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お金のなる木

2008/12/24

上記にて十干十二支(じっかんじゅうにし・略して干支)と日本株について解説させていただきましたが、ニューヨーク株式市場について、民主党政権発足(民主党出身の大統領就任初年度)と絡めて振り返ってみたいと思います。

 現在は1930年代の大恐慌以来の経済危機にあるとされています。その大恐慌に対し大規模な公共事業による失業者対策や社会保障の充実などの積極的な経済政策(ニューディール政策)で克服を図ったのがフランクリン・ルーズベルト第32代大統領で、大統領に就任した1933年のNY株式市場の年間騰落率は63%の上昇となっています。

 次いで、共和党から民主党に政権が移行したのは、ジョン・F・ケネディが第35代大統領に就任した1961年。その年のNY株式市場は18%の上昇。ケネディはアイゼンハワー前政権末期から始まった不況対策として失業者支援や公共投資の前倒し等を行うとともに、人類を月に到達させるアポロ計画を推進しました。

 共和党のニクソンの後、1977年に民主党のジミー・カーター第39代大統領が誕生。この時は経済政策の失敗でNY株式市場は17%の下落となっています。

 その次に共和党から民主党に政権が移行したのは1993年。ビル・クリントンが第42代大統領に就任し、道路などインフラ整備の公共事業への投資拡大、それによる雇用の創出、技術開発力の強化などの一連の施策は、前政権の「レーガノミックス」に対し「クリントノミックス」と呼ばれました。この年のNY株のパフォーマンスは13%の上昇。

 以上、カーター大統領を除き、民主党政権が発足した年のNY株式市場はいずれもプラスとなっています。

 尚、クリントンの施策で、特に「情報スーパーハイウェイ構想」では米国防総省高等研究計画局(DARPA)を通じてインターネットの技術を民間に転用し整備したことがその後の生産性向上につながり、2001年に退任するまで米経済は空前の好景気に沸きました。

 ちなみに、1月20日に正式に大統領に就任するオバマ氏の状況は、不況に立ち向かったフランクリン・ルーズベルやジョン・F・ケネディの状況と酷似しており、さらにオバマ氏は、クリントンの「情報スーパーハイウェイ構想」のように、エネルギー分野でDARPAの持つ最先端の軍事技術を民間に転用する「エネルギー版ハイウェイ構想」を持ちます。

 さて、オバマ次期大統領が掲げましたように、来年は「CHANGE(変革)」の年であり、それと同時に「CHALLENGE(挑戦)」の年でもあります。漢字圏ではない米国株は干支とは無縁かと思われますが、下から角を突き上げるブル(bull:牡牛)は強気を意味し、カウ(cow:牝牛)には「キャッシュカウ(cashcow:お金のなる木」という言葉もあります。

 歴史的な下落を演じた今の日本株には「チャンス(Chance:好機」があり、まさに「お金のなる木」の如しなのかもしません。

 最後に、この時期恒例の相場予想をご紹介したいと思います。

<平成二十一年 株式市場大観>
  一月 情報消化不良の戸惑い。欲求不満から見送り気運。利食い先行良し。
  二月 手掛かり難。刺激材料に乏しい保合が続く。銘柄吟味に止める。
  三月 行き過ぎが起きやすい。前半の突っ込み局面は仕込み場との見方。
  四月 浮ついた話に飛びつかず、相場つきがボケ気味なら積極買い良し。
  五月 陽気と共に市場も活気づく。「小満」以降は利入れを考慮する。
  六月 入梅どき一転波乱、逆張りが良い。高値追わず、安値恐れぬ姿勢。
  七月 強象月。年内の高値月か。「大暑」を目処に利食い、手仕舞い良し。
  八月 前半は活況も、戻り売り方針継続を。建玉を減らし、欲心を捨てる。
  九月 戻り売り姿勢を崩さず、好材料・好情報に誘い込まれぬように。
  十月 弱象月 乱高下を繰り返しながら、下値切り下げ。休むも相場。
 十一月 八方塞がり月。低迷は中勢安値局面とみて銘柄物色、仕込み場。
 十二月 下値切り上げつつ、突発材料に一喜一憂。振り落とされぬ注意を。

 来る2009年が皆様にとりまして素晴らしい年であることをお祈りしております。

会社四季報は企業(銘柄)のカタログ

2008/12/17

会社四季報にはその企業の特色、強みや留意点、業績の推移、配当金、先行きの見通し、株主の分布、財務情報や設備投資額などが簡潔にまとめられており、言わば性能や特色が簡潔にまとめられているカタログのようなもので、インターネットが普及した現在でも投資家必須の投資ツールとして利用されています。

 すでに皆様も活用されているかと思いますが、四季報の業績欄とコメント欄について簡単に触れておきたいと思います。

◎四季報の『業績欄』について

 この欄は業績について確認する欄ですが、予想数値は四季報独自の予想となっており会社側が発表した業績予想と比較して差がある場合にはコメント欄の前半部分で「会社計画は過小(過大)」などとして四季報側の判断により増額(減額)したことを示しています。ちなみに企業の利益には下記のような種類があります。

 企業の利益には「営業利益」「経常利益」「当期利益」の3つがあります。

  営業利益 本業の儲けであり、本業の好不調を示しています。

  経常利益 営業利益に受取り(支払い)利息や配当など本業以外から得た収支や関連会社の利益が上乗せ(差し引かれた)もの。

  当期利益 臨時的・突発的に発生した特別利益や特別損失(例えば保有株式や工場跡地を売って利益(損失)が出た、リストラを行ったために割増退職金が発生したなど)を加減した税引き後の利益で、「純利益」や「最終利益」とも呼ばます(四季報には単に「利益」と記載)。

 経常利益の半分程度が税金でもっていかれるため、当期利益は経常利益の半分くらいが適正水準と言われており、もしこの水準が経常利益の3分の1、あるいはそ以下の企業は、保有している株が下落して評価損を出したか、年金資金不足が発生しているなど、何か特別な損失を出している証拠です。本来は一時的な損失ですが、毎期計上している会社は要注意です。
 
 企業の業績動向は、利益で見るのが原則です。さらに本業を映す売上高が伸びている場合は、その企業に“成長力”があり、主力事業自体が拡大している証拠と言え、売上げ・経常利益ともに伸びている銘柄の注目度が高くなります。連続増収であれば収益環境が順調に拡大している証拠でもあります。

◎四季報の『コメント欄』について

 業績拡大に貢献する可能性のある技術を持っているかどうか、業績向上に貢献する新たな事業展開をしているかどうかという点も魅力的な企業を探す上で大切なポイントです。四季報で例えますとその企業の特徴が書かれた「特色」の欄や、今後の業績見通しや新しい技術や事業展開について書かれたコメント欄には、その企業の今後を占う上で重要な記事が書かれています。

 コメント欄に「飛躍」「好調」「期待」などと記載された銘柄にも注目です。新技術や新製品の開発、新規事業への参入も好材料となるケースも少なくありません。ちなみにコメント欄の前半部分は主に業績のことか書かれていますが、後半部分には将来の業績や株価に影響しそうな株価材料の最新情報が並んでおり、その部分は『材料欄』と呼ばれています。

