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All About「日本の宿」2006年掲載集

井門隆夫リポート < 戻る


06年超私的日本の宿ニュースBEST3

2006年 12月 30日

【第一位】「新・三種の神器」の標準装備化

今年も、再生宿を含めて、各地で多くの新しい宿がオープンしました。

それを見ていて思うもの。それは・・・

◆専用露天風呂とデュベ(羽毛布団)付きシモンズベッドの客室。

◆個室やオープンキッチン付きの和食ダイニング。

◆温泉に加え、エステやスパなどトリートメント機能。

という、新・三種の神器が、完全に標準装備化されてきたこと。
その背景には、「食事のお部屋出しなど接待や布団敷きサービスを省く」という、極力プライバシーを確保するシステムを採りながら、「人件費を削減」し、「宿泊及び消費単価をアップ」できるという合理的な理由があります。

加えれば、「有機・自然食を使った和風創作料理」や、「外国製アメニティ」に、「ダウンライトや間接照明をフル活用したライティング」や、「マッサージチェア」に、「作務衣など田舎っぽいユニフォーム」と、若干・・・おいおいここも同じかよ、というきらいはあるものの、これまでの団体旅館イメージを覆し、戦後生まれのカップルユースを主ターゲットにした新たな潮流が、大きな流れになったと言えましょう。

ただ、これがいつまで続くのか、という危惧はあります。このまま行けば、かつてどの旅館も、大きな露天風呂と、量の多い会席料理に、女将営業、という三種の神器でグループ客を追ったように、個性が個性でなくなっていきます。もっと「他と違うことをやる」旅館もどんどん増え、多様化していくことを願っています。

あと、カタチから入りすぎると、たまに、主に女性からこんな苦言をいただくこともあるようです。

「部屋の露天風呂、寒すぎて入れない」、「自然食はいいけど、都会のランチのような質素な料理」、「あまりに簡素すぎる、つまらない売店」、「薄ら寒い掛け布団」、「自由に動かせず、髪からずぶ濡れになるレインシャワー」、「今どき禁煙席のないダイニング」、「経営書が交じったライブラリー」、ってどうよ。
男性に連れてきてもらったなら、文句は言えませんけどね。

それでも、画一的な旅館システムを革新した点を高く評価し、今年の第一位!

【第二位】消える一万円台!?旅館の二極化進む

第一位の宿が概ね、一泊2~3万円以上であるのに対し、一万円未満の宿も増えています。

「一回当りの金額」より、「安くても何度も行けること」を重視するシニア層や、人数が多いファミリーなどに支持され、一泊二食7,800円で泊まれる、西日本の湯快リゾートや、東日本のスタディ(伊東園)グループの宿などが代表例です。

こうした宿は、不良債権化していた宿を安く入手したうえ、経営者交替。食事をオールバイキングにしたり、布団はあらかじめ敷いておくなどこれまでの仲居システムを廃し、原則として「セルフサービスの宿」にすることで大幅な値下げを可能にしました。

そのほか、夕食を自由化・選択可能として、一泊朝食5,250円で販売する、三菱地所系の四季リゾーツも、保養所や旅館を入手し、旧態依然としたシステムを変えることで「連泊・滞在」のお客様などに喜ばれています。全館禁煙の宿も生まれ始めています。

こうした「宿の性格の明確化」により、利用者は目的ごとにメリハリを効かせて宿を選択するようになり、その結果、「平均的な一万円台の宿」がますます消えていくという結論を導いているのです。

【第三位】旅館のグループ・系列化進む

上記の流れでもおわかりの通り、旅館のグループ・系列化が進んでいます。

例えば、不動産会社で、露天風呂付客室の宿を中心として、旅館ホテルの系列化・全国展開を進める共立メンテナンスなどがあります。もともとは、学生会館などの経営を主体としていましたが、学生数の頭打ちや地元志向より、団塊世代のリタイヤなどによるレジャーニーズの一層の拡大に着眼している点は、理解できる戦略です。女将塾で有名な、「銀花」も現在では、同グループなのですね。

そして、こうした異業種企業グループによる系列化ばかりではなく、今後は、地域性を強化した、特定旅館によるグループ化も進展していくことでしょう。

例えば、東北の王将グループや山麓荘グループ。東北地方の旅館を系列化し、主として地元団体や熟年女性、ツアーバスのお客様をターゲットとしています。

これは、まだ流れの入口。地方金融機関の不良債権のオフバランス化(旅館債権の売却)が進むにつれ、所有(不動産会社など)と運営が分離し、その運営を、別の有力旅館が担うというスタイルが、地域や旅館グレードを問わず、今後ますます進展していくことは間違いなさそうです。

