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アクア・スペシャル2010

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アクア・スペシャル2010

投資心得 十三か条

2010/12/15 No.481

個人投資家を対象にしたアンケート結果を目にしますと、株式投資における失敗の要因はおおよそ似通っており、いくつかの要因に絞られます。逆に言えば、売買を行う前にいくつかの点に注意するだけで成功につながるということです。
上記を踏まえ、株式投資の心得を改めてご紹介させていただきます。

1.トレンドを認識すること。(トレンドには上昇、下降、横ばいあり。短期、中期、長期、それぞれのトレンドを確認すること。)

2.全体を見よ。(素晴らしい銘柄であっても、相場全体、例えば日経平均の引力には逆らえないこと多し。)

3.移動平均線を活用すること。(テクニカル手法も様々。まずは最も基本的な移動平均線と株価の関係を知ること。例えば、25日線のみでも、株価との間に何らかの関係を見出すことが可能。)

4.上げ相場に押し目あり、下げ相場に戻りあり。(基本的に相場は休み休み行くもの。慌てる乞食はもらいが少ないの例えあり。)

5.相場の習性を知ること。(三尊天井、二番底、三角もち合い、窓埋め等々)

6.前始末。(利喰い目標、損切り目標、撤退の時期を前もって見積もり実行すること。商いを仕掛けたる時、先ず損銀を積もるべし。)

7.値に惚れるな。(買値で相場を見てはいけない。相場は投資家の懐勘定を一切斟酌しないものと知るべし。)

8.株を買わずに時を買え。(「考えて、考え抜いて底を売り。考えに考えて天辺を買う」ということあり。相場における出処進退、タイミングこそが大事。)

9.惑わされるな。(周りの見解に一喜一憂するは愚なり。相場というのものは高いときには最上に、安いときには最低にみえるもの。「類よりて集まる意見は時遅し、その裏道を深く考えるべし。」)

10.金儲けの秘訣は、人が買ってくれというときに買い、人が売ってくれというときに売ることにあり。

11.遠くに飛ぼうと思ったらまず後ろに下がれ。(相場で儲けるには、売買を控えて休み、観察することも大事。飛ぶ前に見よ。)

12.見切り千両、損切り万両。(商いは見切りが大事。しまったは直ちに仕舞え。)

13.チャンスは必ず巡ってくる。

以上、ここにあげたポイントは至極当たり前のことばかりですが、こういった基本的なことを疎かにしないことが勝者への近道です。

窓の意味と一般的な判断

2010/12/08 No.480

株価を連続して見た際、値を飛ばした結果、ローソク足とローソク足の間に空間が生じることがあります。チャート上のこの空間を「窓」あるいは「空(くう)」、欧米流では「ギャップ」と呼びます。

相場格言に「窓開かれた方向につけ」というものがありまが、これは、窓を形成して上放れた場合には強力な先高を、下放れた場合は相当な先安を示す動きと見られるためです。窓を開けたということは株価が一気に変動した状態を示しており、その勢いが、それまでの買い方と売り方の力関係を一変させ、そこから新たな相場が始まるという見方です。

また、相場解説でよく聞く「窓埋め」とは、一旦「窓」になったチャート上の空間を後日埋めにくることを指しており、これも相場の特性の一つで、その窓が下値や上値の目先的な目標となるケースが多々あります。相場解説などで「X月X日の窓を意識した動き」「窓埋め完了で相場上昇」などと使われる場合はそのことを意味してます。

ただし、開いた「窓」は必ず埋められるということではなく、「三日に埋めざれば、その勢い強し」と言われますように、埋めにこない方が相場の方向性としては強力ということになります。

大底でもなく、天井圏でもない中段もち合い後に現れた「窓」の場合、上に放れた場合はその窓の水準が次ぎの段階では下値支持となるケースが多く、窓を開けながら下に放れた場合はその窓の水準が上値抵抗となるケースが多々あります。「窓埋め」に向かう場合も、窓を開ける以前の相場に大きく食い込まずに支持あるいは抵抗の強さを確認できれば、そこから再度、相場は勢いを盛り返す可能性が高いといえます。

もう一つのポイントは、「窓」が大底あるいは天井にて現れた場合です。大底や天井は過ぎてみなければ分からないものです。しかし、下値で窓を開け、そのすぐ後に反対方向に切り返し、窓を開ける前の水準に株価が反騰いくことがあれば、窓を開けて急落した勢いは打ち消されたことになり、窓を開けて孤立したようなローソク足の出現で底打ちと見られます。