 尚、四季報ではアナリストのように大型株に調査が集中せず、全銘柄同じ量のコメントが載せられているため、四季報の記事からの影響はアナリストのフォローが少ない小型の銘柄でそのインパクトが大きく現れるという傾向があります。

 その他、巻末にある各種ランキングも貴重な情報です。

 尚、先日発表された12月の日銀短観では、大企業製造業の08年度下期の収益計画は大幅に下方修正されており、計画の前提の一つとなる下期の想定為替レートは1ドル=101円で、現在はそれよりも円高で推移していますので、企業収益はさらに変動する可能性があります。経済環境・事業環境の急激な変化が起こっている現在、会社予想や四季報記事も固定的に捉えることはできませんが、企業の姿を把握する上で四季報は最良のツールと言えます。

 今回は会社四季報について取りあげましたが、日経会社情報においても同様です。もちろん四季報や会社情報に掲載された今来期の数値はあくまでも予想ですので、日々の新聞等で経済動向や事業環境の変化などについての情報を収集し、シナリオを強化、あるいは修正していくことが大切です。

投資を事業として行えば、必然的に地味なやり方になる

2008/12/10

読者の方がこのメールマガジンに期待するところを、皆様からのご意見などから大きく分類してみますと次の二つに絞られます。

 一つは「儲かる銘柄を教えてほしい」というもの。そしてもう一つは「株式投資のやり方や自分に欠けている運用の方法を学びたい」というものです。

 もちろん、ご紹介させていただいている銘柄で利益を獲得していただくことは当方にとりましても大きな喜びであり、目指すところの一つでもあります。しかしながら、相場というものは、常に投資家の期待どおりに動くわけではなく、銘柄のみで儲かるものでもありません。

 そこで今回は昔から伝わる相場格言をご紹介しながら「運用」についてご説明したいと思います。

 『強弱よりも運用を学べ』

 上記の格言は、自己資金の範囲内で如何にリスクを抑えたうえで有利に利益を上げるかの運用の技術を習得することのほうが、相場の強弱や先行きの予想に労力を費やしたり、情報や銘柄だけに依存するよりも損失機会は少なく、はるかに大きな利益をもたらしてくれます。

 銘柄と運用の方法、航海で言えば船の選定と航海術、この二つを提供し、皆様の株式投資に益したいというのがこのメールマガジンの目指すところです。

 『着眼大局、着手小局』

 この言葉は、大きな視点で全体の先行きを見通した(仮定した)上で、目の前の個々の局面に一つ一つ着手していかなければいけないという意味で使われます。

 自分にとって都合の良い状況ばかりでなく、その反対の場面も想定し、様々な局面に対応できる態勢、計画、心構えができているのかが重要となります。

 『安値買い下がりの株数は一、三、五の比率有効あるべし。
    そして資金の半分を温存すべし』

 この相場格言は、一番底で一、二番底で二、次に大きな下げがあれば五の資金を投入し、そこまでで資金の半分、後の半分は温存せよと具体的に資金の投じ方を指南したものです。

 投資とは不確実性の中にチャンスを見出すことであり、利益を得る可能性があるのと同時に損失を被る危険性も潜んでいます。その危険を避けようとすればするほど小出しに資金を投ずることになり、安値拾いを徹底することになります。そうすること初めて、投資が一攫千金を狙う博打ではなくなり、事業性を帯びることになります。投資を事業として行えば、必然的に地味なやり方になってきます。そうした地味な作業に耐えられず、手っ取り早く儲けようとして派手にやりだす人は皆こけてしまうのが相場の怖いところです。

 投入できた資金がわずかでありましても、それで利益を得ることができればその投資は成功です。上げる場面と同じように常に下げる場面も想定せよ、そのことをこの格言は暗に伝えています。そして、不測の事態に備え、常に資金の温存を考えなければいけないということです。

 ただし、様々なやり方も字義にこだわってしまえば応用のきかない無用の長物となってしまいます。それをどのように個々の場面に適用させていくかは投資家それぞれの考えの中にあります。投資のやり方は投資家によって千差万別であり、そこをいかに洗練させていくかが株式投資のおもしろみです。

 株式投資は当たり外れを競う一発狙いの勝負事でありません。株式投資は、数年あるいは数十年をかけてトータルで資産を増大させてゆく事業です。

 利益も含めた複利投資で3割の利喰いが6回続けば、元本は4倍強に増えます。10回重ねれば14倍に膨れ上がります。言い方を変えますと、1年間のトータルで資金を3割増やし、それを6年間続ければ当初の資金は4倍以上になっています。これが株式投資の考え方です。もちろん全ての投資に成功するわけではなく、その間の損失をいかに抑え、トータルでの資産増大を計るかが要となります。

 皆様の、投資を考える上でのヒントになれば幸いです。

故キヲ温ネテ新シキヲ知ル

2008/12/03

「温故知新」これは2200年以上も前の論語に記された言葉です。古くから伝わるこのような言葉はたくさんありますが、歴史の風雪に耐え、不変の真理をあらわし、長く言い伝わる生命力を持ったものでなければ後世には残りません。数ある相場格言も然りで、過去幾度も繰り返されてきた事象を一言で言いあらわし、そこに真理があるからこそ今に残ります。

 投資とは「相場に勝つことはなく、自分自身に克つことである」と、頭の中では理解しているのですが、様々な事象や情報に影響された心理状態によって合理的な判断から遠ざかってしまうのが常です。

 そのような時にこそ相場格言が役立ちます。下記にてテーマごとに紹介する格言や教訓は比較的新しいものもありますが、相場の節々で少しでもお役に立てていただければ幸いです。

◆銘柄選び
      暴落日の赤札銘柄は注目
      相性のよい銘柄につけ
      買いたい銘柄が無くなったら売れ
      最初の大商いは買い
      下値圏、出来高増加は要注目
      買いにくい株ほどよく上がる
      割安に買いなし 割高に売りなし
      災害に売りなし 突発事故は売るな
      高値圏での好材料発表は売り
      安値圏での悪材料発表は買い
      噂で買え、事実で売れ 知ったらしまい
      保合い放れにつけ 動かぬ株に手を出すな
      風が吹けば桶屋が儲かる(関連銘柄に注目)
      株価はもとの古巣に帰る
      値頃より、日柄重んずるべし
      危うきは避け、疑わしきは待つべし
      知識と情報が多過ぎると勘が鈍る
      勘は知識と情報の裏付けがないと確度が落ちる

◆売買テクニック
 <買いの教訓>
      株を買うより時を買え(タイミング優先)
      ショック安こそ、最大の買い場
      初押しは買い
      無難な作戦は儲けも少ない
      上げにつれ、買玉細くすべし
      吹値半数利食い、押し日買い直すべし