以上が、2007年ベスト3。では、2007年はどんなトレンドが生まれるのでしょう。

07年日本の宿トレンド予想BEST3

2006年 12月 30日

【第3位】「石見銀山&温泉津温泉」ブーム

かつて、石見銀山の銀の積出港として栄えた「温泉津(ゆのつ)」(島根県)。この町の小さな温泉が、2007年、大きく注目されようとしています。それは、「石見銀山」の世界遺産登録(2007年7月予定)。

温泉街には木造宿が軒を連ね、世界遺産登録されれば、銀山とともに、温泉街で初の世界遺産となります。これまで、地元の湯治客を中心に、こじんまりと何も変わらない営業をしてきた結果なのですが、これからも、俗化せずに、この温泉街が後世に伝えられていくことを願っています。

なかには、「長命館」のように、内湯を持たず、外湯に出向くスタイルの湯治宿も残っている温泉津温泉が、2007年注目されるのは間違いないでしょう。

【第2位】「泊・食分離」の流れ、全国へ

十年以上も前から、業界で問われていた「泊・食分離」。すなわち、温泉旅館も、ホテルや昔の湯治宿のように、室料と食事料を分離・明確化しようという動き。しかし、大きな調理場や多くの仲居さんを抱える旅館にとって、「食事の自由化につながる流れは、売上ダウンになる」と、一泊二食を頑なに守り通してきました。

ところが、結局、単価ダウンと客数ダウンにより売上減少を余儀なくされ、経営難にあえいでいます。あの、量ばかり多く、時間を限られた夕・朝食では、遅く到着したり、連泊したり、まち歩きをする楽しみや時間が奪われてしまいます。それよりは、食事選択を自由化し、多様な目的をもった利用者を温泉地に呼び込もうという動きが全国的に、ようやく、広がり始めました。

例えば、仙台の奥座敷作並温泉や、有馬温泉、阿寒湖温泉では、この冬、国土交通省の支援を得て、実証実験としての「泊食分離」商品の販売が始まります。

「湯どまり」「そとめし」をキーワードに、温泉旅館に泊まって、まちで食事をしたり、宿で食事をしたり。ゆっくり滞在して、リフレッシュして欲しい・・・。
3月上旬には、温泉地自らが発起して、加賀の山代温泉でも始まります。
この「まっとうな流れ」が全国に定着する、その元年が2007年だったと、いずれ思い起こされることになるでしょう。

【第1位】「別邸」ブーム

2006年日本の宿ニュースBEST3でもお示しした「新・三種の神器」(専用露天、ダイニング、スパ)を備えた旅館の流れは、「別邸」というコンセプトに収れんしてきています。

露天風呂付客室の走りでもあった「別邸仙寿庵」は、旅館たにがわの別邸として建てられました。その後「別邸」と名の付く宿はどんどん増えていきました。

05年には、別邸とは名は付かないものの、佐賀・太良嶽温泉蟹御殿の別邸として建てられたのは、「風の森」。「お二人さま専用宿」とコンセプトをさらに明確化したのは記憶に新しいところです。

こうした流れの背景にあるのは、旅館業界の世代交代。戦前生まれの両親が育てた旅館とは一線を隠した「別邸」を経営するのは、戦後生まれの若き子息たち。

そして、06年11月。南房総鴨川温泉の老舗、鴨川館の別邸として誕生したのが、「ラ・松盧」。

五邸各邸の120坪の広々としたプライベート空間には、ミニバー付リビングや床暖のベッドルーム、二人それぞれのプライベートトイレを備えた「ゲストルーム」に加え、「かけ流しの専用露天風呂」、「専用ジャグジー」、そしてテラスづたいに愉しめる「プライベートプール」という贅沢さ。

都内からは、トヨタセンチュリーのプライベートハイヤーが二人を出迎えるオプションも。到着後は、専用クラブラウンジでひと休み。午後は、その贅を極めた自由空間で、プライベートエステを受ける陶酔のひと時・・・。

食事は、本館の鴨川館の完全予約制・個室料亭「よしだや」での懐石料理を楽しんだり、ガーデンプールに面したレストラン「きゅいじーぬ四季彩」で、ワインで乾杯するのもよし。地元、鴨川の町へ繰り出し、地魚料理を満喫するもよし。
完全「泊・食分離」で自由時間を過ごすことができます。

さらに、06年12月。山口の名湯、長門湯本温泉・大谷山荘に生まれたのが「別邸音信(おとずれ)」。

これまで、父親世代の旅館は、階層を重ね、上へ上へと伸びていきましたが、別邸は、横へと広がり、かつての平屋や低層の旅館への原点回帰を示しているともいえましょう。

そして、意識せずとも、その先にあるのは、08年に京都に生まれる日本初のアマン。彼らが日本に進出してきたとき、すでにその個性が霞んでしまうほど、07年の日本には、「別邸」スタイルが根付いているかもしれません。

さて、1月には、日本の何処に「別邸」ができていることでしょう!?

