が株式投資のおもしろさであり、工夫のしどころです。

押し目買いとナンピン買い

2009/05/20

皆様ご存知の「ナンピン」という言葉は、困難を平らにする(難平)ということから来ており、用語辞典などでは、買っている株が大幅に値下りした場合、同じ株を安値で仕込み、買いの平均単価を引き下げて戻りを待つ投資方法として説明されます。

たとえば、500円で買った株が300円に値下りしたとします、このときに同じ株数を300円で買い増ししますと、買いの平均単価は400円になります。時価に比べ、マイナス200円がマイナス100円となり、浮上が容易になるわけです。

しかし、相場の世界では昔から「下手なナンピン、スカンピン」「下手なナンピン怪我のもと」という諺があるくらい、ナンピン買いは難しいものとされています。

たしかにナンピンには平均買い単価を下げるという効果がありますが、保有株数も増加することになり、例えばナンピンした結果、株数が倍になればリスクも倍になるということを忘れてはいけません。5000千株保有の銘柄が50円下がれば25万円の損失ですが、ナンピンして1万株に保有株数が増加すれば50円の値下がりは50万円の損失になるということです。

昔の相場格言にはナンピンをすすめるものもあれば、ナンピンを禁じたものもたくさんあります。本間宗久は「ナンピンして金額がかさみ、二進も三進もいかなくなってしまうことはよくあることです」「ナンピンするよりも、利不運の時は相場から一時撤退して休むことが重要」であると説いています。また、チャート分析の大家ギャンの投資ルールはナンピンを禁じています。

一方で、押し目買いの有効性は疑いの余地がありません。では「ナンピン買い」と「押し目買い」はどこが違うのかという疑問がわいてくるかと思いますが、それはシナリオに変化がない、あるいはトレンドに沿っているか否かの違いです。

例えば以下に示すようなチャートの場合、投資家凸さんがAで購入した銘柄をBで買い増しするのは押し目買いです。この場合はわずかながらもAの買値を下回っていますのでナンピンの効果もあります。その後950円近辺で売るケースがあるかと思いますが、この場合はそのままのポジションを維持しCで買い増ししました。平均買値が上がってしまいますがこれも押し目買いで、この時点では青矢印の展開が最も可能性が高いシナリオとなっているわけですから有効な戦略です。

しかしながら思惑がはずれトレンドラインを割り込み下落してしまったので、投資家凸さんは黒矢印のポイントでこの相場から潔く撤退(損切り=判断の誤りを修正)し、新しい心持で次のチャンスを狙うことに専念しました。

一方、投資家凹さんは、Aで購入した後、Dで買い増ししました。これはトレンドを割ってからの買いですから、押し目買いではなくナンピン買いで、平均買値を下げることに成功しました。

その後の展開はどうか。

このチャートのその後は下記のようになっており、投資家凸さんは損失を出して失敗しましたが実はこれが正解です。投資家凹さんは、平均買値を下げることには成功しましたが、その後の相場下落で損の上塗りとなり、資金を長い間塩漬けにし保有を継続した現在も平均買値さえも上回ることができません。

本間宗久はこうも言っています。「ナンピンをする場合でも、簡単に考えずよく相場を見極め、需給動向を考えて出動するように」と。

気をつけなければいけないのは、ナンピン買いも新規投資となんら変わらないという点です。保有銘柄と同じ銘柄を購入する場合でも、改めて全体と個別を照らし合わせ、相場とシナリオを再点検する必要があります。もちろんナンピン買いが功を奏する場合もありますが、それは適切な買いのポイントを把握できてのことです。

「ナンピン」と言いますと、単に買いコストを下げることだと説明され、それだけで意義があることだと印象づけてしまうのは非常に罪な話です。「押し目買い」という言葉もそうです。押し目買い=単に下がったところで買うというようなイメージを持つ人も多いようですが、押し目買いの前提である「上昇トレンドの継続」という観点を忘れてはいけません。

また、何を判断の基準にするにしましても、不安や欲望のままにその都度基準やルールを曲げてしまったり変更していたのでは成長も成果も得られません。

たまたま今回は下落してしまったケースを例にいたしましたが、どのような状況でありましても買い付ける際は、上昇トレンドラインが引けるかどうか、あるいは割り込んではまずいポイント(下値支持)が見えるかどうか、そしてそれを活かすことができるかどうかによって投資の成否が大きく左右されます。

不利運の時には休んで(撤退して)相場の趨勢を見極めることも大切で、希望的観測の下にいたずらに資金を塩漬けにしないことが長く投資生活を続けられる秘訣であり、成功の鍵でもあります。

予想収益と予想PERについての補足

2009/05/13

日経新聞朝刊の「主要指標」の欄には数々の株式指標が掲載されていますが、日経225種平均株価の予想PER(株価収益率)については、先月の24日朝刊に23日分として285倍の予想PERが掲載されたのを最後に、その項目は「-」が記載されたままになっています。

 PERとは、株価を1株利益(EPS)で除して求められ、企業の成長性から見て株価が割安か割高かを計る指標として用いられますが、最終利益が赤字(1株利益がマイナス)であればPERは算出できません。

 例えば日経平均の予想PERは、指数採用の225銘柄の時価総額の合計を225銘柄の予想最終利益の合計で除して求めますが、4月中旬以降、09年3月期業績見通しの下方修正が相次ぎ、日経平均に採用されている225銘柄の最終損益の合計が赤字になったため、日経平均の予想PERが算出不能となりました。

 毎週土曜日朝刊の「株式週間高低」の欄には個別銘柄の予想PERが掲載されていますが、そこで予想PERが「-」となってい場合はPERが計算できないということであり、最終損益見通しが赤字、1株利益がゼロ、1株利益が小さいためにPERが極端に大きな数字になってしまう場合のいずれかです。

 また、JFEホールディングや信越化学工業、東京電力などは既に2009年3月期決算を発表を終えていますが、今期業績についてはそれぞれ「現時点で合理的な業績予想の算定ができない」などとして2010年3月の業績予想を「未定」あるいは「-」としています。

 しかしながら、発表翌日の日経新聞の財務面「本決算」の欄にはそれぞれの予想数値が掲載されています。これは点線で囲まれた部分に注記されていますように日経新聞社独自の予想数値です。

 参考までに、信越化学(4063)における日経の今期予想EPSは162円であり、それを元に計算した場合の本日現在(5040円)の同社の予想PERは31倍となります。また、業績予想を公表しない企業については、東洋経済新報社も独自に予想数値を算出しています。例えば信越化学の2010年3月期について東洋経済新報社はEPSを300円と予想しており、それを元に本日終値で計算した予想PERは約17倍となります。

 この違いは、オンライン証券の日経新聞社が情報提供元となっている個別銘柄の指標画面と、東洋経済新報社が情報提供元となっている業績予想画面等で確認することができます。信越化学の場合、予想EPSが162円となっているのが日経予想、300円となっているのが東洋経済予想です。つまり、業績予想を非開示にしている企業については予想データ提供元のさじ加減一つで、予想PERは倍ほども違ってくることになります。

 尚、日経新聞の指標の欄に掲載されている「前期基準」と「予想」の二つのPERについて、前期と予想の対象決算期は企業が決算を発表した時点で入れ替わります。

 現在本格化している企業の決算発表は今週末にピークを迎えていますが、日経などの独自予想を含めて予想データが出そろい、2010年3月期の予想収益合計が黒字になれば、日経平均株価等の予想PERは改めて算出されます。

 ちなみに2003年4月の安値は、昨年更新されるまでバブル崩壊後の最安値で、その後上昇に転じましたが、2003年4月当時、百数十倍だった日経平均株価の予想PERは決算一巡後の5月後半には10倍台にまで急低下しています。今回も、4月後半に285倍だった予想PERが決算発表一巡後にどの程度変化するのか要注目です。 

関連銘柄を探すコツとベータ値

2009/04/30

個々の銘柄の動きはそれぞれ別個に動いているように見えましても、市場の動きにある程度影響されます。影響を受ける度合いは銘柄ごとに異なり、こうした個別銘柄の市場に対する感応度を「ベータ(β)値」と呼びます。

 日経平均株価や東証株価指数(TOPIX)などの市場の動きに対して連動性が高いのか低いのかを示すベータ値は、言い換えればリスク指標でもあります。つまり、市場との連動性の低い銘柄は市場全体の上げ下げに対して反応が鈍く、逆に高い銘柄は市場の動きよりも大きく変動します。