 <売りの教訓>
      戻り待ちに戻りなし
      利食い千人力
      見切り千両、損切り万両
      下手な難平ケガのもと
      シマッタは仕舞え(過ちは直ぐに正すべし)
      迷いがでたら、売れ
      相場に意地は禁物

 <その他>
     迷わば休むべし。相場は常にあり、決すれば進むべし(機は瞬間にさる)
     時機を逸したる時は次の機会を待つべし
     売りは早かれ、買いは遅かれ
     仕掛けは慎重に、手仕舞いは素早く
     天底では少数意見につけ
     誰もが株を好きになる時には株は下がる
     誰もが株を嫌っているときに株は上昇する
     ちょっと待て、飛びつき買いと、ろうばい売り
     利食ったら、すぐに買わずに、押し目待ち
     下げた時、騰げた時に、基本方針を曲げるな
     二度に買うべし、二度に売るべし
     山で買い谷で売るよな鴨になり(本降りになって出て行く雨宿り)
     抜け買い、割れ売り(抵抗線を抜けたら買い、支持線を割ったら売り)

◆相場の習性
     景気と相場のズレを見落とすな(株価の先行性)
     不景気の株高
     小回り三月、大回り三年
     上げ百日、下げ三日 天井三日、底百日
     過去に学べ、しかし過去は繰り返さず
     相場は警戒・悲観・失望・絶望の心理過程を経て底を打つ
     陰極まれば陽転す
     人気が一致すると裏目が出る
     人気の重みで株価が沈む
     人気は必ず衰える 木は天まで届かず
     人気高は三日見送れ、飛びつき買いは止めよ
     大商いに買いなし 閑散に売りなし
     買いやすい相場は下り、売りやすい相場は上がる
     もうはまだなり、まだはもうなり
     売るから高い、買うから安い
     動あれば、反動あり 山高ければ谷深し     
     大喜びのところが天井圏 恐ろしいところが大底圏

◆相場の心構え
     人の往く裏に道あり花の山
     勝っておごらず
     相場が変われば作戦を変えよ
     評価益を呑むな(儲かっているは、儲けではない)
     思い上がりは下り板
     遠慮は当たり、天狗は外れる(慢は損を招き、謙は益を享く))
     嫁を選ぷように株を選びねけ
     辛抱する木(気)に金がなる
     麦わら帽子は、冬に買え(シーズンものは高くつく)
     大勢意見につけば出そびれる
     他を頼るべからず、自力頼むべし
     相場のカネと凧の糸は出し切るな
     売り買いは腹入分 相場に欲は禁物
     もうちょっと、と思う心がチャンスを逃す
     天井売らず、底買わず(天底を狙うな) 
     頭と尻尾はくれてやれ
     漁師は潮を見る
     損は小さく、儲けは大きく
     見切りは早く、利食いは遅く
     飛びつく魚は釣られる
     理屈と人気を離れろ
     相場に見栄は不要
     大衆の人気、素人の直観、玄人の勘を馬鹿にするな
     始めから損は覚悟で相場せよ 思案過ぐれば時期を失う
     商い仕掛けたる時 先ず損銀を積もるべし
     ぬかるなよ、見切り肝腎、意地張るな 損をして得を取れ
     持株は買値にこだわるな
     高値おぼえ、安値おぼえは損のもと

相場の位置を意識することのメリット

2008/11/26

最近の相場は変動が激しくなっており、相場の基準点が見出しにくくなっています。

 例えば、100円安の次の日に100円高するといった値動きをするため、視野を広く保ち大きな視点で相場を捉えないと、ただただ相場に翻弄されることで終始しがちです。そうした心理的な傾向を修正する一つの解決策は、相場の位置を常に意識しておくことです。

 相場は一直線に大底や天井を目指すのではなく、下落にしても上昇にしてもいくつもの関門があり、時には弾き返され、関門となっていた水準もいつかは突破される時がきます。そうした相場変動も相場の位置から見れば把握しやすくなります。

 相場の位置というのは例えば、25日移動平均線のレベルはいくらで、そこを基準として株価はその上に位置しているのか下に位置しているのかといった事柄です。

 25日移動平均線(以下「25日線」)を例にしますと、中長期的な上昇基調にある銘柄の株価は必ず25日線の上位にあります。反対に中長期的に下落基調にある銘柄の株価は25日線の下位に位置しています。

 下に行き過ぎた株価が本格上昇に転じるには、まず株価が上昇して25日線に接近する必要があります。25日線に接近しましても上抜けできすに再度反落してしまえば、そこまで上昇した値動きは自律反発にすぎず、下落基調は変わっていないことになります。

 つまり、大幅上昇したことで上昇相場転換を期待しましても、それが25日線の下位の出来事で基調にも変化がなく25日線を明確に上抜けできなければまた反落する可能性があるということです。

 25日線を突破し上位の位置をキープすれば、それまでとは違う大きな流れの変化が起こっている可能性があります。ここで注意したいのは移動平均線の向きの変化です。株価が移動平均線の上位にありましても肝心の移動平均線が下向きであれば株価は下値模索を続ける可能性があります。

 長い下げ相場を脱出し株価が25日線上に浮上しましても、今度は下向きの75日線が上値の関門になる可能性があります。75日線を一気に突破するパターンよりも、上昇してきた相場が25日線と75日線の間で足踏みとなるケースがよくあります。その時点で相場上昇が終ったと判断するのは早計で、そこでもみ合った(エネルギーを蓄積した)後、改めて上位にある75日線の突破を目指すパターンが一つの可能性として想定できます。

 また、天井圏での100円高と、底値圏から100円高では、結果的に意味が違う可能性があります。一方は最後の売り場提供の上昇かもしれませんし、一方は相場反転の狼煙となるケースもあります。そういったことがあるため、相場の水準、位置関係を把握することは非常に大事です。

 具体的には、移動平均線、過去の窓、過去の高値や安値といった水準(基準)と株価との位置関係を確認します。戻しや押しのメドとなりやすい下げ幅・上げ幅の3分の1や3分の2水準、0.618や0.382の水準等も時折確認しておきたいところです。また、株価変動が、一目均衡表から見た方が把握しやすければ、均衡表の各線との関係も意識しておくべきでしょう。窓や高値といった水準は固定されたものですが、移動平均線や一目均衡表の各線等は日々変化しています。それら各線との関係を確認する際は同時に向きについても把握できることになります。

 こうした相場の位置関係を把握することで、意味のない相場の雑音に惑わされることが少なくなります。そして相場の動きとその位置関係の変化を把握することは、相場に対する見方を柔軟にします。そうなれば、「昨日まで上昇が続いていたのに、今日は上がらなかったからやぱりダメだ」、または「昨日も今日も勢いよく上昇しているからもっと上がるだろう」との短絡的な判断にはなりにくくなります。

商いの方法が宜しきを得ば、必ず利益を博するを得るべし

2008/11/19

投資に慣れてきますと、いつしか謙虚だった初心を忘れ、予想や銘柄の当たり外れに終始する投資家が少なくありません。百戦百勝はありえない相場の中では、投資の技術を向上させることの方が余程大事です。