新たな温泉問題ぼっ発!

2006年 11月 23日

法改正で「源泉かけ流し」が消える!?
「水質汚濁防止法」が、温泉旅館業界の間で注目を浴びています。
この法律は、「工場や事業場からの排水を規制することによって、川や海などの汚濁の防止を図り、人々の健康の保護や生活環境を保全し、不幸にも排水のために人の健康にかかる被害が生じた時には事業者の損害賠償の責任について定めることを目的」として、公害が社会問題化していた1970年に策定されました。
さらに、2001年の改正で、世界保健機関(WHO)の健康被害報告を受け、「長期にわたり摂取すると健康被害を招く」とされるホウ素やフッ素の基準が強化されました。ただ、その時点で、「低廉な除去装置がない」ことから、適用は先送りされ、2007年7月から新基準が適用されることになったそうですが・・・。
その、ホウ素やフッ素を排出する事業場として最も数が多く、排水規制の取締り対象とすると言われているのが「温泉旅館」だというのです!
それは、「温泉の泉質自体にホウ素やフッ素が含まれているから」ですが、この話を聞いたとき、環境省が本気でそう言っているのか、耳を疑いました。
温泉旅館の源泉かけ流しのおかげで、「長年にわかり健康被害を受けるおそれ」があるというのでしょうか。
もちろん、工場ならわかります。さらに、ボーリングして湧出させた人工温泉なら、あえて指摘されてもしかたないかもしれません。
ところが、指摘先の温泉というと、玉川温泉、草津温泉、松之山温泉、有馬温泉、道後温泉、別府温泉・・・などなど、全部古来から湧いて流れる自然湧出温泉です。
さらに、「日帰り温泉は排水規制の対象としない」そうです。なぜなら、「ちゅう房施設を使って食事を提供していないから」だそうで、ここまで来ると、何を規制しようとしているのか、その目的に強い疑問を感じえないのは私だけでしょうか。ちゅう房とフッ素・ホウ素は何の関連があるのでしょう?
さらに、除去装置も格安になり、一台3~4千万円で買えるそうです。これ一台買ったら、どれだけの旅館が倒産の危機に瀕するか、ご存じでしょうか。環境省さんの答えは「業界が求める価格帯の装置開発は困難」だそうで、まるで、この法改正がメーカーへの間接的利益供与と思えてなりません。
そのために、旅館業界側が考えている方策は、まず「希釈」。温泉を新基準まで薄める。湯船の湯を希釈するのであれば、みごとに消費者ニーズと逆行しますが、取り締まられては仕方ありません。そのために、井戸を掘って地下水で温泉排水を薄めて放流することも考えているそうですが、新たに地下水を掘りあげてまで自然湧出温泉を希釈するっていうのが、「環境」対策になるのでしょうか。
そのほかに、温泉を循環とし、温泉量を減らした上で下水や浄化槽処理することも可能でしょうが、湯量が多く、下水整備もされていない地域のかけ流し湯ではなかなか困難です。
さらに、食事提供用のちゅう房をなくし、日帰り温泉として登録して営業する案もありますが、そうすれば、高濃度のフッ素・ホウ素を大量排出しても罰せられないそうです。
この問題は、ほとんど広報されず、少なくとも多くの人が誰も知らないまま、突如、日経MJ(06年11月22日号)に掲載されることで、世間に知れ渡りました。
このまま新基準が適用になれば、温泉旅館の「源泉」の排水は規制され、罰せられることになります。確かに、草津温泉では、過去、下流の「ダム建設」のために水質を石灰で中和する工場を造るなどの配慮もしてきました。しかし、今回は、罰するのは温泉地ではなく、全国の「温泉旅館」だそうで、温泉地で希釈をしたり環境対策をしてもダメで、あくまで個別旅館で「源泉をそのまま排水していないか」取り締まるそうです。
日本温泉協会が、環境省に長年「湧出している温泉を利用した旅館を当分の間除外して欲しい」と要求してきた甲斐もなく、日帰り温泉だけ生き残り、旅館は厳しい規制下におかれることになったようです。
ある温泉地では、騒ぎになるというか、すでに呆れ果てており、善処されると思うと信じながら、もし本当に施行されたら、環境省の指導によりと貼紙をしたうえで、旅館内の大浴場を閉鎖し、外湯に誘導するそうです。事実上のボイコットですね。
詳しい背景や事情を私自身がまだ飲み込めていないのかもしれませんが、現在報道されている点を読み、業界の声を聞く限りでは、今回の基準強化は、世間一般の常識を無視し、当初からの事業場一覧に「旅館」が入っていたがゆえにそのまま解釈したにすぎないもので、極めて遺憾に思えます。
もう少し、視野を広くもって、日本古来の文化・伝統・商慣習なども配慮したうえで慎重に改正を考えていただかないと、日本が古来から健康保養、療養に活用してきた「源泉かけ流し」温泉が一気に消える危機を迎えることになりそうです。もちろん自然湧出した温泉以外の基準値を超える排水は一切ダメです。でも、自然湧出した源泉がそのまま流れゆく現象に関しては、どうか善処を望みたいと思います。