 ベータ値はある一定期間の「個別銘柄のリターン÷マーケットのリターン」の式で求められ、例えばある銘柄の日経平均に対するベータ値が1.5であれば、日経平均が10%上昇するとその銘柄は15%上昇し、逆に日経平均が10%下落した場合にはその銘柄は15%下落する傾向があることを意味します。

 個々の銘柄のベータ値は、例えばマネックス証券で株価を表示した場合の「指標・業績」画面で確認することができます。また、証券会社が提供するスクリーニング(条件検索)では他の指標とともにベータ値の条件を設定することが可能です。

 市場との連動性の高さを示すベータ値は、相場上昇時にはベータ値の高い銘柄中心で運用するなどの投資判断が考えられます。ただし、ベータ値は、直近(例えば180日の対指数比較)の値であって固定的なものではなく、ある程度の誤差が生じることを認識した上で利用する必要があります。

 ところで、「風が吹けば桶屋が儲かる」という諺をご存じかと思いますが、「風が吹けば砂ぼこりが舞う、そうすると目の悪い人が増える、眼の悪い人が増えると三味線引き(盲の人が家の門前で三味線を引いて金銭をもらうという稼業の人)が増える、三味線引きが増えるとネコがいなくなる(昔はネコの皮で三味線を作っていた)、ネコがいなくなるとネズミが増える、ネズミが増えるとネズミが桶をかじる、桶をかじると新しい桶を買わなくてはならない・・・」というように、一つの事象が次々に影響してゆくことを短い言葉で言い表しています。
 
 このように一つの事象からその後の展開を読む力(推理力)が備わっていれば、個々の投資成果はかなり違ったものになっているかもしれません。

 株式市場では一つの材料が何度となく蒸し返され、その度に上げ下げを繰り返します。また、この銘柄が動けばあの銘柄も動くといったような、いくつかの銘柄が同一の材料で同じような動きをすることがあります。このような動きに対して先んじようと思えばやはり記憶力や知識が重要となってきます。もちろん、記憶力や知識は相場における推理力の拠りどころとなります。

 しかし、そうは言いましても日々相場の動きや個々の材料のチェックにそれほど多くの時間を割けないという方がほとんどで、ましてや東証1部だけで1700を超える銘柄の細かい内容まで把握するのは困難です。そういった場合に役立つのが「ニュース検索」です。

 松井証券の「ニュースファインダー」やマネックス証券の「連想検索」などが使いやすいかと思いますが、例えば今なら「インフルエンザ」というキーワードで検索すれば、インフルエンザに関わる材料で動いた銘柄が検索されます。その材料に連動性が薄い銘柄まで抽出されることもありますが、問えば「マスク」など、調べたい材料に関連するキーワードにて検索してみることで対象を絞ることができます。ローマ字の単語を検索する際は、全角英数、半角英数などと書式を変えて検索してみることがコツで、この作業により「○○関連銘柄」を探すことが容易になります。

 今回の「インフルエンザ関連」や「液晶関連」などすでに多くの方がご存じの銘柄群がありますが、新しい話題がでてきた際にニュース検索がとても重宝します。そこで抽出される銘柄は直近のデータであり、そういう意味では過去のものですが、記憶する変わりに記録として残し自分なりの「関連銘柄リスト」をつくっておけば、一つの事象やニュースから関連銘柄に連想が行き着くようになり、かなり役立つはずです。

美人投票と中長期投資

2009/04/22

昔、イギリスの大衆紙が100人の美人の顔写真を掲載し、読者に最も美しいと思う女性を投票してもらい、上位入賞者に選ばれた女性に投票した読者には賞品を与えるというコンテストを行いました。

 経済学史上において最重要人物の一人とされるケインズが、その著書「雇用・利子および貨幣の一般理論」で上記のコンテストを株式投資にたとえた話はあまりにも有名です。

 このコンテストでは、投票者は自分自身が美人と思う人へ投票するのではなく、平均的に美人と思われる人へ投票するようになるというのがミソです。

 つまり、市場参加者が「株価が上がる」と思うから株価が上昇するのであり、必ずしも収益性や将来性に基づいた適正な価格が市場で形成されるとは限りません。株価は多くの投資家の人気投票による結果だとし、そこで儲けるには他の投資家がこれから買いそうな銘柄に投資することが重要であるという論理です。

 たしかにこれも株式投資の一つのやり方で、昨日「省エネ家電の購入の際に付与されるエコポイントを、5月15日からの購入分に適用」とのニュースが報じられた直後に家電量販店の株価が動意付いたこともその好例です。

 また、猛暑になるとの予想で早い時期にその関連銘柄(サマー・ストック)が上昇するということもよくあるケースです。この場合は実際の夏が猛暑であるかどうかは別問題で、皆が猛暑になると思えば猛暑関連銘柄が上昇を始めます。例えば気象庁が発表する3カ月予報(目先では4月23日14時に発表)などもそのきっかけとなります。

 ただし、相場の性質上、時間の経過とともに投資家の期待や思惑といったものを織り込んでしまうことや、当初の期待を打ち消すようなデータが出てくる場合もあるため、上記いずれのケースでも長く持ちすぎることで利喰いの機会を喪失してしまう可能性があります。

 美人投票のたとえ話で語られる株式投資がある一方、長期的には株価は企業の収益性や将来性を反映するというのも事実です。

 株式投資の本質は「美人投票」だと看破してみせたケインズ本人は、そういう相場の特質を認識した上で実際には長期投資を実践し大きな財を築いた投資家です。ファンダメンタルズ分析を重視し、徹底的な逆張り投資(下落した時に買い、上昇した時に売る)で成功しており、買った銘柄は数年間保有するというスタイルでした。

 話は変わりますが、株式に投資できる資金を、中長期投資に振り向ける資金と目先狙いの資金とに分けて運用するという方法があります。

 中長期投資に振り向ける資金では成長力のある銘柄の押し目を狙って購入し、小さな変動は気にせずに利益の増大をじっくり待ちます。一方、相場を見ていますと「狙ってみたい」「これは行けそうだ」という銘柄やチャンス(と思う場面)に遭遇することもしばしばですが、そういった場面で、自己の判断でそのチャンスを活かそうとするのが残りの資金の役割です。

 資金を二つに分けることで、中長期で利益を大きくしてくれる銘柄を持つ安心感と、変動によって売り買いしたいという欲求を満たすことができます。一方は「大きく取る」投資、もう一方は「多く儲けるより短く儲ける」投資となります。ただし、いずれの投資におきましても安直な判断は禁物で、資金配分や売買の判断基準が曖昧ですと、良い結果は残せません。

 ところで人は、片方の手は器用ですがもう片方の手はあまり細かいことに向いていないものです。一般的に右利きの場合は、左手よりも右手が器用です。そういった意味から、株価のうねりを捉え売り買いで利益を稼ぐ銘柄を「右手銘柄」、中長期の利益成長を期待して保有する「左手銘柄」と言います。

 また、儲かりますと、もっとつぎ込みたくなるのが人情ですが、次も同じようにいくとは限らず、突然の急落で大怪我することもあります。それ故、いざという時以外は使わないという資金を残しておくべきです。いざという時、または千載一遇の大きなチャンスで活用するといった意味の他に、いつでも振り向けることができる資金があるという状態は、安定した精神状態で相場を観察することを可能にします。

 株式相場は時おり大きなチャンスをもたらします。資金がない状態では、相場ととも資産の評価額が減ってゆくのを眺めただ意気消沈するばかりですが、資金があれば下落もチャンスに変わります。

 資金配分を逸脱することなく、右手と左手を使い分けながら、判断の基準を決めたら相場につれて右往左往せず、相場は明日もあるという考えで常に余裕を持って臨めばまず成功します。

シグナリング効果

2009/04/15

2008年度に自社株買いを実施した企業数は前年度比3割増で過去最高の1185社を数えましたが、金額ベースでは3兆7200億円と07年度比で19.5%減少し5年ぶりに前年実績を下回りました。