 投資の技術と言いましても基本は難しいものではありませんが、基本ゆえに継続するのは難しいともいえます。そこで今回は、投資に際し心したい基本的な項目をいくつか列挙してみますので、参考にしていただければ幸いです。

◎資金配分を明確にする。資金配分に逸脱した売買を行わない。

 資金を何等分かし、一度に全資金をつぎ込まない。一定額の現金を常に手元におく。
 必ず上手くいくという保証などない相場において、一度に全資金を投じたり、信用取引などで安易に投資額を増やしてはいけません。

◎損切りも含めた売買計画を立てること。

 上値を想定すると同時に、思惑に反した場合の撤退についても計画し、実行する。
 大きな損失を避けるために、許容損失額を予め決めておく。

◎順調に上昇してきた場合は、期待できる上値目標とは別に、最初に設定した損切り価格を、利益を確保するための売り想定価格に引き上げる。

 「あの時に売っておけば損にはならなかった」・・・上昇した際のせっかくの利益を損失に変えないために、撤退水準を引き上げる。

◎トレンドに逆らわない。

 トレンドや相場の節目・サイクルを認識することは、売買計画を立てる上で必要不可欠です。これを無視することは、目をつぶって突進するのと一緒です。

◎疑わしい時や迷った時は、手仕舞ったり、取引をしないことも良い考え。

 自分の意に反した投資を行うことは、後々のためにならない。やられた時に「自分は下げると思ったんだ」というばかりの人は、常に優柔不断の中にあり経験から学ぶこと少なし。自分の資産に関しては自分の判断と行動が全責任を負うということを認識し、少しずつでも進歩しなければいけません。

 どうしても迷うときは、客観的に状況の判断がつくまで冷静に相場を観察することも大切なことです。チャンスはこの先にもたくさんあります。
 
◎我慢と辛抱が必要。頻繁に売買しない。「上昇した」「下落した」だけを理由に売買しない。

 トレンドは持続しているのか転換したのか、過去の高値や安値、上値抵抗や下値支持となっている水準を突破したのか否かが重要なポイントです。

 一喜一憂の害は先刻ご承知のことと思いますが、相場の天井付近では自身も含めて皆が強気になっており、底値付近というのは自身も含めて皆が不安に思っている時であり、そのような状況を客観的に認識できれば失敗から遠ざかることができます。

◎相場の天井や底について勝手な憶測や思い込みをしない。

 冷静な判断を忘れて、希望や願望で相場を見ていないかを常に意識してください。私情と市場は別もの。相場はこちらの都合など一切お構いなしで上に下に動くものです。

 上記と全く逆のことを行っていないか、あるいは全く無視した投資を行っていないか、改めてご自身の投資を振り返ってみてくてください。

 ちなみに下記は、「利益をもたらすのは、相場の当たり外れではなく、商いの方法である」という意味の相場格言です。

 『相場は見込みの適不中如何にかかわらず、
     商いの方法が宜しきを得ば、必ず利益を博するを得るべし』

PERについての実践的考察

2008/11/12

株価を1株当たり利益(EPS)で除して求める「PER(株価収益率)」は、株価水準を判断する上で最もポピュラーな指標の一つです。PERを判断材料とする場合、具体的には「同じ業態であればPER20倍の銘柄よりもPER10倍の銘柄のほうが割安である」という判断になります。しかし、それは表面上は正しいのですが、そうでない可能性もあります。

 例えば業績の成長率が20%でPER20倍のA社と、10%の成長率でPER10倍のB社であれば、PERから見て割安なのはB社ですが、投資対象として魅力的なのは実はA社です。投資の参考書とは違うことを言っているようですが、株価というのは企業の利益成長を裏付けにしているということを考えれば理解できるかと思います。

 ちなみにある時点で1株当たり利益が同じ100円の3社、A社、B社、C社を考えた場合、年率20%の利益成長が期待できるA社、10%成長のB社、マイナス10%成長のC社の1株当たり利益が数年後にどの程度の差になっているかを計算したのが下記の数字です。

      A社(20%成長) B社(10%成長) C社(-10%成長)
  当 初   100円      100円      100円
  1年後   120円      110円       90円
  2年後   144円      121円       81円
  3年後   172円      133円       72円
  4年後   207円      146円       65円
  5年後   248円      161円       59円

 成長率の高いA社はPER20倍、一方のB社をPER10倍と仮定すれば、A社株価は当初2000円(1株当たり利益100円)ですが、5年後にも同じPER20倍であるとすれば同社の株価は4960円(1株当たり利益248円)になっています。PER10倍のB社の株価は当初1000円ですが、5年経ってもまだ1610円です。

 高成長の持続性を懐疑的に見てA社の5年後のPERを15倍に下げたとしましても株価は3720円で、上昇幅はB社のおよそ2.8倍にもなります。PERが高いA社のほうが投資対象として魅力的だと申しましたのは、高い利益成長力によって高株価が実現する可能性が高いからです。

 上記はじっくり保有することで実現される話ですが、相場の特性の一つとして、地合いが良い時というのは数年後にそうなるのであればただちに実現してしまうということが起こり得ます。

 現在2000円の銘柄が、数年後に5000円の価値が生ずるのであれば3000円で購入しても4000円で購入してもペイすると考える投資家が増え、一気に数年後の利益まで反映した株価が実現することになります。高成長が期待できる銘柄が投資家の買いを集めて勢いよく上昇するというのはこのようなことが背景の一つとしてあります。

 結果としての業績が想定どおりに推移したかどうかは別問題で、ある時点での将来に対する思惑(期待や不安)が足下で実現されてしまうのが相場というものです。

 であれば、景気が悪く企業業績も落ち込むと予想される場合はどうか。もちろん上記とは逆のパターンが想定されます。1株当たり利益が100円でPER10倍水準のC社が業績見通しを下方修正し減益が続くと予想される場合には当然嫌気売りがでます。C社の5年後の1株当たり利益が59円であればPER10倍で590円ですので、1000円からその水準まで下落するかもしれません。その場合、将来の利益に対してはPER10倍ですが、一番近い予想利益(1株当たり利益100円)から見ればPER5.9倍で非常に割安な水準となってしまいます。

 上記のことからも分かりますように、単純に低PERだから割安、あるいは高PERだから割高であるとは言えません。数年先の利益を正確に予想することは困難ですが、投資家は現状あるいは分かっている近い将来の延長で物事を捉えるためこのようなことになります。現在の相場が、PERでかなり低い水準にあるのは先行きの業績への不安を反映した結果であり、「数年先の減益まで織り込んでいる」と言われるのもこのためです。

 売られ過ぎた相場が水準を訂正する場合には多くの銘柄が上昇しますが、そこから先は企業の成長力で株価に大変大きな差がつきます。もちろん、業績懸念で下げた銘柄も一番悪いシナリオを織り込んでしまえば、きっかけしだい(例えば想定どおりの悪材料の発表で悪材料出尽くし、または良くなる兆し)で株価が大幅上昇に転じる可能性が高いといえます。そのため業績悪化で大きく下げた銘柄が先んじて大きく反発することが多々あります。