例えば、何らかの突発的な悪材料で狼狽売りが殺到、しかしすぐに冷静さを取り戻したような場合、狼狽売りで急落する前の相場に株価はすぐに戻ります。

そこにいくまで下落トレンドが続き、売ろうかどうか迷っていた投資家は売りが殺到する中でようやく売り切った可能性が高く、こういった際の「窓」とその後の切り返しが大底のシグナル、あるいは相場反転のシグナルとして重要視されています。これがいわゆる「明けの明星」です。反対に、十分に高い位置でさらに勢いよく窓を開け上昇しながらも、すぐに反落し、そこに描かれたローソク足が離れ小島のようになってしまった場合、古来から相場天井のサインとされる「宵の明星」となります。

また、窓が三回続けて出現する場合を「三空(さんくう)」と呼びます。窓を開けて変動するということは、上昇、下降のいずれの場合でありましても、極めて強い勢力の出現と見られます。しかし、それが三つともなれば、反対勢力の巻き返しのタイミングとなります。

一般的に上昇相場の三空の場合、最初の空は新規の強力な買い勢力の出現を表します。二空目は分が悪くなったと判断した売り方の撤収と、買い方の買い乗せ。三空目は逃げ遅れた売り方の総撤退的な買い戻し(三空踏み上げ)になります。その後は買い方のみが残された状況で、必然的に需給が悪化します。反対の下げ三空(三空叩き込み)の場合は逆で、投売りで下げ、売り乗せで下げ、下げ止まれば売り方の買い戻しで反転する可能性が高くなります。つまり三空出現で一旦は反動がでるタイミングと捉え、目の前の勢力が尽きる頃を待つという戦略が考えられます。

柔軟かつ適切な対応を可能にするには

2010/12/01 No.479

中国の古典「孫子」は、その時々の指導者に限らず投資家にも古くから愛読されてきました。孫子は戦争について書かれた書物ですが、出処進退に関わる部分や決断の連続という点では戦争も投資行動も同じです。

そして、プロイセン将校のクラウゼビッツが著した「戦争論」も、孫子同様に各国の指導者や投資家に愛用されてきた兵法書で、「東の孫子、西のクラウゼビッツ」として双璧をなしています。

戦場では、指揮官の状況判断が部隊の勝敗を決します。戦場を市場に、指揮官を投資家に置き換えてみましてもそのとおりで、それ故にこの手の書物が投資の手引き書として活用されてきた歴史があります。

クラウゼビッツは、戦闘において不測の状況や障害に遭遇した際、心の摩擦が生じ、その摩擦が目的の達成を困難にすることを指摘しています。戦場においても市場においても予測どおりに事が運ぶことは稀なほうで、予想外の事態が次々におこり、さらには相場が上げても下げても心理的葛藤(摩擦)が生じます。

また、戦場においても市場においても、指揮官(投資家)の意思決定は収集された情報(データや材料等)に依ってなされますが、情報というものは不完全である場合が多いものです。なぜなら状況は常に流動的だからです。

情報については「われわれが市場で手に入れる情報の多くはたがいに矛盾している。それよりさらに多くの情報は間違っている。そしてもっとも多くの情報はかなり不確実である」とクラウゼビッツが言っているとおりで、このような中で投資家は常に情報の不完全な部分を推測し、補足しながら判断を行っていかなければなりません。

つまりは、先行きに関して不確かな状況、予想外の事態、あるいは状況の変化に柔軟に対応することこそが勝利の要諦となります。ここで言う「柔軟な対応」とは「長期的な資産形成」といった観点からの投資行動です。

そのためには「ロジスティックス」が重要なポイントとなります。ロジスティックスとは、ビジネスの世界では単に「物流」と解される場合もありますが、「原料の手当てから販売まで、物流を効率的に管理するシステム」を指し、もともとは「兵員・兵器・弾薬・食料・衣類・医薬品など作戦に必要となる資源を作戦計画に従って必要量を計算し、計画、確保、管理、補給する活動」を指す軍事用語で「兵站(へいたん)」と訳されます。

勝つためには当然「何を、いつ、どれくらい、どこに投入するか」といった綿密な計画と準備、そしてそれを実際に実現させる能力が必要であり、近代になってからの戦争はすべてロジスティックスが勝敗を決したとも言われます。

兵站のない戦争が成立しないように、投資においても、思い描くことを机上の空論にしないためには、不測の事態や不確実な状況の発生を前提に入れつつ、資産全体から見た運用管理が必要であり、それによって柔軟かつ適切な対応が可能となります。「戦争という仕事の10分の9までは兵站だ」「プロは兵站を語り、素人は戦略を語る」という言葉がありますが、投資においてもまったくその通りです。