 昨年9月の米大手証券リーマン・ブラザーズの破綻以降、金融危機の表面化、世界的な景気後退で企業の業績も急速に悪化し、自社株買いの実施額も月を追うごとに急減。日米ともに、自社株買いで資金を使うよりも内部留保に回して事業資金の確保を優先する動きが強まり、世界的な株安で、資金を海外でのM&A(企業の合併・買収)などに利用した方が得策との企業戦略も影響しました。

 ところで、自社株買いは皆様ご存じのことと思いますが、復習の意味で説明させていただきますと、過去に発行した株式を企業自身が市場から時価で買い取ることで、配当と同様、企業が得た利益を株主に配分する(株主にお金を返す方法の一つです。

 自社株買いという形で市場から株式を吸い上げれば、その分市場に流通する株式数が減少します。PER(株価収益率)などを算出する際に使う1株当たり利益は、自己取得株式数を発行済株式総数から差し引いた株数で計算するため増加します。つまり、自社株買いは計算上のPERを低下させる効果があります。

 また、増資と反対で、自社株買いを実施すれば自己資本が減少するため、利益を自己資本で除して求めるROE(自己資本利益率)を高める効果もあります。

 上記のように、市場が重視する経営指標の改善につながることや、流通する株式数の減少によって需給が引き締まることから自社株買いは株価の下支えとなったり押し上げ要因となります。経営指標の改善は1株当たり価値の向上であり、株価上昇と相まって、結果として企業の利益が株主に配分されることになります。

 もう一つ、自社株買いで重要な点は「シグナリング効果」です。企業の経営者と株主の間には情報の非対称性が存在します。つまり、経営や事業に関する内部情報や専門知識の面で経営者は株主に比べ情報に精通しているため、より適切な株価評価が可能なはずです。従って、自社株買いを実施するということは、自社の株価が割安であるという確証を経営者は持っているからだと株式市場は受け取ります。このことをシグナリング効果と言い、自社株買いの発表というアナウンスメントだけで株が上昇するケースもあります。

 尚、自社株買いの計画は、買い付け期間・取得株数とともに、期間中に株価が上昇すれば想定以上の資金がかかってしまうため、上限金額も合わせて発表されますが、中には自社株式の取得枠を設定したものの、買い付けが実施されないケースもあります。

 ちなみに自社株買い計画が発表されますと日経新聞の「投資・財務」面に掲載され、動向は下記サイトでも確認できます。

 → http://www.toushi-radar.co.jp/finance/jisyakabu.htm

 アメリカではM&A(企業の合併・買収)の際に、相手の企業の株主に現金ではなく、自社株買いで取得した金庫株を渡すのが一般的で、新たな資金を必要としないのが大きなメリットです。こうした活用法が日本でも増加傾向にあります。

 金融庁は昨年10月に自社株買いにおける規制を緩和し、1日当たりの自社株取得における買い付け注文数の上限を撤廃すると同時に取引終了時刻の直前30分間の買い付けを認め、3月末までの時限措置だったものを7月末までの延長を決めました。企業の自社株買いを後押しする政策ですが、先に述べた理由で直近の自社株買いのペースは落ち込み、増資の動きも見られますが、今後の動向しだいで状況が一変する可能性があります。

一目均衡表の雲と遅効スパン

2009/04/08

今回は、無料版やスペシャル版で度々触れている「一目均衡表の雲の上限を突破」について取りあげてみたいと思います。

 まず一目均衡表とは、ある一定期間の高安の平均に着目して作られたチャートで、転換線、基準線、先行スパンの各線はそれぞれ「押し(上昇過程の下げ)」や「戻り(下落過程の上げ)」の目安(下値支持線や上値抵抗線)として注目されます。
 
 下落トレンドにある株価は、上から、2本の先行スパン(雲)、基準線、転換線という位置関係になりますが、反転上昇する過程において株価は転換線を上抜け、次に基準線を上抜け、そのうち転換線が基準線を上に抜け、さらに株価は雲と呼ばれる抵抗帯を上に抜けるという具合にその位置関係を変化させてゆきます。最終的に上昇トレンドに転換した相場は、株価、転換線、基準線、雲という順番になります。

 2本の先行スパンで構成される「雲」の意味するところは、ある期間における投資家の採算価格帯です。

 採算価格帯であるということは、イコール抵抗帯でもあります。具体的には、株価が雲の下方に位置する場合は雲の領域が上値抵抗になり、株価が雲の上にあれば雲の領域が下値支持となる傾向があります。株価を飛行機に例えれば、雲の手前では雨(戻り売り)の抵抗を受け、雲を突き抜けると青空が広がり、飛行機の上昇にも弾みがつくといったイメージです。

 ところで、一目均衡表には、基準線、転換線、二つの先行スパンに加え、遅行スパンというもう1本の線があります。

 遅行スパンとは、その日の終値を、当日を含む26日前の位置に記入した線です。つまり現在の株価を26日前の株価に重ねて表示しただけの単純な線なのですが、これが意外と先行きを暗示する重要な線となっています。

 遅行スパンが株価を上抜けした(現在の株価が26日前の株価水準を上回った)場合、株価の上昇に弾みがつく傾向あり、他のテクニカル上のシグナルよりも一足早い「買いサイン」となるケースが往々にしてあります。遅効スパンが株価を上抜くこのような動きを「遅効スパンの好転」と言います。

 また、転換線が基準線を上回り、遅行線が株価の上に位置し、株価も抵抗帯(雲)の上に位置するようば場合を特に「三役好転」と言い、相場が強い上昇基調にあることをを示唆します。

 尚、日経平均株価では3月23日に遅効スパンが好転、3月26日に三役好転が示現しています。

 ちなみに 一目均衡表とは、昭和の初め、兜町担当の新聞記者であった細田悟一氏が一目山人(いちもくさんじん)というペンネームで、多数の人手とおよそ7年の歳月をかけてまとめ上げた相場理論で、波動論・時間論・値幅観測論に基づいて展開されています。上記のような売買サインも本来は波動論・時間論・値幅観測論の全てを考慮した上での判断となります。

 また、一目山人は、相場を考えるにあたっては「任意自在」であれとも言っています。運に任せるのではなく、運び(相場)に任せて心は自由自在であれという意で、自分の売値や買値に囚われた状態で相場を判断することを禁じ、相場を客観的に見つつ無心の判断を常に心がけよと教えています。

同値幅での上昇・・・さらなる上値

2009/04/01

「この辺までは下がるかもしれないから、その水準を待って買おう」「あそこまでは上がるだろうから、その手前では買いに慎重になろう(あるいは売り上がって行こう)」という具合に、株式投資を行う際は売買の目安となる水準(目標株価)を想定するのが通常です。

 種々のテクニカル分析手法の多くは日々変動している数値を元に、過熱感や行き過ぎ等を計るものであるため、例えば上昇した際の株価の目安を予め想定する場合は別の考え方が必要です。

 株価の目安を想定する際によく利用されるのが、PER(株価収益率)やPBR(株価純資産倍率)、過去の高値、過去に大商いとなった水準、上位に位置する移動平均線、「38.2%戻し(押し)」や「61.8%戻し(押し)」といった黄金分割比(フィボナッチ指数)、三段高下論の「3分の1戻し」や「2分の1戻し」などです。ちなみに昨日の日経平均株価の終値は、直近上げ幅(3月10日安値から3月27日高値まで)の38.2%押しの水準です。

 ※1000円幅で下げた場合、
      380円程度切り返すのが「38.2%戻し」
      500円戻すのが「2分の1戻し」。

 このような水準は、相場が反転した際に、過去の例から達成感が出やすい水準として意識されるものです。

 しかし、大きな流れの転換点ではさらに違った考え方が必要になってきます。そこで登場するのが「値幅」です。1000円下がれば、そこから2000円上昇する「倍返し」、1000円下がれば3000円上昇する「三倍返し」などがそうで、随分威勢のいい意見かと思われますがこれも経験則の一つです。

 また、過去の相場における変動幅が、その後の展開でも同じような値幅で動くというケースも多々あることです。ちなみに。昨年11月の日経平均は、5日の終値ベースの高値9521円から20日の安値7703円まで1818円下落しました。3月の終値7054円(終値ベースの最安値)に上記の値幅をプラスした水準(8872円)が3月27日の高値(8843円)にほぼ合致します。