 ただ、基本は「株価の根拠は利益にあり」です。それ故に景気の良し悪しや事業分野の拡大縮小(業績の好転・悪化見通し)で、数分の一にまで下落したり数倍になったりと株価は大きく振幅します。数円の為替変動で株価(時価総額)が大きく変動するケースがあるように、収益予想の前提条件のわずかな変動は、複利の効果によって将来利益に大きな差が生じます。そういうことがあるため、PERで株価水準を判断する場合には、単にPERの高低だけではなく、その企業の今後の成長力に注意を払う必要があるということです。

余裕ある投資を行うために

2008/11/05

株価が上昇している時は、さらに上昇しそうだとの期待と焦りが心中を占め、急落している時は底なしのような恐怖を感じる。そのようなことは誰もが経験することです。

 株式相場は、いくつもの小さなうねりが集まりさらに大きなうねりを形成していきます。昨日、今日上がっている銘柄もどこかで休息を入れ、休息後にまた動き始めるというようなことの繰り返しです。

 総悲観の中にあった2003年4月、7603円を付けた日経平均株価は、その後4年間で2.4倍にも上昇しています。多少の動きに動揺せず、先行きを達観できる投資家は、現在においても前回と同様に大きな利益を手にするチャンスに恵まれます。

 反対に、値動きに動揺しやすい人は、買い値や損益にばかり気を取られ、もっと儲けたい(=損したくない)という思いが強くなりすぎてしまい、そのことがかえって理想に反する結果を生じさせるものです。そのクセを客観的に認識し、修正しないと、高値づかみと安値売りが続き、大きな上昇相場でも利益を残せません。

 そういった心理から来る失策を防ぐためにどうするか。簡単なことですが、一つは上昇の勢いが強い時に飛びつかないことです。上昇トレンドを形成している銘柄でありましても上昇と下落を繰り返しているわけですから、上昇後に下落し、下落が止まった後、次への動きが見え始めた時に買いを入れることができれば投資効率は高まります。

 しかしながら、相場が良い時というのはあれもこれも魅力的に見えるもので、投資家の多くは魅力的に見えた銘柄を全て買い持ちにしてしまう傾向があります。実際には銘柄それぞれに特有の動きをしているわけですから、それぞれに見合ったタイミングが存在します。

 そういった相場の特性を有効に活用し、失策を防ぐもう一つの方法が、投資対象の銘柄を複数持ち、そしてそれを継続してウォッチするということです。

 日々の相場におきましても、その時々において主役が入れ代わり立ち代りしています。ある時は内需株であったり、ある時は225採用のハイテク株であったり、またある時は低PBR銘柄や設備投資関連銘柄あったります。上昇相場の時は、多くの銘柄が魅力的に見えるものですが、実際にはそれぞれ固有のうねりを形成しながら相場を形成しています。

 つまりは、銘柄それぞれに売買のタイミングが違っているということです。例えば異なった値動きの2銘柄を継続してウォッチし(同時に保有するということではありません)、異なる銘柄の売買タイミングのズレを有効に活用することができれば、適度に利喰いを入れながらも投資効率が高まります。

 「余裕」とは「限度いっぱいまでには余りがある状態」を指しますが、資金と銘柄を分散させ、尚且つタイミングを分散させることができれば、常に資金的余裕を維持することになり、ひいては精神的余裕さえ生まれます。これと反対に、精神的、時間的、資金的余裕のない商いで継続して資産を増やすことはまず無理です。

 狙っていたA社株の買い付けができる前に折り悪く急騰してしまったような場合は、それを追いかけずに頭を切り替え、継続してウォッチしていた銘柄の中から安値圏にあるB社を狙うということができるようになれば上々です。銘柄はそれのみではなく、相場はその日だけではありません。チャンスは何度でも巡ってくるという考え方が重要です。

 できればいくつかの銘柄を継続してウォッチし、それぞれに上下変動のクセ、季節的な変動要因、上昇や下落のきっかけとなった材料等をある程度把握することに努める等、投資においても研究や勉強は必須です。そうすることで様々な投資プランの組み立てが可能となり、ここぞという時にいつでも出動できる態勢を手に入れることができます。

 それが、常に余裕を持って、楽しみながら投資を行うための秘訣でもあります。

100年に1回あるかないかという状況

2008/10/29

「現在の相場は異常である」との意見を耳にします。たしかに多くの指標が異常値を示しています。

 例えば、前回の大底、2003年4月に日経平均株価が7603円の時のPBRは1.18倍ですが、今週月曜日の日経平均株価のPBR(株価純資産倍率)は0.87倍です。これは株価からプレミア(期待収益)を剥ぎ取り、裸の資産価値からさらに13%のディスカウント状態にあるということです。PER(株価収益率)は1971年1月以来およそ37年ぶりに10倍を割り込み、25日移動平均線との乖離率は28.42%に達し1949年の東証再開以来の最大値を記録しました。

 これだけを見ても相場は「異常」な状態にあるのは間違いありませんが、相場は現実にそうした状況にあるわけですから、相場に論を立てても詮なきことです。

 ただし、いずれ相場は「異常」な状態から抜け出します。それは相場が反転して為されるのか、あるいは景気悪化により経済が相場に追いつくことで達成されるのか、おそらくその両方です。

 指標的な割安感が強まりましても、巷では「日経平均株価は○○まで下がる」といった悲観論が渦巻いている上、足元の相場がこれだけ不安定ですと手を出しにくいのは当然で、安値圏で購入しましても気を楽にして保有を継続することが困難な状況にあります。

 しかしながら、さりながら。相場というのものは高いときには最上に、安いときには最低にみえるものであり、利益を生む秘訣は「安く仕入れて、高く売ることにあり」「人が買ってくれというとき(売りが圧倒的優勢の時)に買い、人が売ってくれというとき(買いが圧倒的優勢の時)に売ること」にあります。

 100年に1度の危機は、指標から見れば過去数十年間で最も安く仕入れることができる相場状況をつくりだし、今から資金を投じる人からすれば100年に1度の好機到来となっています。

 これから発表される企業業績や経済指標の多くは、以前と比べて悪化するはずです。その悪化の程度が不透明であるためにこのような下落となったわけですが、最悪の状況をすでに織り込んでいる状態になります。企業業績や経済指標の悪化の程度が明らかになってくれば徐々に冷静さを取り戻し、その時点で行き過ぎがあれば相場は必ず修正に動きます。

 ところで、預貯金で元本を2割増やそうとすれば、年利0.55%(三菱東京UFJ銀行、10月27日現在)の3年もの大口定期を利用した場合、資金を34年間寝かせる必要があります。

 一方、例えば日経平均株価が数カ月以内、あるいは数年内に、例えばこの水準から2割上昇することはありえると考えるならば、株式投資へ資金向けることの方が理にかないます。日経平均株価がこの水準から2割上昇しましてもまだ1万円以下です。今年6月に1万4千円台、昨年7月は1万8千円前後であったことを思えば、まだまだ下位のほうです。つまり、株価が少し戻すだけで、無理をしなくても大口定期に34年間預けるのと同じ経済効果を得ることができるということです。仮に株価が動かなくても配当を受けるだけで預貯金以上の利回りとなります。