世界の投資家に影響を与えたカリスマたちの投資の観点

2010/11/24 No.478

世界の投資家に影響を与えたカリスマ投資家たちが、実際に富を築いた投資の観点をご紹介したいと思います。

【ウォーレン・バフェット】
バフェットの投資の観点は、将来の価値(利益成長)に比べ現在の価値が割安であること。競争力の強い優良会社の株価が安くなったときに大きく投資するのがバフェットの投資スタイルです。

【ピーター・リンチ】
リンチは「もうガタガタで誰も見向きもしないような業界の中で、健闘している会社を探せ」と言います。なぜなら、今が最悪と言える業界にあって、生き残る企業は莫大な利益を得ることができると考えるからで、人気業種の中心となっているようなトップ人気銘柄には絶対に手を出さないのも彼のスタイルです。ちなみに、リンチは「株価が半分に下がったくらいで売ってしまうなら、売買などやらないほうがいい」とも言っています。

【ベンジャミン・グレアム】
成長性といった不確定要素を無視し、時価総額が純流動資産を下回れば割安であるとする考え方で、企業の現在価値に着目したバリュー株(割安株)投資を打ち立てた功労者。「投資家は、市場に参加することではなく市場の愚かさから利益を得るべきである」と言い、市場の動きは利用するかもしくは無視するとうのが彼の持論です。

【ジョン・テンプルトン】
テンプルトンのやり方は、一つの事実で理解できます。第二次大戦が始まった直後のある日、彼は証券会社に立ち寄り、「値段が1ドル未満の銘柄を残らず、100株ずつ買って欲しい」と注文。結果、104銘柄(うち34銘柄は破たん寸前)のボロ株を購入し、4年後にすべて売却した時には資産は4倍にもなっていました。いくつかの企業は倒産しましたが、それ以上に、経営危機を乗り越えた銘柄の株価が何倍にも跳ね上がり、彼の資産を増大させました。

いずれも現代の投資家に大きなな影響を与えた先達です。数%の利益を狙うのではなく、辛抱強く投資を行い、結果として得る利益は投資元本の数倍あるいは数十倍というものです。

下げれば悲観的になり売りたがる投資家が多い中で、上記でご紹介した投資家達は目先的な市場の動きに惑わされずに下げた時こそ投資のチャンスと捉え、少なくとも数年先の将来の大きな利益を遠望しているという点で共通しています。

投資のやり方は様々ですが、参考になる部分があれば幸いです。

テクニカル判断の要点 その一例

2010/11/17 No.477

相場は、直前の高値を更新しながら上昇トレンドを形成します。直前の高値と申しましてもいろいろありますが、株価上昇が頭打ちとなった(その後反落した)高値を抜くことが上昇トレンド形成の必須条件となります。

直近の日経平均株価(下記リンク参照)は相場底打ちの典型パターンの一つ「逆三尊(三尊底)」を形成していますが、「逆三尊を形成した」と言えるには、上記の考え方同様に、必ずクリアしなければいけないポイントがあります。

逆三尊とは下値を三度確認する動きで、3つの谷(2番目の谷が最も深い)と、その間に2つの山を形成し、ちょうど「山」の字を逆さにしたような波動を形成します。

中間にある2つの山を結んだネックライン、あるいはより高い方の価格を抜かないと逆三尊形成とは言いません。その水準を上抜いて初めて「逆三尊を形成した」ことになり、相場はより強気に傾くのが通常のパターンです。

一方、相場は直前の安値を更新しながら下降トレンドを形成します。直前の安値と申しましてもいろいろありますが、株価が一旦下げ止まった(その後反転した)ポイントを割り込むことが下降トレンド形成の必須条件となります。

逆三尊型の逆パターンとなる三尊型の天井形成の場合は、相場は「山」の字を描き、3つの山(2番目の山が最も高い)と、その間に2つの谷を形成します。

中間にある2つの谷を結んだネックライン、あるいはより安い方の価格を下抜けしないと三尊形成とは言いません。その水準を下抜いて初めて「三尊天井を形成した」ことになり、経験則上、下向きの動きが強まります。

ちなみに、NYダウは今年4月の高値を頂点に一時三尊型の天井を形成するかのような波動を描いています。

NYダウが青の太矢印のような動きとなり、ネックラインを割り込んでしまえば三尊天井が形成されますが、実際の動き(赤の矢印)はネックラインを割り込むことなく三尊形成を拒否した動きとなっています。