 相場はすでに最悪期を脱しており、上げ下げを繰り返しながらも今後は徐々に上を指向するものと考えられます。本日反発したことで75日移動平均線が当面の下値支持として意識され、3月27日の高値(8843円)を抜けた場合に想定されるのが9400円から9500円の水準です。これは、昨年10月27日の7162円から11月5日の終値9521円までの上げ幅2355円を、3月10日の終値7054円に加えた水準であり、昨年10月と11月の高値水準に合致する水準で、この水準では上値が重くなる可能性があります。(この水準で中長期的な天井をつけるという意味ではありません。)

 いろいろやり方はあるかと思いますが、非常に現実的なシナリオの一つです。もちろん当たり外れを目的とするわけではありませんので、想定どおりに行かなくても柔軟に対応していけば良いわけです。

 いずれ昨年10月の高値9601円を突破すれば、さほどの抵抗もなく1万2000円近辺までは戻りそうです。昨年9月後半から10月にかけて、1万2000円台から8000円台まで抵抗もなくあっという間に下げたのですが、相場では逆も真なりで、反転上昇に転じた際もその価格帯は抵抗なく上昇する可能性があります。

テクニカル分析の様々な切り口

2009/03/25

景気動向や企業業績等から企業の本質的価値を推し測り「割高・割安」を判定する「ファンダメンタルズ分析」に対し、株価の変動そのものから相場の先行きを推測する手法を「テクニカル分析」といいます。

 テクニカル分析を背景にした表現には「売られ過ぎ・過熱感」などいうものがあります。もちろん、二つの分析手法はどちらか一方で事足りるというものではなく、ファンダメンタルズ分析を踏まえつつ、売買のタイミングを計るためにテクニカル分析を利用するのが一般的です。

 個々の手法についてはまた改めて詳しくご紹介させていただきますが、今回はテクニカル分析の種類について触れてみたいと思います。

 一口にテクニカル分析と言いましても、その種類・切り口は多種多様です。大きく分類すれば、相場の流れを捉えそれに追随しようとする際に利用される「トレンド系」と、過熱感や行き過ぎを捉え反転を期待し相場の流れに一見逆らうかのような売買をする際によく利用される「オシレーター系」と呼ばれるものがあります。

 言いかえれば、トレンド系は「上昇トレンドにある株は買う」「下降トレンドにある株は売る」という「順バリ」の活用のされ方で、オシレーター系は「安くなったら買う、高くなったら売る」という「逆バリ」的な用いられ方をします。

 また、トレンド系の分析手法は相場の流れを捉えようとする手法であるため、中長期的な投資に向いています。一方のオシレーター系の分析手法ではより小さいタイミングを捉えるのに向いているため比較的短期的な投資に向いています。

 これらのことからトレンド系の分析手法で大きな流れを捉え、実際の売買のタイミングはオシレーター系の分析手法を活用するというやり方が想定されます。ちなみに主なテクニカル手法は下記のように分類されます。尚、時間の要素を含む「時系列」に対し、時間の推移を考慮しない手法を「非時系列」といいます。

 【トレンド系】
   (時系列)  トレンドライン
          移動平均線
          パラボリック
   (非時系列) 新値足
     
 【オシレーター系】
   (時系列)  移動平均線カイリ率
          ストキャスティクス
          RSI
          RCI
          MACD

    ※株価以外を用いた分析 サイコロジカルライン

 もちろんこれら以外にも、全く違った角度からの分析手法を含め様々なテクニカル分析が存在します。上記以外の分類では、「パターン分析」として一目均衡表、ギャン理論、グランビルの法則、フィボナッチ級数、チャート・パターン分析、相場格言等が上げられ、「サイクル分析」としてエリオット波動論などが上げられます。

 ちなみにいくつかのテクニカル分析について一般的な見方を簡単にご紹介しますと下記のようになります。

 <ストキャスティクス> 100%に近ければ上げ過ぎ、0%に近ければ下げ過ぎ
 <RSI>    100%に近ければ上げ過ぎ、0%に近ければ下げ過ぎ
 <RCI>    100%に近ければ上げ過ぎ、-100%に近ければ下げ過ぎ
 <MACD>   MACDとシグナルのクロスが売り買いのポイント
 <パラボリック> 点の位置が逆転したところが売り買いのポイント

 テクニカル分析も様々で、サインの表れ方や出現のタイミングにはそれぞれに違いがあります。ある特定の手法が一番優れているとは言えず、それぞれに一長一短、クセが存在し、あれもこれも用いようとすれば必ず混乱してしまいます。そういったクセや短所を理解した上で、自分の投資スタンスや好みに合ったどれか一つか二つの分析手法を得意とすることができれば、有力な投資ツールとなります。

 ただし、昨年からの相場急落時においてはテクニカル分析の多くが異常値を示し続け、その多くが機能しなかった時期がありましたように、いかに便利なツールでありましても過信・盲進は禁物で、全体的な流れを踏まえ総合的に判断することが不可欠です。

つなぎ売りと優待狙いの留意点

2009/03/18

信用取引には投機的なイメージがつきまといますが、値下がりリスクを回避(ヘッジ)する手段として利用される「つなぎ売り」というやり方もあります。持っていない株式を信用で売り建てする「カラ売り」に対し、保有している銘柄と同じ銘柄を、保有している株数分だけ売り建てする「つなぎ売り」は、それを有効に使うことで相場に柔軟に対応することが可能になります。

 保有株が大きく値上がりしますと、売却して利益を取りたいと思うその一方で、せっかく安いところで拾った株を手放してしまうのはもったいないと感じることもあるかと思います。そのような時につなぎで売っておくという手法が「つなぎ売り」です。

 例えば、500円で購入したA社株式が上昇を続け800円にまで値上がりしたとします。上昇が一段落、目先は調整安に転じるのではないかと思われるような時、一旦は利益を確定しておきたいと誰もが思います。しかし、買値にまで下がるとは思われず、500円で購入できた株式を手放すのがもったいないと感じるような場合に、800円でA社株式を保有株数分だけ信用で新規売りします。

 その後A社株式が下落に転じ、例えば620円で買い戻すことができれば下落した200円分の信用取引の利益で、現物株の評価益の減少を相殺することができます。

 信用取引を手仕舞った後に再度上昇に転じた場合は、手持ちに現物株を残していますので、また値上がりの恩恵を享受することができます。あるいは600円に下がった段階で、信用で売った分を現物株を渡して清算(現渡し)し、800円で売った分の売却代金を手にすることも可能です。

 但し、いくつかの留意点があります。

 つなぎ売りに限ったことではありませんが、結果的な当たり外れは別にしまして、客観的なデータに基づいた相場観をしっかり持つことが必要です。株式投資で利益を得るには、売買のタイミングが重要であり、売買のタイミングは個々人の相場観に基づきます。相場観やその根拠があやふやですと、決断力に欠け、思惑どおりにいかなかった際に柔軟な対応もままならい状況に陥り、売買のタイミングも誤ってしまいます。

 さらに、つなぎ売りでありましても、制度信用取引で信用売りする場合、逆日歩には注意が必要です。

 信用売りは株券を借りて売ることですが、信用売りが増えますと株不足に陥り、逆日歩(品貸料)という株券の調達コストがかかってきます。逆日歩の額は株不足の発生の都度に日々決定され、返済に伴う受渡日の前日までの累計額を受け払いすることになります。

 逆日歩は「1株当たり何銭」といった形で発表されますが、例えば株価100円の銘柄に対し1株当り1日1円などという額でかっかてくることもあります。この場合1万株(100万円)で1日1万円、逆日歩は休日の日数分も含まれ累積しますので、逆日歩がついたまま休日をまたいだ場合は負担が膨むことになります。

 逆日歩の発生はその銘柄の証金残で確認しますが、売買当日の逆日歩の発生やその額については取引時間中に予め知ることはできないため注意が必要です。ちなみにネット証券の画面にその日の逆日歩が掲載されるのは翌日の昼頃です。

 この時期は特に、優待狙いのクロス取引(同一銘柄の現物の買いと信用の売りを同時に約定すること)が話題になります。具体的には、権利付最終日の寄り付きで同銘柄の現物の買い注文と信用の売り注文を同株数出し(寄り付きで約定)、翌営業日の権利落ち日に現物株式を決済に充てる現渡し(品渡し)を行い、信用売りの建て玉を清算。決算期を越えて現物を保有することになるため株主優待の権利を手に入れることができ(配当は受払いで相殺)、しかも現物の買付価格と同じ価格で信用売りを行いますので、価格変動のリスクからも開放されるというものです。