※全国の温泉旅館の皆さんへ
今回、法改正されると「ホウ素が10mg/l(これまでは500mg/l)」以上、「フッ素が8mg/l(同15~50mg/l)」以上含まれた源泉をそのまま排水すると、07年7月以後、除去装置を買うなどの対策を行うまで罰せられます。全国の主要温泉地が含まれますので、ご注意ください!

日本の宿ガイド日記(由布院・玄界灘編)

2006年 09月 16日

由布院の秋。焼き椎茸がうまい。

9月の平日、由布院に行ってきました。

言わずもがな、「町づくり」の元祖として、近年の日本の観光地モデルとなってきた由布院。田舎の温泉地の風情を残し、多くのカップルや女性客が楽しそうに歩いています。

でも、またまた、外部資本による大型ホテル計画を、合併後の由布市が認めてしまったので(それも「今回限り」というからなお怪しい)、旧湯布院町内は何やら喧騒感漂っていました。

しかし、木を見て森を見ずというか、、、我田引水というか、、、自らの参入が自らの尻尾を食う結果になるのが想像できそうなのに、、、企業イメージまで損ねかねないのに、「今、観光客が来ている」からといって、巨大ホテルをわざわざ「高さ規制」のある由布院に建てようというのは、なぜなのでしょう?。

人口減少が続く日本。「顕在需要を取り合うのではなく、潜在需要を掘り起こしてこそプロ」だと思うのですが・・・。

そんな話をツマミに、「一夜で由布院を極めるなら」、と。大人げもなく、名宿のハシゴ。亀の井別荘の湯の岳庵で食事をし、山荘無量塔のTan’s Barでジャズを楽しみ、仕上げは由布院玉の湯のNicol’s Barで寝酒をたしなんで参りました。食事だけでも予約できるのが、由布院のよいところでもあります。
そして、由布院御三家を一気に回ると、微妙な客層の違いも感じられます。
亀の井別荘は、女性グループ。山荘無量塔は、若めのカップル。由布院玉の湯は熟年夫婦。それぞれ、多かったように思えました。

美味しかったのは、焼き椎茸。肉厚のかさにかぼすを垂らし、足は千切りにして、ちりちり七輪で焼いていただくのですが、これはうまい!
静かにクラシックがかかるオープンエアの「湯の岳庵」で、そよ風にのって焼き椎茸の匂いが漂う、由布院の秋でした。

山といえば、次は「海」です!

対馬と呼子では、ヤリイカが旬!

特急ゆふ号で博多に戻り、福岡空港から乗ったのは対馬行きのボンバルディア。わずか30分で、国境の島まで運んでくれます。

玄界灘に浮かぶ、壱岐と対馬。壱岐といえば「ウニ」の島。そして、対馬といえば「イカ」の島でもあります。

もちろん、その他魚介も豊富ですが、イカ漁がとても盛ん。夏はヤリイカ、冬はミズイカ(アオリイカ)。一年を通じて、活イカが食べられます。

イカは、鮮度が短く、多くの方は、真っ白なボイルしたイカを思い浮かべるのではないでしょうか。新鮮なイカは透明です!

今回は、対馬でイカ漁を見てから、イカを食しに足を運んだのは、福岡にお住まいの方なら、一度や二度は行ったことがある、イカの町「呼子」でした。

対馬からジェットフォイルで壱岐へ、フェリーに乗換え、呼子港へ。玄界灘の旅は、いろんな船を体験できます。

さて、どうです。このイカ!
イケスからあげられ、さばくこと約1分。口に運ぶと、コリコリ感と汐の香りがまったりと体中を駆け抜けます!。
ゲソは、気をつけて。まだプチプチの吸盤が、頬の内側に引っ付いてきます。

この活イカの甘さといったら・・・とても東京では食べられません。
ぜひ、一度は、皆様も試しに行かれてみてはどうでしょう。

呼子では、「河太郎」という行列のできる店をはじめ、イカしゅうまいで有名な「萬坊」、そして港の周りに数々のお宿も並んでいます。

大分の椎茸に、玄界灘のイカ!
初秋の九州のうまいものを満喫して参りました。
さて、次の旅はいずこへ!

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