参考までに、三尊とは仏像の配置からきているもので、中央が釈迦なら両脇は文殊、普賢の両菩薩、真ん中が阿弥陀なら観音、勢至、薬師なら日光、月光という組み合わせになり、英名では「ヘッド&ショルダーズ」と言います。

上記のようにポイントとなる高値(安値)を上抜く(割り込む)かどうかはテクカル判断を行う上で大変重要です。もちろん「相場は生き物」と言われますように、日々変化しています。ローソク足を判断の根拠に置くならば、固定的な考え方を排して、値動きに照らした判断が必要になってきます。三尊形成に失敗した場合、一定の範囲で動くレンジ相場に移行する場合もあります。

日経平均株価が逆三尊の形状をそのままキレイに残すかどうかについてはもう少し時間が必要ですが、三度下値を確認する逆三尊はかなり強力な底入れパターンであることは相違ありません。

投資効率が極端に悪化するケース

2010/11/10 No.476

相場とは株価と出来高が一体となったものであり、株価の変動には必ず出来高の盛衰を伴います。株価の動きは目立たなくとも、出来高の増減をカモフラージュすることはできません。

例えば、出来高が増えるということは、そこに何らかの理由が必ず存在します。「出来高は価格に先行する」と言われますように、相場が上昇する際は出来高が増加するケースがほとんどであるため、出来高急増加銘柄を抽出して投資に利用することがよくあります。

ただし「一時的に出来高が急増し株価も急騰、しかしその後すぐに急反落」というケースがあります。

こうしたケースでは、急騰時の勢いにつられて目先狙いで買い付けた投資家の多くは利喰いする間もなく損失を抱えてしまうことになります。こうなってしまいますと高値近辺で買い付いてしまった投資家は、株価が戻ればその銘柄を手放したいと思い、このことがその後の株価の上値を抑える要因となります。

相場の方向に追従する順バリの投資では、上昇トレンドに乗ることが重要であり、資金効率を考えた場合、急上昇している銘柄に投資することは決して間違いではありません。

しかしながら、その後の変化に対してどのように対処するかを具体的な戦略がないまま飛び付いてしまい、投資効率が極端に悪化するケースが多々ありますので注意が必要です。

参考までに、出来高の水準を見る指標に「出来高回転率」というのがあります。出来高回転率は、その週(日)の出来高規模を、上場株式数が1年間で何回転しているかで表しており、出来高の面から銘柄間の比較が可能なモノサシとなっています。

出来高回転率が100%であれば、上場株式の全部が1年間に1回転していることになります。つまり、全ての株が売り買いされて、株主が全部入れ替わったことになり、商いがかなり過熱している状況です。

もちろん、特定の大株主など絶対に売却しない向きはありますが、表面上は以前からの低コストで、その銘柄に愛着のある株主は皆無となり、大半は直近に買い付けた高コストの株主となってしまったといえます。これは、近い将来の株価に関してプラスではありません。

回転率が高いということは、多くの株式が浮動株となったのに等しく、それ故に値動きが荒くなります。高い回転率が維持できなければ、自ずと株価の伸びも限界となります。

本間宗久曰く、「急に儲くべしと商いを急ぐときは、日々の高下に迷う故、相場を追いかけ、追いかけ商い致すゆえ、その都度毎に損出るなり」。

何らかの材料で買いが殺到し株価が急騰するような場面では、すぐに儲かるような気がして飛びつきたくなるものですが、上記のようなこともあるということを心したいものです。

相場の春夏秋冬

2010/10/27 No.475

通常、株式相場には4つの局面があり、「金融相場」→「業績相場」→「逆金融相場」→「逆業績相場」・・・の順番で循環を繰り返すとされます。

「金融相場(流動性相場)」とは、いわゆる「不況下の株高」とも言われる局面で、中央銀行の金融緩和によりカネ余り(過剰流動性)の状態となり、その一部が株式市場に流入して株価を押し上げます。大量の商いをこなせる大型株が物色される傾向があります。

「業績相場」は、過剰流動性に支えられた金融相場が一段落した後の相場で、金融緩和の効果で景気が回復し、企業業績が改善に向かう段階の株高です。景気回復に伴い金利も上昇に転じますが、企業業績の拡大が金利上昇のマイナス面を吸収します。企業の資産価値よりも成長力に最も注目が集まるのがこの段階です。