 しかし、逆日歩が発生した場合にはトータルで損失となる場合があります。特に株主優待が人気となっている銘柄は権利付最終日かけて優待狙いの信用売りが急増し優待相当額以上の高額の逆日歩が発生することがあるため、逆日歩発生の可能性については十分注意を払う必要があります。逆日歩の最高料率は投資単位ごとに決まっているため、最大損失を予め見積もることが可能で、優待狙いのクロス取引を行う場合にはその辺の計算が肝心です。

 ちなみに今年の権利付最終日(25日水曜日)にクロス取引を行い、翌26日木曜日に現物を渡して信用売りを解消した場合、逆日歩が発生していれば逆日歩は2日分となります。同様の取引で権利付最終日が月曜日か火曜日の場合、逆日歩銘柄であれば4日分発生します。

 今回はつなぎ売り、配当狙いのクロス取引を取りあげてみましたが、思惑どおりに運ぶ時ばかりではないということも含めて参考にしていただければ幸いです。

リスクヘッジとしての株式投資

2009/03/11

鳳凰の止まる木として神聖視されてきた桐は、軽く、湿気を通さず、割れや狂いが少ない良質の木材として価値が高く、昔から重宝されてきました。日本有数の桐の産地の会津には、「娘が生まれたら桐の苗木を植えよ」との言い伝えがあります。成長が早い桐は娘とともに大きくなり、娘が嫁入りする時には桐を売って嫁入り道具を揃えたり、桐で作った箪笥を嫁入り道具に持たせてあげたいとの親心です。

 上記のようなことの背景にあるのは、将来の状況に関わらず、娘が嫁入りする際には不自由な思いはさせたくないという、将来に対するリスクヘッジ(リスク回避)の考え方です。

 これに倣い、株式市場には「子供が生まれたら桐を植えるがごとく株を買え」との格言があります。

 この格言は、単に長期投資を奨励するという意味ではなく、背景にあるのは将来に対する備えであり、リスクヘッジの考え方です。

 子供が高校から大学へと進学するにつれて相当の費用がかかり、塾や私学などへすすめばさらに大きな負担となります。日本政策金融公庫が昨年10月に発表した資料によりますと、高校入学から大学卒業までの7年間にかかる費用は子供1人につき平均1023万円、自宅外通学で仕送りしなければ生けない場合は年平均で96万円という金額がプラスされます。年間の総費用は平均的な世帯年収の3割を超えます。あくまでも平均値でありますから、高校から大学まで私立で通した場合にはおよそ1.5倍の費用負担が発生します。

 初めから必要資金に目処がついている若い親はそう多くはなく、これだけの費用負担が発生するということは将来における大きなリスクです。こういったリスクに備えよというのが上記の相場格言です。子供が成長するように、木が大きく育つように、長い時間軸で企業の成長に伴う恩恵を享受しようとする考え方です。

 また、教育費とともに人生設計の中で大きな支出となるのが住宅費です。一時期よりは下がってきたとはいえ、マイホームを購入するというのは金銭的に大きな負担です。不動産価格が下落してきた今が買い頃との判断で、財産的な基盤でできる前であるにもに関わらずかなり無理をして購入しているケースもあるようです。

 持ち家を持たない層にとって、将来の不動産価格の上昇がリスクとなるのなら、金融資産の一部で不動産価格と連動性の高い銘柄を購入しておくというのもリスクヘッジとしての株式投資の考え方です。

 もちろんこうした長期投資の考え方に反論も可能です。例えば、戦後64年経ちますが、戦後生まれの人が大学を卒業し、23才で社会人になってから現在までの41年間、毎月1万円で日経平均株価を購入し続けていれば、現在は含み損を抱えている計算になります。同じようにドルコスト平均法で投資を行った場合、現在64才以下の社会人は他の世代でも全て含み損を抱えた計算になります。リスクを軽減するはずのドルコスト平均法も、実際には長期間の下げ相場には利点が失われてしまうという結果です。

 相場にはいい時もあれば悪い時もあります。同じ状況が永続するわけではありません。相場は25年ぶりの安値水準にある現在は、景気の底が見えず、悲観が市場を覆い、相場が下がったという意味では悪い時期です。しかしながら、「桐を植えるがごとく」に長期的視野で株式投資を行う時期としてはどうでしょう。将来の費用負担に備えるというリスクヘッジの観点で投資を始めるには過去25年間で最良の時期であるとも言えます。

 市場の動きを四六時中ウォッチしていることができない一般の投資家にとって、短期的な売買で儲けるというのは論理的に無理があります。株式投資に割ける時間が限られている投資家こそ、じっくり研究し、資産の一部で安い銘柄を慎重に購入し、慌てず急がず、長い期間保有して利益を享受するというのが本来望まれる姿です。今は25年前の安値水準(指数は最高値から5分の1以下の水準)からそれが始められるというわけです。

 今から投資を始めようとする人、あるいは再開しようと考えている新しい読者の方も多いようです。投資については様々な考え方があるかと思いますが、一つの考え方として参考になれば幸いです。

足らぬものは余り、余るものは足らぬ

2009/03/04

上記は米相場で財を築いた本間宗久が残した言葉です。簡単に解説をいたしますと、足りないと思って皆が用心して出し惜しみしたり蓄えたりするため、結局は余るようになってしまう、余るものは油断して浪費してしまうため結局は足りなくなってしまうことを指摘したものです。

 また、宗久は「豊年に米売るな、凶作に米買うな」とも言っています。豊作の年は米が余るため米相場は先安を見越して安くなっていきますが、実際に「豊作」と判った時には相場はすでに底値に達しているため、その安値で売るようなことはするなと忠告しています。また、これとは逆で、不作となると相場は先高を見越して高値追いになり、皆が追随しているような時は天井圏だから一緒になって買ってはいけないという意味です。

 これは需給調整であり、陰陽循環です。「陰極まれば陽転す」と言われますように、目先の事象に惑わされていけないということを先人は言い残しています。

 話は変わりますが、2003年4月24日、取引終了後にソニーが大幅な業績悪化を発表し、翌日からは取付け騒ぎのような投げ売りで2日連続のストップ安となりました。

 折しも当時は「不良債権問題」「企業年金による代行返上売り」「SARS(重症急性呼吸器症候群)」「イラク戦争」等により先行き不透明感が広がっており、雑誌やテレビなどではエコノミストが日経平均株価は5千円あるいは3千円になるとの見通しを披露し悲観論が覆い尽くしていた時期です。そんな時期に発表されたソニーの業績は、エコノミストの論を裏付けると同時に投資家を暗澹たる気分にさせました。

 しかし、ソニーの株価も日経平均株価もまさにその時が底値となり、4月28日に安値を付けた後は悲観論が大勢の中で戻し基調となってゆきます。ソニーも日経平均もその後約4年間で2.4倍となりました。

 「豊年に米売るな」とは、先々安いと自分が思う時は皆もそう思っている時で、そいう時はすでに相場は底値圏にあり、全体のムードに流されてしまうと底値で売る破目になってしまいますよということを警告しています。市場が総弱気、あるいは総強気になっている時はこの事を思い出し、今一度冷静になる必要があります。

 ところで、相場の天井と底値については、想像はできますが、実際には過ぎてみなければ分からないものです。理屈では分かっていましても、実際に理解している人は多くありません。
 
 こういう言い方をしますと語弊がありますが、買った後に下がることや売った後に上がったりすることは至極当然のことです。買った後に下がらない株価というのは底値の一点きりで、売った後に上がらない株価というの天井値段の一点であり、天井で売ったり、底値で買ったりすることは偶然以外の何ものでもないということです。

 しかし、個人投資家は天井で売ろうとしたり、底値で買うことに固執する人が少なくありません。天井で売ることにこだわれば「まだ上がるかもしれない」として売れなくなり、結果的に「あの時に売っておけば良かった」となりますし、底値に固執すれば「まだ下がるかもしれない」と思ってしまうため底値圏にあっても買いタイミングを逸し「あの時に買っておけば・・」ということになります。どちらも人間の欲がそういう結果をもたらしているのですが、天井圏で犯した同じ過ちを、底値圏でも繰り返していることに投資家自身は気づきにくいのかもしれません。