 もちろんリターンとリスクは表裏一体で、リターンを求めるにはリスク(変動するということ)を受け入れる必要がありますが、リスクのない預貯金では実現できないリターンを株式投資では獲得することができます。満期が到来する預貯金と違い、株式投資では投資の始まりと終値の判断をすべて自分で決定する必要がありますが、途中の値動きや様々な雑音を無視して忍耐強くじっくりと取り組んでゆこうと考えるならば、またとない投資の機会が目の前にあるといえます。

主要指標の意味と見方

2008/10/22

株式投資に取り組むようになって日が浅い方が多くいらっしゃるようですので、本日は日経新聞株式市況欄の「主要指標」に掲載されている主な指標の意味と一般的な見方を改めてご紹介させていただきます。

─【売買単価】────────────

 この指標は、市場全体の売買代金を売買高で割ったもので、相場の流れが値ガサ株(高株価の銘柄)にあるのか低位株にあるのかを判断するのに適しています。よく似た指標の「単純平均」は全銘柄の株価の合計を全銘柄数で割ったものです。

 例えば今朝の朝刊では東証1部の売買単価は903.4円となっています。これは昨日の東証1部では様々な銘柄が売買された結果、平均すると1株当たり904円程度の取引が中心だったことを意味しています。さらにその下に記されている売買単価6日移動平均(当日を含め過去6日間の平均値)と合わせて見ることで、物色の矛先が値ガサ株に向いているのか低位株に向いているのかを知ることができます。

 ちなみに売買単価と日経平均株価の間には以下のような関係がみられます。

 (1)売買単価の上昇は日経平均株価の上昇に先行する。

 (2)売買単価が上昇しないと日経平均は上昇しない。

 尚、1999年から2000年にかけてのIT相場では売買単価が2400円台にまで急上昇しました。これは、ソニーやソフトバンクのような値ガサの銘柄が好んで売買された結果であり、このような単価上昇局面では値ガサ株の投資効率が良くなります。その後、ハイテク株の頭打ちとともにしだいに出遅れ感が強い低位の銘柄へ物色がシフトしていき、その段階では低位の銘柄への投資が相対的に投資効率が良くなります。

─【規模別指数】───────────

 日経新聞には大型株・中型株・小型株の指数動向が掲載されており、これらの規模別指数は上場株式数に応じて区分され、時価総額に基づいたTOPIX(東証株価指数)の補完的存在です。尚、指数の分類は以下のようになっています。

 大型株指数:「TOPIX 100」の構成銘柄
        ※http://www.tse.or.jp/market/topix/data/100-j_200810.pdf
 中型株指数:「TOPIX Mid400」の構成銘柄
        ※http://www.tse.or.jp/market/topix/data/mid400-j_200810.pdf
 小型株指数:「TOPIX Small」の構成銘柄
        ※http://www.tse.or.jp/market/topix/data/small-j_200810.pdf

 この数値の動向を把握することで物色の傾向、時価総額が大きい大型株人気か、時価総額の小さい小型株人気かが分かります。

─【大商い10銘柄占有比率】─────

 先導株比率とも言い、その日の出来高上位10社が市場全体の取引の中でどの程度のシェアを占めたかを示しており、物色の潮目を判断するのに役立ちます。株式市場では集中と分散を常に繰り返しています。

 占有率が高いときは物色対象がはっきりしているときであり、特定の銘柄に人気が集中しているときです。ただ、その水準が50%以上になりますと偏り過ぎであり、その後は買われる銘柄が徐々に分散し、割安な出遅れ銘柄等に物色の矛先が移ります。一方、占有率が20%を下回るようなときは、物色の対象が分散し、焦点が定まらない状況であると言えます。

─【値上がり・値下がりの銘柄数】───

 この数値は騰落レシオを計算する際も使われますが、この数値と日経平均株価の関係には以下のような傾向があります。

 (1)その日の値上がり銘柄数が値下がり銘柄数に対し4倍程度になると、指数は目先的に調整する可能性が高い(逆のケースでは反転上昇の可能性)。

 (2)指数は小幅安でも、値上がり銘柄数のほうが多いときはその後の日経平均は上昇する可能性が高い(逆の場合は下落を警戒)。

 さらに、日々の本誌無料版夕刊に記載しております「新高値・新安値の銘柄数」も相場の温度を計る際の参考になります。

─【NT倍率】─────────────

 日経平均株価をTOPIXで割ったのがNT倍率です。NT倍率は新聞には掲載されていませんが、計算が簡単ですのでご紹介しておきます。

 この指標についてご説明させていただく前に、日経平均株価とTOPIX(東証株価指数)の特徴を知っておく必要があります。

 まず、日経平均株価は東証1部上場の銘柄から225銘柄を選んで算出した株価指数で、構成銘柄はハイテク株の比率が高くなっています。また、日経平均株価の算出方式は単純平均型で、二つの銘柄の上昇(下落)幅が同じであれば、指数に与える影響は同じになるというのが最大の特徴です。

 例えば株価6千円台の京セラが80円上昇しても、200円台の鹿島がストップ高まで上昇し80円高となりましても、日経平均に対する押し上げ寄与度は同じであるため、日経平均はハイテク株など株価水準の高い(変動幅が大きい)値がさ株の影響を受けやすくなっています。

 一方のTOPIX(東証株価指数)は東証1部全銘柄を対象に時価総額の規模に応じて株価を加重平均する算出方式が採用されているため、株価水準に関わらず時価総額が大きい銘柄の影響度が高くなっています。

 二つの株価指数の特徴を踏まえ、相場の動向を判断するのに使われるのがNT倍率です。具体的には日経平均の値上がり率がTOPIXを上回る場面ではNT倍率が上昇し、値がさ株が多い電機などハイテク銘柄が人気化している場合がこのケースにあたります。反対に日経平均に比べTOPIXの上昇が顕著な場合はNT倍率が低下し、時価総額が大きい銀行株や鉄鋼など重厚長大型の業種を中心に物色されているケースです。

 また、ハイテクなど外需株中心に軟調な時は倍率が下がり、銀行など内需株中心に軟調な時は倍率が上がり、どちらかの指数の動きが顕著でNT倍率が大きく変化しますとその後修正される傾向があります。

 上記にあげました各指標は確認するのにそれほど時間や労力を必要とせず、大まかな相場の流れを掴むには便利ですので皆様も時折確認してみてください。

商いは、心七分に業三分

2008/10/15

例えばラッシュ時の地下鉄等で地震などの災害にあった場合には、発生初期の段階ではできる限り人の流れから遠ざかり、冷静に状況を観察することが鉄則だそうです。

 恐怖心のままにその場を逃れようとする個々の行動は集団的パニックを引き起こし、その渦の中に巻き込まれることが最も危険だと言われます。その昔、滋賀県の錦糸工場やロンドンの地下鉄で火災が起こり多数の犠牲者がでましたが、その殆どは狂乱状態となった人々が出口に殺到したことによる圧死だったそうです。