景気や企業業績が拡大を続ける中、金利もしだいに上昇傾向を強め、それがボディブローのように景気や企業業績へ影響を及ぼし、業績頭打ちへの懸念が台頭してきます。と同時に、金利と株式の相対的な比較で株式市場への資金流入が細り、相場は下降トレンド入りとなります。これが「逆金融相場」で、その入口では、大型株から小型株へ物色対象がシフトしてゆく傾向が見られます。

景気後退が鮮明になるとともに企業業績の悪化も市場心理を冷やし、株式相場も下落傾向を強めるのが「逆業績相場」です。この段になると中央銀行は金融引き締めから緩和に転じ、金利も低下しますが、緩和効果が業績悪化で減殺されてしまいます。業績期待が後退し、企業の資産価値や安定感が好まれます。

株式相場における4つの局面は春夏秋冬のように移り変わり、それを簡潔にしますと以下のようになります。

      <株価> <金利> <業績>
「金融相場」  上昇↑  低下↓  低迷↓
「業績相場」  上昇↑  上昇↑  改善↑
「逆金融相場」 下落↓  上昇↑  拡大↑
「逆業績相場」 下落↓  下落↓  悪化↓

逆業績相場の後はた金融相場へと移ってゆきますが、今現在は金融相場(流動性相場)の入り口にある可能性が高く、そのことは今後の投資を考える上で大変重要です。

ところで、日本株は海外の株式増場の影響を受けるため、本誌無料版朝刊の「NY市況」のように、前日の海外株がどうだったかを知ることは非常に重要です。その際、NY市場の動向を大局的にとらえてみることが大切です。

例えば小売り株の動きから、高級品が売れているのか、ディスカウントはどうなのか、あるいは全般に消費が手控えられているのかといった米個人消費の動向を知る手掛かりになります。経済環境が似たような推移を辿るのなら日本の消費動向を知る手掛かりにもなります。

素材株の動きもそうですが、なぜそのように動いたかについての背景を理解することはグローバル環境の中の日本株の動向を推量する手掛かりにもなります。

また、朝刊にあります「注目材料」も相場を見る上で重宝するはずですのでぜひご利用ください。

信用取引の買い残と売り残

2010/10/20 No.474

信用の買い残について、その増減と株価の推移を見た場合、単純化すれば次の4通りが考えられます。

(1)買い残が減少 株価は上昇
(2)買い残が増加 株価は下落
(3)買い残が減少 株価が下落
(4)買い残は増加 株価が上昇

信用の買い方は比較的短期的な収益を目指していますが、(1)のように短期筋の利益確定売りが進んで買い残が減る一方で株価が上昇しているケースは中長期的な資金が腰を据えて買っている可能性が高く、その後も強い相場展開が期待できます。

注意したいのは(2)のケースです。買い方は、下げた株価の反発を期待して買い続けますが、値下がりが続けば損失確定の見切り売りが、値上がりすれば利益確定や戻り待ちの売りが出てくる可能性が高く、株価の本格的上昇にはこうしたシコリがほぐされる必要があります。また、このケースでは中長期の投資家の売りに対して、短期筋が買い向かっている場合もあります。

見切り売りが出て買い残が整理されている段階が(3)のケースです。需給的には反発しやすい環境が整いつつあります。

本格的な相場上昇時には(4)のケースとなるのが一般的ですが、何らかの材料で短期筋が群がり買い残が急増したような場合は、急騰することがある反面、人気が薄れれば急落する危険もはらみます。短期勝負と割り切っての飛び乗りは、状勢不利と見れば早めに手仕舞う判断力と行動力を伴って初めて合理的な商いとなります。

相場上昇時に、買い残が増加するばかりでなく、売り残も増えるケースは腰の強い相場展開となる場合が多く、好取組を囃して人気株になる可能性があります。

信用の売り残に着目した場合、売り残の増加はその銘柄に対し目先的に弱気な投資家が増えていることを示しますが、いずれ反対売買で買い戻され株価を押し上げる可能性を残しています。買い残の増加はその逆となりますが、どちらの場合も相場の流れによって形勢は変化します。

ちなみに、信用の倍率(貸借倍率)とは信用の売り残に対する買い残の比率で、例えばそれが0.5倍という場合には下記のようになります。

【売り残】 1000万株(買い戻しされていない株数→将来の買い需要)
【買い残】  500万株(売り返済されていない株数→将来の売り圧力)
※買い残株数÷売り残株数=信用の倍率

一般的には、多かった買い残が減少(倍率の低下)するということは、それだけ将来の売り圧力が減少するということであり、カラ売りした人が相対的に増加すれば買い戻しを巻き込んだ相場上昇が期待できるということになります。