 勝つためには情報収集と分析が必要であり、努力を怠ってはいけません。しかし、いくら精緻を極めましても相場の天井と底値という一点を当てることはできませんし、そのことに労力を費やすこと自体にあまり意味はありません。後々、現在の値段で売りたいのならもっと下落する可能性に賭けることに意味はありますが、底値で買おうとすることは天井で売ろうとするのと同じくらい下手なやり方です。

 要は、天井や底値という相場の極点にこだわるよりも、天井圏や底値圏というように相場を大きく捉えることが、結果として上手く行くやり方です。

損切り三法 ~三つの判断基準~

2009/02/25

相場には中長期的に「上昇」「下降」「横ばい」の三つの局面があります。

 上昇相場では長く持つほどに利益が膨らみ、下降相場で長く持たされてしまえば損失が拡大、一定のレンジ内で動く横ばい相場で儲けるには下値と上値で的確に売買する必要があります。当然にしてそれぞれの局面ではやり方が違ってきます。

 上昇を期待して慎重に株式を買い付けるわけですが、相場は上昇するばかりではなく、期待外れな展開となるケースが多々あります。そうした時、どのような基準で「損切り(ロスカット)」すればいいのかについて一般的方法をご紹介させていただきます。

 まずその前に、株式を買い付ける際は上昇シナリオが根底にあるはずです。一口に「上昇」と言いましても、その仕方は様々あります。例えば移動平均線の上でなだらかに推移して上値を切り上げるパターン、急騰と急落を繰り返し下値と上値を切り上げるパターンなどなど。まずは具体的にどのような上昇シナリオをイメージして投資を行うのかについて自己認識しておく必要があります。

 つぎに、上記のようなメイン・シナリオがあれば、当然にして期待外れパターンのサブ・シナリオも想定されます。別な言い方をしますと、具体的な上昇イメージがあれば、現状がそのイメージに沿ったものなのか否かを判断することが容易になります。期待した上昇イメージにそぐわないシナリオがサブ・シナリオです。例えば、期待したほど上がらない、あるいは下落に転じるなど、サブ・シナリオはいくつか想定されます。こうした期待外れのサブ・シナリオに沿った動きで損失を拡大させないための一つの対応策が損切りという方法です。

 どのような基準で損切りを実行するかについては三つのやり方があります。

 まず一つ目は【節目突破】です。節目というのは、上昇するにしても下落するにしても抵抗が強い価格または水準で、以前の高安であったり、移動平均線などのテクニカル的な水準であったり、または上値抵抗線や下値支持線と言われる売り買いの攻防のポイントです。節目を抜けることで勢いを増し、新しい相場へと移行する可能性が高くなります。節目は多くの投資家が注目するポイントであり、節目突破が売買判断の根拠となることも勢いを加させる要因となります。

 当初描いた上昇シナリオにおいて、下値支持と見られていた節目を下抜けた際に一旦売却する、これが場合によっては損切りとなります。「場合によっては」と言いますのは、上昇過程でこのような事象が生じ、メイン・シナリオより少ない利益で退却の判断を下すケースがあるためです。

 二つ目は【状況の変化】。相場を取り巻く環境は変化します。輸出型企業が好業績を予想していたとしましても、その前提が1ドル=110円の為替レートであった場合に足元の為替レートが90円台の円高水準で推移していたとしましたら好業績シナリオは修正せざるをえません。好業績を理由に描いた上昇シナリオも必然的に修正を余儀なくされます。または経済全般の様子や事業環境の変化など、当初シナリオの前提条件が崩れた場合にも損切りが有効になります。もちろんこの場合も、状況の変化が起こるタイミングによって結果として損切りになります。
 三つ目は【機械的な判断】です。許容できる損失額を予め決め、痛手、深手となる前に、例えば買値の10%下がれば売る、カラ売り値から10%上がったら買い戻してしまうという具合に、設定した率で機械的に損切りするやり方です。

 尚、ここでいう「損切り」とは、あくまでも傷口を広げないための方策であって、かなり下落してからの「投げ」とは違います。

 損切りに限らずですが、売り買いした直後にその逆に行ってしまった場合には大きな心理的ダメージを被ります。しかしながら、期待したシナリオどおりに行かなかった場合に損切りを行うのは正しい判断です。

 損切りすべきポイントで、それがわかっていても損切りできない人が多いのは、事実を判断の基準にすることなしに自己の希望的観測や欲望に浸ってしまうからであり、その結果、深手を負うケースが数多くあります。

 また、はっきりとした上昇相場(後からわかることですが)では、損切りポイントが幾度も訪れるようなことはありません。それ故、長く続いた上昇相場の後では多くの人が、損切りの必要性や、損切りを増やさないように慎重に買い出動することを忘れてしまいがちです。しかしながら、損切りポイントで損切りせずに運良く利益を得たとしましても、次もその幸運が起こるとは限りらないのが相場です。自己の責任と判断で行う株式投資において、判断の基準をしっかりもっていないと、相場が上昇しても下落しても、この先もずーっと迷い続けることになってしまいます。

ゴーイング・コンサーン

2009/02/18

企業は永続的に活動を継続するということを前提にしており、この前提がなければ株式投資は成り立ちません。これを「継続企業の前提」もしくは「ゴーイング・コンサーン」と呼びます。

 全ての企業は発展を目指し経営を行っていますが、経営が上手くいかない場合もあります。上手く行かないという状況が深刻な場合、つまり継続企業の前提に疑義が生じた場合、企業はその事実を決算短信などの財務諸表上に記載しなければなりません。

 これがいわゆる「継続企業の前提に関する注記(または疑義)」というもので、具体的には下記のような要件に該当した場合に決算短信や有価証券報告書などに注記が付されます。

 ・売上高の著しい減少
 ・継続的な営業損失の発生
 ・営業キャッシュフローのマイナス
 ・主要な仕入先からの与信または取引継続の拒絶
 ・主要取引先の喪失
 ・債務超過
 ・借入金の返済条項の不履行や履行の困難性
 ・新たな資金調達の困難性
 ・巨額な損害賠償金の負担の可能性

 こうしたリスク情報の開示は、業績悪化などで企業の存続が危うくなる可能性がある場合に投資家に注意を促すために行われるもので、必ずしも企業の破たんを意味するものではありません。業績回復など状況の改善が見られれば注記は外れます。直近ではヘラクレス上場のガンホーが継続企業の前提に関する疑義を解消しました。

 2008年に倒産した上場企業数は33社(上場廃止後の倒産を除く)と過去最多を記録。そのうち事前に注記があったのは井上工業、新井組、真柄建設、ゼファーなど9社となっています。直近の例では小杉産業の中間決算短信などがそうです。

 また、継続企業の前提に関する重要な疑義が生じた場合には、財務諸表等に注記するとともに事象・状況を解消または大幅に改善させるための対応または経営計画を策定する必要があり、注記が付された場合には改善計画も提示されます。これらの改善計画をチェックする監査法人は監査意見を表明することになりますが、「根拠に乏しい」と判断すれば「意見不表明」となります。「意見不表明」となり、取引所が「影響が重大」と判断すれば、クオンツや春日電機のように上場廃止となるケースもあります。

 尚、08年12月末時点での全国上場社数は3868社。そのうち「継続企業の前提に関する注記」を開示した企業は201社を数え、20社に1社の割合で経営継続のリスクが存在していることになります。201社の業種別内訳は多い順に小売・卸売業が43社、情報・通信業が31社、不動産・建設業が29社などとなっており、およそ6割が新興市場上場の企業です。

 突然の破綻に巻き込まれないためには財務諸表をよく読むことが基本です。しかし、昨年破たんした上場企業33社のうち19社は前期決算が黒字で、純利益が過去最高だった企業もあります。いわゆる「黒字倒産」で、資金繰りの急速な悪化により借入金の借り換えがうまくいかず倒産に追い込まれるなどのケースです。

 企業の異変を知る手掛かりとして大きなヒントになるのは営業キャッシュフロー(営業活動による現金収支)です。経常損益や最終損益で黒字が確保できても、取引先からの入金遅延等で営業キャッシュフローが赤字となっている場合は借入金の返済が滞る可能性が生じると同時に、財務制限条項(債務者の財政状況が一定条件以下となった場合に債務者は期限の利益を喪失し、債権者に対して即座に貸付金の返済を行わねばならないことを約する条項)に抵触する恐れもでてきます。