 心の平静さを無くしてしまうことは非常に危険で、特に非常時は冷静に状況を判断できるかが運命を分かちます。非常時に冷静さを保つコツは、日頃においていくつかの事態を想定して対処方をシミュレートしておくことです。

 相場の世界でもパニックというのは時々発生します。それは上昇局面でも下落局面でも起こる可能性があり、そういった集団的ヒステリー状態の行動というのは上記の例と同じく望まない結果を招く可能性があります。

 ところで、玄人のギャンブラーというのは一つ一つの勝負に関しては意外に淡泊なものです。ギャンブルで生計を立てている彼らは、負けた時にはあとを引かずさらりと場を降り、資金を残します。そうでなければ生計を立ててゆくことは無理な話で、負けをあっさり認める代わりに勝てる時にはたくさん取ってトータルで勝てば良いという考え方です。

 反対に一度の勝負に熱くなり、勝ちたい気持ちばかりが先に立ち、負けが膨らんでもその場を降りれないのが素人だそうです。

 ギャンブルを一か八かの博打と捉えるか一つの事業として考えるかで結果が大きく違ってくるように、株式投資においてもそのような違いがあります。

 プロの勝負師は「流れ」を重視します。ゲームや勝負事に限らず株式投資においても経験や知識、技量は大切ですが、「流れ」というものも結果に大きく影響します。流れは、時には順境や逆境であり、運不運という言葉に置き換えることが可能で、ついていない時は無理をしないというのが生き残りの鉄則です。

 有利な状況や不利な状況というのは永遠に続くものではありません。昔から、名人と言われる相場熟練者は相場の流れについてゆくだけです。もちろん、知識や経験、技量という裏付けがあってのことですが、重要なのは天底を当てる能力ではなく、流れを見極める判断力です。流れに乗ればとことん取る反面、分が悪ければ決して無理をせずさっさと降りる、耐えるべき時には耐え、悲観も楽観もしないのが名人の名人たる所以です。 

 人間である限り喜怒哀楽はつきものですが、それを相場に持ち込んで成功した例はありません。商いは「業(わざ)六分に心四分」と言いますが、実際には「心七分、業三分」くらい、心の保ちようは大切です。

 災害にあった時には、すべてを楽観的に考えたり、悲観に染まってしまわないのがサバイバルのコツだそうです。相場も然りで、上昇、横ばい、下落の三つの展開を想定し、それぞれについての判断のポイントと行動を常にシミュレーションしておくことが非常に大切です。

 そういったことを常にやっておかないと、急ぐべき時に呑気に構え、落ち着くべき時にパニック状態に陥ってしまうことになり、望まない結果を招くことにもつながります。

過去のカイリ率と普段使いのテクニカル

2008/10/08

株価と移動平均線とのカイリ率は相場の行き過ぎを示す指標としてく利用されますが、過去の相場の安値あるいは急落時の日経平均株価と200日移動平均線及び25日移動平均線とのカイリ率を参考までにご紹介いたしますと下記のようになっています。※カイリとは「乖離」と書き、移動平均値と株価の離れ具合を意味します。

(日付)     (下落要因)      (200日線)  (25日線)
90年 4月 2日 バブル崩壊       -20.49%  -13.38%
90年10月 1日 湾岸戦争・証券不祥事  -36.36%  -16.08%
91年 8月19日 レッドマンデー     -12.85%  - 7.80%
92年 4月 9日 銀行株急落       -26.25%  -15.17%
92年 8月18日 最初の安値       -26.98%  - 8.11%
93年11月29日 景気底入れ宣言の撤回  -17.91%  -13.09%
95年 1月23日 阪神大震災       -11.20%  - 3.36%
95年 6月13日 景気腰折れ懸念     -19.88%  - 7.82%
95年 7月 3日 経済政策への失望感   -18.73%  - 3.83%
97年 1月10日 政策不信        -18.34%  -12.67%
97年 4月10日 金融システム不安    -13.07%  - 3.38%
98年 1月12日 信用リスク懸念     -19.96%  - 5.97%
98年10月 9日 ルーブル暴落      -17.79%  - 6.99%
01年 3月13日 森政権への不信     -22.56%  - 8.56%
01年 9月17日 NY同時多発テロ    -26.72%  -12.94%
03年 4月28日 バブル崩壊後最安値   -14.31%  - 4.65%

 過去16回の下落局面における200日線とのカイリ率の平均値はおよそ-20%、25日線とのカイリ率はおよそ-9%、ちなみに昨日現在の200日線とのカイリ率は23.87%、25日線とのカイリ率は-14.39%となっています。現在の25日線とのカイリ率が過去と比べて大きいのはそれだけ下落スピードが速いことを示しています。

 ところで、移動平均線と株価の関係にはいくつかの法則性があることは度々述べていますが、改めてご紹介させていただきます。

 一つには上昇トレンドにある相場は移動平均線の上位で変動し、下落トレンドにある相場は移動平均線の下位で変動するということであり、日足や週足といった期間の違うチャートを見比べてみた場合、中期的な上昇トレンドを描きながらも短期的には押し目を形成している場合など、日足と週足とでは株価と移動平均線との位置関係が違っているいうケースもあります。

 もう一つの法則性は、大幅なカイリは必ず修正されるという点にあります。拡大したカイリはいずれ縮小するというのが原則であり、これは「一方通行の動きは永遠には続かない」という自然の理に基づいています。

 ところで、株価チャートに乖離率を表示させますと、ローソク足が描かれた空間から一段下がったところに折れ線グラフが表示されますが、それよりも利用しやすいのが、移動平均線を数%垂直移動した線を株価チャートに重ね合わせた「エンベローブ」です。

 どのくらいの幅のエンベローブを描画にするかについては、銘柄の変動率(ボラティリティ)などによって変わってきますので、それぞれ値を動かして見てその銘柄の動きを捉えていると思われる値を採用することになります。それによって、例えばある銘柄は8%乖離が通常時のおよその限界点であるとか、または0%から5%の間が通常時の変動範囲であり、大きな流れではマイナス5%乖離からプラス10%乖離が出現するという銘柄もあるかもしれません。エンベローブのグラフではそういった傾向がつかみやすくなっています。

 エンベローブは株価チャートに移動平均線を垂直に移動した複数の線を描き加えただけのグラフですが、買いを控えたい場面、売りを控えたい場面の判断の目安になるのと同時に、トレンド転換も把握しやすくなっていますので普段の参考指標として利用していただきたいテクニカル指標です。