ただし、相場の流れによって、買い方と売り方の形成は変化するということは認識しておく必要があります。

尚、信用取引に関する公表データにはいくつかありますが、個別銘柄については日本証券金融が日々発表する貸借取引残高(証金残)と毎週第2営業日に発表される東証信用取引銘柄信用残(東証残)とがあります。※新聞には翌日朝刊に掲載。

証金残は前営業日における日本証券金融の融資と貸株の残高であり(速報性が高い)、東証残は前週末時点おける全ての信用残となっており、証金残は東証残の一部と見ることができます。

・貸借取引残高(証金残)  営業日毎
・東証銘柄別信用取引残高  毎週第2営業日(通常火曜日)
              ※オンライン証券では発表当日の夕方頃に反映。
・3市場信用取引残高(概算) 毎週第2営業日(通常火曜日)
・3市場信用取引残高    毎週第3営業日(通常水曜日)

東証が毎週第3営業日に発表するは3市場信用取引残高を見れば全体的な信用取引の動向を掴むことができます。一日早く発表される概算値(一般信用と制度信用の合計)の売り残や買い残の増減で相場全体の需給動向を把握し、翌日の確報値で信用倍率などを確認。個別残で銘柄の動向を調べ、日証金残で日々の需給の変化を掴むというのが一般的な利用の仕方です。

身近になってきたプログラム売買

2010/10/13 No.473

オンライン証券の情報・売買ツール(トレーディング・ツール)は目覚ましい進歩を遂げました。注文形態の多様化は一段落し、逆指値などはすでに一般化しましたが、例えばカブドットコム証券では以下のような注文形態も利用可能となっています。

【W指し値注文】
買い注文の際に、時価の上下で指値+逆指値ができる条件注文。例えば、時価700円の手持ち株の売却で「760円の指値注文を出しつつ、株価が680円まで下がったら指値を678円に訂正」といった設定が可能。

【Uターン注文】※マネックス証券では「リバース注文」
「300円で買って、330円で売る」 というように、買い注文の際にその銘柄の約定後の売り注文まで予約が可能。

【リレー注文】※同「連続注文」
「手持ちのA株を売って新規にB株を買いたい」 という場合の注文方法で、売り注文→約定確認→買い注文という一連の操作が一度の注文発注で設定が可能。

【時間指定注文】
価格及び時間を指定して発注し、指定した時間に残数量がある場合、残数量分は成行となる注文。

また、個人投資家でもプロのトレーダーが利用しているような、銘柄とタイミングの選定及び発注を自動化したプログラム売買が利用可能となっています。

マネックス証券の「マネックストレーダー」では、100を超えるテクニカル手法等を用いて売買のタイミングや銘柄の選択等のルールを定め、それに従って売買することが可能です。「三山」や「はらみ足」といった特定パターンを抽出することも可能で、実践に移る前に過去のデータを使ってのバックテストでルールの有用性を検証することができます。

プログラムのカスタマイズ性がかなり高く、複数のテクニカル指標を用い、その初期値を変更してオリジナルな売買ルールを作成することも可能で、自動売買機能を使えばあらかじめ定めた戦略に従ってプログラムから自動的に発注することができます。

例えば、RSIの値が30%未満から30%を上回り、かつボリンジャーバンドの-2σ未満から-2σを上回ったときに「買い」シグナルを出す(あるいは「買い」注文を出す)、RSIの値が70%超から70%を下回り、かつボリンジャーバンドの+2σ超から+2σを下回ったときに「売り」シグナルを出す(あるいは「売り」注文を出す)といったことができます。

プログラムの実行間隔はチャートの表示間隔に沿うようになっており、日足チャートを表示している場合の実行間隔は1日に1回、5分足チャートを表示している際の実行間隔は5分に1回という具合です。

カスタマイズ性が高い反面、取っつきにくい面もありますが、自分で設定したルールに基づいて機械的に取引するプログラム売買は、一喜一憂して判断を誤るリスクを減らし、マーケットを注視している必要がないといったメリットがあります。

昔も今も変わらない投資の本質

2010/10/06 No.472

江戸時代の天才相場師、本間宗久が編み出したチャート分析法は、現在において日本のみならず、海外においても利用されています。そんな本間宗久が残したとされる「三昧伝(さんまいでん)」では、宗久の秘伝の大前提として仕掛けの重要性を次のように記しています。(現代語訳)