 ちなみに上場企業の情報開示において重要情報の開示漏れや遅れといった情報開示規則違反が昨年は216件(前年比では28%減)あり、この点でのさらなる改善が急務となっています。

 注記がなくても急速な事業環境の悪化で破綻するケースがある一方、注記があったからといって破綻に直結するわけではありません。改善計画が上手く運び注記を解消できるケースもあります。ただ、昨今の経済環境の急激な変化を鑑みれば、注記の存在や改善計画の内容は把握しておきたいものです。

景気後退と株価の先見性

2009/02/12

拡大期と後退期の二つの局面を繰り返す景気循環で、拡大期から後退局面入りするピーク時を景気の「山」とし、景気が底打ちから回復に向かう転換点を「谷」呼びます。

 内閣府が景気動向指数判定会の意見を聞き今年1月29日に今回の「景気の山」を2007年10月と判定。景気の拡大期間は戦後最長の69カ月、一方で景気が後退局面入りしてすでに15カ月目に入っていることが判明しました。もちろん今回の判定を待つまでもなく、市場では08年春頃に「後退局面入りは07年後半」との認識が広がっていました。

 今回で戦後14回目の景気後退局面となり、過去13回の後退期間は平均して16カ月。景気の底打ちがいつになるのかについては予想にバラつきがあるものの、平均に照らせば今が「景気の最悪期」となります。

 劇的な需要の変化に対応すべく、企業は強烈な生産・在庫調整に迫られ、かつてないスピードで収益を悪化させました。最近の決算発表で明らかになっている企業業績の悪化はこれら環境の急変に対応した結果であり、1―3月期が企業業績の最悪期になるとの見方もあります。

 ところで、「相場の先見性」という言葉を耳にしたことがあるかと思いますが、相場はおおよそ半年程度先読みして動きと言われます。景気がまだ良いうちに相場が天井をつけ、景気が悪いにも関わらず相場が上昇に転じるのは過去の例でも明かで、当初はわずかな兆しでありましても相場は敏感に反応しましす。

 参考までに近年の景気の「山」と「谷」に呼応した相場の天底は下記のようになっており、相場は景気に先んじて天底をつけているのがわかります。

 1986年11月(谷)  底 86年10月 ( 1カ月先行)
  拡大期 51カ月
 1991年02月(山)  天 89年12月 ( 3カ月先行)
  後退期 32カ月
 1993年10月(谷)  底 92年08月 (14カ月先行)
  拡大期 43カ月
 1997年05月(山)  天 96年06月 (11カ月先行)
  後退期 20カ月
 1999年01月(谷)  底 98年10月 ( 3カ月先行)
  拡大期 21カ月
 2000年11月(山)  天 00年04月 ( 7カ月先行)
  後退期 15カ月
 2002年01月(谷)  底 01年09月 ( 4カ月先行)
               ※03年04月(ソニー・ショック)
  拡大期 69カ月
 2007年10月(山)  天 07年02月 ( 8カ月先行)

 上記のように景気が回復する前に相場が上昇し始める「不景気の株高」というのが相場の特性で、「株価は未来を先取りする」と言われる所以です。
 
 景気が悪化し悪材料の多い中で株価が上方に動きだせば、世の識者は相場上昇に懐疑的な見方を披露しますが、実際に半年後に景気が底打ち(正式な判定はさらに1年後)した場合には相場はかなり上昇している可能性があります。「悲観の中で生まれ、懐疑の中で育つ」というのが相場の本質で、バブルの時や昨秋の相場急落の際もそうですが識者の意見に従う場合、投資家は売買のタイミングを逸し得られるべき利益を失うことになります。

 今回の景気の底入れ時期が多少先に延びたとしましても、景気後退入りしてすでに15カ月経過していること、そして相場の先見性を考慮する必要があります。

 過去の景気拡大及び悪化時においては「今までにない」というケースが多々ありました。そして今回も同じ形容詞がつきます。しかし回復しない不景気はありません。景気は必ず回復します。景気が上向き、心理が好転したときには、相場は今よりずっと高い水準にあることは間違いありません。

企業の姿は多角的に見る

2009/02/04

今は企業の四半期決算及び今期業績見通しの発表が相次いでいます。企業の決算数値からは様々な情報を読み取ることができ、決算数値から算出できる指標の中でもPER(株価収益率)やPBR(株価純資産倍率)などがよく知られています。本日はそれ以外のいくつかの財務指標を、その意味とともに簡単にご紹介させていただきます。

<流動比率> 流動資産÷流動負債(%) [支払い能力]

 短期的に返済義務のある債務を、現金などの流動資産でどれだけまかなえるかを示した値。短期的な会社の支払い能力を表わします。100%以上なら流動資産より流動負債が上回っており、値が高いほど支払い能力があると判断でき、100%を下回ると支払い能力が低いと見ることができます。

※200%あるとよいとされていますが、150%程度なら支払い能力が十分あるといえます。流動比率は業種によって異なりますが、130%前後が概算の平均です。

<売上高営業利益率> 営業利益÷売上高(%) [本業での収益性]

 売上高に対する営業利益の割合で、営業活動で効率的に収益を上げているかを見ます。この数値が高ければ、少ない費用で大きな利益を出しているといえます。同業他社と比較し、収益力の違いを見る場合に用いられます。売上総利益を売上高で割った場合は「売上高総利益率(粗利益率)」となります。

※例えば軽自動車を手がけるマツダとスズキの08年3月期数値で見た場合、マツダが4.7%、スズキが4.3%となります。

<増収比率> (当期売上高÷前期売上高)-1(%) [成長力]

 過去の売上高に対し現在の売上高がどう変化したかの数値で、経年比較で成長性を計る一般的な指標です。「増収率」または「売上高成長率」とも呼ばれます。過去の利益と比較した場合は「増益率」。

※プラスであれば成長していることを示し、マイナスなら売上げが減っていることを表わします。業界平均や同業他社との比較の際によく用いられます。

<株主資本比率> 株主資本÷総資産(%) [財務の安全性]

 総資産に対する株主資本の割合。「自己資本比率」とも言います。財務の安全性を見る指標として広く使われ、数字が高いほど優れています。尚、「自己資本(株主資本)」は企業のバランスシート上で資本金、法定準備金、剰余金などから構成され、資産と負債の差額を示す「純資産」と同じ意味を持ちます。

※業種によっても異なりますが、おおよそ30~40%が平均。この数字がマイナスの場合は「債務超過」です。

<株主資本利益率> 当期純利益÷株主資本(%) [収益性と効率性]

 株主資本を当期純利益で割った値。「ROE」や「自己資本利益率」とも呼ばれ、自己資本からどれだけ利益が出せるかを表わしており、企業の収益性と効率性を判定するこの指標が株価に直結するとも言われます。

※高いほうがよいとされるが、負債が多く、自己資本が相対的に少ない企業でも数値が高くなる傾向があるため注意が必要です。ROEは簡易的にEPS÷BPSでも算出可。

<配当性向> 当期純利益÷配当総額(%) [利益に対する配当の割合]

 当期純利益に対する配当総額の割合を示したもの。株主に対しどれだけ利益還元しているかが分かります。この値が高ければ利益の多くを配当に回しているといえ、低ければ内部留保(利益剰余金に計上し、投資などに使う)に回していると考えられます。
 
※日本の企業は欧米に比べ低い傾向があり、海外ファンドなどの株主がこの配当性向を上げるよう、株主提案するケースもあります。

<EBITDA> 税引き前当期純利益+支払い利息+減価償却費
 キャッシュ・フローベースの収益力

 利払い前・税引き前・減価償却前・その他償却前利益の略で、「イービットディーエー」または「イービットダー」と読みます。税引き利益に支払利息、税金、減価償却費、のれん代償却費を加えて算出するため、国ごとに違う金利や税金の影響が少ないという理由で収益力の国際比較の際に使われます。様々な要因で大きく振れる純利益などに比べ、EBITDAは企業が稼ぎ出すキャッシュフロー(現金収支)に近い数字になるため、現金創出力を重視する企業買収の際の指標としても用いられます。

※EBITDAで企業がどれだけキャッシュを生み出すかが分かるため、この値を時価総額と負債の合計で割り、買収した際に何年で元がとれるかの分析にも利用されます。
(EV/EBITDA倍率)