 ただし、今回のように数年に一度の大変動の時はカイリ率が平常時よりも拡大する傾向があります。このような時は相場の落ち着きを確認するのが先決です。

 尚、カブドットコム証券のスーパーチャート、イートレード証券のハイパー・イートレード、ヤフー!ファイナンスの多機能チャート等でエンベローブが表示できます。

時間を見方につけてダマシを見抜く

2008/10/01

上昇に転じたかと思えばまた下げるという「もうはまだなり(もう底だろうはまだ下がる)」の展開が続いています。「まだ下げる」との意見が増えている今は「まだはもうなり(まだ下げるはもうそろそろ底値)」を念頭に入れておきたい局面です。

 ちなみに、2003年4月に日経平均株価がバブル崩壊後の最安値7603円をつけて以降の反発局面で、具体的には03年9月から05年7月までおよそ22カ月の間、1万1000円前後でもみ合いました。同水準では01年後半と02年にかけてももみ合っており、その結果1万1000円から1万1100円の間の累積出来高は他の水準と比べて最も大きい1072億株に達し、この点からみれば上記の水準はかなり厚い岩盤となっています。

 日経平均の価格帯別出来高 → http://www.aqua-inter.com/special/376h.html

 下方にある特定の水準で累積の出来高が多いということは、その水準では多くの買いが入る可能性を示唆しており、その価格帯は下値に対する抵抗が強い価格帯となります。

 ところで、相場変動には経験則上そうなる可能性が高いという習性がいくつかあります。

 例えば、騰落レシオの70%割れ(その後の反転)と120%超え(反落を警戒)などもそうですが、同じように25日移動平均線との下方カイリ(指数の場合)はマイナス10%が目先の限界点、ボリンジャーバンドの±2σから飛び出した水準は長く維持できない、信用評価損益率マイナス20%で相場底打ち等々があります。

 また、以前にもご紹介しましたが相場上昇時及び下落時における移動平均線と株価の関係、いわゆる「グランビルの法則」も相場習性の一つです。念のため再確認の意味で下記に概要を掲載させていただきます。

 <グランビルの法則> http://www.aqua-inter.com/special/376h2.html

 ◆強気のサイン
 1.しばらく下落傾向を続けた移動平均線が、横ばいから上向きに転じようとする場面で、株価が移動平均線の下から上に突き抜けた時。
 2.移動平均線が上昇基調に変化がない中で、株価が移動平均線を一旦下回るもののすぐに移動平均線の上位を回復するような時。
 3.株価が上向きの移動平均線の上位にあり、下げるか横ばいで移動平均線に近づく動きを見せますが、移動平均線を割り込むことなく再度上昇に転じるような時。
 4.下落トレンドの中にある株価が、同様に下降傾向の移動平均線から、大きくかけ離れて下落した場合。

 ◆弱気のサイン
 5.しばらくの上昇の後、移動平均線が横ばいもしくは下落基調になりつつある場面で、株価が移動平均線を下抜けた時。
 6.移動平均線の下落傾向が続いている場面で、株価が移動平均線を上回った時。
 7.下向きの移動平均線の下位にある株価が、上げるかほぼ横ばいで移動平均線に近づく動きを見せますが、移動平均線を上に突破することなく再度下落に転じた時。
 8.上昇トレンドの中にある株価が、同じく上昇傾向の移動平均線から、大きくかけ離れて上昇した時。

 他にも相場の習性に照らしてトレンドラインやローソク足から先行きを推し量る方法がありますが、どのような分析手法を用いましても「ダマシ」に合うのはある程度避け
られません。

 ダマシとは結果として意味のないサインのことで、強いローソク足出現の後の反落、弱いローソク足出現後の反転上昇、トレンドが崩れたように見える動きの直後に前のトレンドに復帰する等々はよくあることです。

 期間数年の株価チャートを確認していただければ分かりますように大きな流れというのは数カ月から数十カ月続きます。でありますから、株価変動にあらわれた変化がダマシなのかどうか、流れが変わったのかどうかについては数日間あるいは数週間の時間をかけて吟味したところで決して遅くはありません。投資における訓練のようなもので、そうした事を繰り返してゆくことで判断の速さと確度を高めることができます。

自己を律し、相場では無理をせず淡泊に向き合うこと

2008/09/24

投資を行う際に決して無理をしない。これは非常に大切なことです。

 一つには資金的な無理をしなこと。

 目一杯の投資をすることは慎まなければいけません。諺に「相場のカネと凧の糸は出し切るな」とありますが、先立つものはまずは資金です。不測の事態に備えるのも、次の大きなチャンスを捉えることも資金あってのこと。常に投資家の思惑どおりに相場が動くとは限りませんので、「眠れぬほどに」株を持ってはいけません。

 時間的な無理をしないことも鉄則です。

 「ちょっとでも増やしたい」という思いは誰しもありますが、例えば半年後も必要になる資金を投資に振りむけるようなことはをしてはいけません。これも上記の例と一緒で、半年経った段階で、望みどおりに資金が増えているとは限らず、期待と裏腹にその時の相場が下落していれば資金が減ってしまうことにもなります。

 また、自分の生活のリズムや性格にそぐわない投資を行って成功を収めた投資家もいません。

 普段はのんびりと生活している人が、デイトレードで儲けようとしましても簡単には上手くはいきません。人には得手・不得手というものがあり、人それぞれの投資におきましても然りです。「短期間で大儲け」を狙って、知識や経験が浅い人が大金を投じて大きな損失を被ってしまうのもやり方自体に無理があった故です。

 損失に肝要にならないという点も重要です。

 損失に肝要とは、結果として下落に任せて損失拡大を許容しているケースです。反対に利益に肝要になるということは、まだまだ上があるかもしれないという状況で悠然と利益を確定すること、アタマとシッポはくれてやることのできる投資家のことを指します。

 利益に肝要で、場合によっては損切りも躊躇しない投資家Aさんと、反対に損失には肝要で、利益を厳しく追求するBさんという投資家がいたとします。6回の投資、あるいは6年間の投資でも構いませんが、以下のような投資結果を見れば一目瞭然です。

 平均して1回当たりの利益率ではAさんよりもBさんの方が勝っているのですが、たった1度の大損のために、Bさんの投資収益はAさんに及びません。
 
  回  損益率  Aさんの資金   損益率  Bさんの資金
  1  +20%    120   +20%    120
  2  +10%    132   +30%    156 
  3  +20%    158   +30%    202
  4  -10%    142   -60%     81
  5  +20%    171   +20%     97
  6  +20%    205   +20%    116

 上記の例で、2回・3回と成功した後に、Bさんがもっと儲けてやろうと考えて取引量を増やしてしまいますと、4回目の損失はさらに膨らむことになります。特に大きな利益を手にした後は慎重さを欠いてしまうことが往々にしてありますので注意が必要です。

 欲や我が強くなってしまいますとどうしてもどこかで無理をしがちです。自己を律し、相場にはもっと淡泊に向き合えれば投資成果も違ったものとなってくるはずです。

 最後に中国清代の相場師、陳雅山が残した言葉を一つご紹介させていただきます。

   心は広く  食細く    朝は早く
   夜は早く  気品は高く  頭は低く
   色は薄く  情けは深く  仕掛手早く

   常に修養なし富致の算数により売買なすなれば大成する事間違いなし。


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