『商いはなんといっても仕掛けが大切で、仕掛けのタイミングが悪ければ何度やっても失敗することになる。
天井値段、底値段が出なければ忍耐強く何カ月も待ち、ここぞと思う時に果敢に出動することが大切である。「急いては事を仕損ずる」というが、決して急いではいけない。気持ちが急く時にはしならく待つのが得策。忍耐強く待ち、天底を確認して仕掛ければ利運に恵まれ損がない。
そして利が乗ってきたら、強欲をはらずに利喰い、次のチャンスが訪れるまで休むことが大切だ。「休む」ことは天底を知る上でも大切である。』

始め良ければ終わり良し等々、昔からスタートの大切なことを説いた格言は数多くありますが、宗久の秘伝もこれが大前提となっています。しかしながら実際の相場では、安易に仕掛けるケースが多々あります。相場が上昇してきますとつられて買いたくなってしまうものですが、宗久はそんな時に手を出すことをいさめています。

また、宗久は「休む」ことの大切さをしきりに説きます。相場の天底、節々を捉えるには待つ事と休む事、欲を離れ冷静さを保つということが大切で「買い・売り・休む」を一体として捉え重視しています(酒田三法)。

宗久はたくさんの有用な教訓を残していますが、今回はその中からいくつかをご紹介したいと思います。

『勝ちに乗るべからず』
見通しがピタリと当たり順調に上げてくると強欲に陥り、タイミングを逸して失敗することがよくある。勝ちに奢らず、手堅く利喰うのが上策。相場に強欲は禁物、ほどほどにすることが肝心である。

『天底三年』
(三年かどうかは別にして)相場には周期がある。それをよくよく見極めるべきで、周期を無視すれば利益を得ることは困難である。

『年中商い、利運遠し』
頻繁に商いしたり、常に建玉があると、自分の持っている銘柄にばかり気を取られ、冷静に相場の流れを捉えることができない。故に利運が遠のく。買えば儲かるほど相場は甘くなく、工夫と改善がなければ進歩もない。時々は商いを手仕舞い、休みを入れながら、相場の趨勢を見守り投資の仕方を検討するのが大切である。

『心動き騒ぐもの、損出るなり』
目先の動きに一喜一憂し、心が安まる時がない者は成功できない。相場のムードに連れて上だ、下だと心が動き、結局は損になるものである。また、急いでたくさん儲けようと一度に資金を投じてしまうと、相場の上げ下げに心が迷い、飛び付き買いに走ったり、下げ始めると慌てて売ってみたり、その度ごとに損が出る。急ぐべからず。

『前年の心を離れる』
前回のやり方を、検討もせずに次回の相場で踏襲するのは良くない。とかく同じやり方を繰り返す投資家が多いが、その時の相場環境や経済全般のことを考えて、新しい気持ちで取り組むべきである。相場には大中小の周期があり、水準や流れ、勢いもその時々によって違うように、局面ごとに手の出し方も当然違ってくる。一度成功したやり方でも、それにこだわってしまえば損に通じる。

『三度より商場なし』
仕掛けのチャンスは年に二、三回。商機は一年中毎日あるものではなく、辛抱強くその時を待ちながら冷静にチャンスを捉えたいものである。

以上、本間宗久が残した教訓の一部をご紹介させていただきました。その多くが昔から言われ続けてきたことであり、分かりきった事かもしれません。しかしながら当然の事ができないのが現実です。相場とは常に人間心理が反映したものであり、その意味では昔も今も変わりありません。だからこそ、繰り返し言われ続け今に残っています。

バリュー株投資再考

2010/09/29 No.471

~ 人、その見ざる所を見んと欲すれば、人の窺わざる所を視よ。
     その得ざる所を得んと欲すれば、人の為さざる所を修めよ。~

「バリュー株(割安株)」という言葉を耳にすることがあるかと思いますが、バリューの定義はあいまいで、PER(株価収益率)の低い銘柄をバリュー株と言ったり、配当利回りの高い銘柄もそのように呼ばれたりしますが、もともとはPBR(株価純資産倍率)の低い銘柄をバリュー株と呼びます。

企業の理論的な資産価値が実際の株式市場での評価が割安ならば、株価は理論価値に近づくというのが「バリュー株投資」の根拠です。

例えば株価300円で1株当たり純資産が350円の場合のPBRは0.85倍で、300円で購入後その会社が倒産しても全資産を株主に割り当てれば1株当たり350円の分け前(1株当たり50円の儲け)になるため、このような状態は長くは続かず、株価は350円以上になる可能性が高いというのがバリュー投資の論拠です。