 一般的に市場で話題になるのは黒字か赤字か、あるいは増益幅の拡大・縮小だったりしますが、上記のような指標を組み合わせて見ることによってまた違った会社の姿を知ることができます。

 上記指標に以外に企業の特徴が端的に表れるものとしては「従業員1人あたりの売上高」があります。例えば08年3月期(連結ベース)の数字を使って任天堂とトヨタの1人あたり売上高を求めますと、任天堂の従業員1人あたりの売上高は4億2000万円、トヨタの場合は8100万円となります。さらに1人あたりの純利益を比べますと、任天堂が6470万円、トヨタが530万円という値になります。業態が異なるため単純には比較でませんが、改めて数字にしてみますと普段気づきにくい企業の姿が浮き彫りになる好例です。

反省戦の効用と依存からの脱却

2009/01/28

名人と呼ばれる棋士でも、一つの対局が終わりますと必ず反省戦をやります。反省戦とは、すでに勝敗のついた対局の、最初から最後までを将棋盤の上で再現することで、どこでミス(失敗)したのかを確認する作業です。

 反省戦の効用は、単にミスした箇所の確認だけではありません。これを習慣づけることによって、自分がどういった局面でミスしやすいのかということを認識できるようになります。このような、自分自身の思考や行動そのものを対象として客観的に把握し認識することを「メタ認知」と言いますが、平たく言えば「己を知る」ということ。

 「彼(敵)を知り己を知れば、百戦して殆(あや)うからず。
     彼を知らずして己を知れば一たびは勝ち一たびは負く。
        彼を知らず己を知らざれば、戦う毎に必ず敗る。」

 孫子はこのように解説していますが、その世界で名人と言われる人でさえも上記のような作業を反復しながらミスを減らす努力を行っています。

 また、将棋の羽生四冠は「たとえ失敗しても次のミスを防ぐことが大事だ。自分の感情をコントロールすることは実力につながる」と言っていますが、投資の場におきましても自身の投資を振り返ってみることが大切です。

 欲や恐れといった感情のままに売買し、結果として損失を出した商いは、その逆をやっていれば儲かった商いであり、そこに大事なヒントがあります。過去(事実)を振り返り、自身の弱点や犯しやすいミスを把握し克服するこそが勝利(利益)につながります。将棋の世界でも投資の世界でも、コントロール出来るもの(自分自身)に集中することが大事です。

 ところで、上手に儲けられない人の特質として、昔から三つの「依存」があげられていますのご紹介しておきたいと思います。

一、他者依存型

  投資情報誌に載っている銘柄や株式投資で成功したという人のすすめる銘柄を、内容やタイミングを十分に検討もせずに購入したことがある人は「他者依存」の可能性が高いといえます。ファンダメンタルズやチャートの基礎知識を持たない、あるいは活用せずに売買しているのがこのタイプの特徴でもあります。銘柄の当たり外れで投資を評価する傾向が強く、自己研鑽による上達の道が閉ざされています。これは自分に自信がないことの裏返しで、投資に対して自分の判断の結果という概念がなく、失敗しても成功しても経験を糧にすることができません。

一、情報依存型

  常に情報を追いかけ、様々な意見を聞かないと気が済まないのがこのタイプの特徴です。他者依存の性質も持ち合わせていた場合、余計に自分で判断できない状態に陥り、結果、決定することができない状態(決定麻痺)となるか、投資のタイミングを誤ります。

一、取引依存型

  売買で利益を得ることと買い付けすることを混同し、買い付けてから考えるのがこのタイプです。自分が購入した銘柄は特別であるという潜在的考え方を持ち、相場全体の方向性など省みないという特徴も持ち合わせています。それ故、トレンドを無視して頻繁に売買し、損失を拡大させてしまう傾向があます。

 これらのことは誰もが陥り易いことであり、そうなっていないか改めて振り返ってみて頂きたいと思います。様々な意見や相場の動きに右往左往し、常に自信なく、闇雲に投資を行っていては利益を掴み損ねてしまいます。

 株式投資で資産を築くには、一攫千金を狙うのではなく、地道な努力を重ねることが最も大切なことです。まずは株式投資と真摯に向き合い、修正すべきとろころは修正しながら常に研鑚を重ねること。「儲」という字は「信じる者」と書きますが、弛まない努力があって初めて自分の判断を信じて投資を行うことが可能となり、成功を掴むことができるというものです。

損益を表す計算式とテールリスク

2009/01/21

個人投資家の多くは、投資した銘柄ごとの損益は把握していましても、期間トータルでの利益は積極的には把握しようとしないものです。あるいは、合算の損益は結果論でしか把握しようとしません。

 株式投資は「時間をかけてトータルで資産を増大させてゆく事業」であるはずですが、これを一発勝負の博打として行っている人も少なくないように感じられます。期間トータルでの損益に鈍感になりますと、たまに勝って大喜びしているパチンコや競馬の愛好家と同じで、合算では大きな損失となっていることも稀ではありません。

 そうしたことを念頭に置いていただき、ある期間における株式投資の合計利益は利益の合計と損失の合計の合算で求められ、それを数式にしますと次のようになります。

 期間損益 =(利益+利益+・・・)-(損失+損失+・・・)

さらに損益を平均化した場合は下記のようになります。

 期間損益 =(利益平均×利益になった取引数)-(損失平均×損失になった取引数)

 このように改めて期間損益を計算式で表してみますと、利益を拡大するにはどの部分を改善してゆけば良いのか明らかになってきます。つまり、下記のようになれば利益が拡大します。

   ・1回あたりの利益額を増やす
   ・利益になる取引回数を増やす
   ・1回あたりの損失額を減らす
   ・損失になる取引回数を減らす

利益になった取引数と損失になった取引数は全体の取引回数に比例するため、ここはその人の投資スタイルで変わってくる部分ですが、統計的にも頻繁に売買することは利益につながりません。

 また、1回あたりの利益額が多くても1回あたりの損失額がそれ以上にあればトータルでは損失となってしまいます。つまるところ、たとえ損失が発生しましてもその額が少なければトータルで勝ち越すことになり、その上で獲った際の利幅を大きくできればトータルでの利益は自ずと増大してゆくことになります。たとえ勝率が低くても(勝った回数が少なくても)トータルでの利益を確保することが可能となります。

 話は変わりますが、発生する可能性はかなり低いが発生すれば大きな損失が発生してしまうリスクを「テールリスク」と呼びます。サブプライム問題がまさにその典型です。

 信用度の低いサブプライムローン(低所得者向け住宅ローン)と他の信用度の高い債権と組み合わせて組成し直して世界中にばらまかれたのですが、その金融商品が最も信用度の高いトリプルA格であったため、リスクをとっていることに誰もが鈍感になり、最終的には起こるはずのない金融危機が起こってしまいます。1998年に破たんしたヘッジファンドのLTCMも、その被った損失は「理論的には数百億年に1度しか起きない」はずだったと言われます。

 こうしたテールリスクは一たび起こればものすごいスピードで危機が広がるため迅速な対応が求められます。逃れるチャンスがありましても、希望的観測が行動を邪魔するため被害を拡大させることになりがちです。

 発生する可能性が低いテールリスクに備えましても、実際には無駄になる可能性が高いのですが、保険と同じで被害を被った際の損失を考えればわずかなことで済みます。具体的には機械的なロスカット(損切り)であり、全資金を投入せず一定の現金比率を維持することなどであり、そうした対応は投資の安全性を高めるとともに最終的に負けないための戦略といえます。

 参考までに、株式投資で財を成したウォーレン・バフェット氏の投資のモットーの一つに「マージン・オブ・セイフティ」というのがあります。直訳すれば「安全性のゆとり」。株価が期待したほど上昇しない場合に備え、安全策として、かなり割安な水準でないと投資しない保守的な投資姿勢を指しています。

 例えば「資産内容からみて100の価値がある株式で、株価が90だからといって安易に割安株として投資するのではなく、株価が50の時に買えば、株価が適正価格と考える100まで戻らなくても、60や70まで上がる可能性は高い」というもので、これも投資の安全性を高めた上で利益を増大させるやり方です。しかも実証されています。


powered by HAIK 7.6.1
based on PukiWiki 1.4.7 License is GPL. HAIK

最新の更新 RSS  Valid XHTML 1.0 Transitional