昨日の終値ベースで、東証1部上場銘柄に限ってみてもPBR1倍を下回る銘柄は1000を超えており、実に東証1部上場銘柄全体の64%に達する現在はバリュー株投資に打って付けの相場環境と言えます。

ただし、そういった銘柄の中には株価が安くて財務内容も悪い「ボロ株」も含まれています。割安さに着目して投資してみても倒産してしまえば元も子もなくなってしまうため、財務内容が良い銘柄に対象を絞ることが大前提です。

そういった観点から少なくとも、PBRが1倍以下であっても赤字続きの企業は投資対象から外すべきです。赤字が資産を食いつぶす恐れがあり、株価は先読みするためPBR1倍割れの状態が続く可能性があります。

スクリーニング(条件検索)では、自己資本比率40%以上、配当利回り2%以上、ROE4%以上、PBR1倍以下などの条件でバリュー株を選別することが可能です。

ちなみに、業績が安定している大企業や収益の変動が小さい医薬品株、景気の善し悪しに関わらず一定の需要が見込める日用品などを扱う企業などがバリュー株投資に適しています。

バリュー株投資のメリットは下値不安が少ないことですが、下がらないということではありません。多少の変動には目をつぶる鷹揚さも必要です。また、そうした銘柄は不人気だからこそ割安になっており、そういう意味では上昇して大きな利益を得るまでには長い時間がかかる可能性が高いと言え、その点をバリュー株投資のデメリットと考える人もいます。

中長期に保有して大きな利益を狙うのがバリュー株の基本的な考え方であり、ウォーレン・バフェットも実践する投資の王道。中長期のスタンスを前提にしつつも、「バリュー株効果」と言って、今現在人気がある銘柄への投資よりも一見地味な割安銘柄への投資の方が相対的なパフォーマンスに優れるということはよく知られている事実で、遠回りのようでいて案外近道なのがバリュー株投資の魅力の一つです。

尚、低PERに着目して投資を行った場合、特に為替相場の変動の激しい現在のような経済環境下では、業績悪化あるいは見通しの下方修正によって、PERが急上昇してその面で割安ではなくなってしまうことが多々ありますので注意が必要です。

そうしたことを避けるためにも、決算書や有価証券報告書等で投資対象銘柄の事業の内容や事業環境、セグメント情報(事業別の収益状況)、事業のリスク(業績の変動要因)を確認しておくことが大切です。

投資対象としては、将来大化けする可能性を秘めている銘柄が魅力的ですが、そうした種を見つける上でも上記の確認作業は必須です。

ところで、上段でご紹介しました言葉は、中国の古典で道家的思想をつたえる「列子」の仲尼篇にある言葉で、現代語に訳せば『誰もまだ見たことがないものを見たければ、他の人が見ていないものに目をつけよ。誰もまだ獲得していないものを得たければ、他の人がまだやっていないことを始めよ』となります。

人と同じものを同じように見て、人と同じように行動していたのでは成果が上がりにくいのは自明の理です。

人気の銘柄は、多くの人が買っているという安心感もあって、自分も同乗すれば儲けにあずかれるような気がしますが、そう簡単には行かないのが現実です。度々申し上げていますが、人が目もくれていないところに大きな利益が潜んでいるものです。

イベント情報の確認と計画・実行・検証

2010/09/22 No.470

企業の買収・合併や増資、指数組み入れなど、個別銘柄の株価に影響を与える事象(イベント)の発生が予想される場合、現在の株価水準が近い将来修正されるだろうとの読みのもとに、そこから利益を得ようとする手法を「イベント・ドリブン戦略」と呼びます。

例えば、買収発生が見込まれる時、被買収企業の株式を購入すると同時に買収企業の株式をカラ売りする「リスク・アービトラージ」などがその例にあたります。

株価形成は一般的に複合的なものであり、イベント完了までには様々な展開やリスクが存在するため、イベント・ドリブンが必ず成功するとは限りませんが、この戦略は有効な投資手法の一つとなっています。

また、例えば株式分割や増資の発表、指数への採用等、株価に何らかの影響を与えそうなイベントの発生あるいは発表があった際は、市場はどのように反応しどのような株価形成が行われたかを調べ、知識を得ることができます。このことを「イベント・スタディー」といいます。

もう少し分かりやすい観点から、例えばオリンピックの開催やサミットなどのような世界的なイベント、新型ゲーム機の発表と発売、新しいサービスや制度の開始、政治的なイベント等々、これらは予めスケジュールが決まっており、事前であれば事の成り行きと株価形成のシナリオを想定し、事後であれば検証することが比較的容易です。

場合によりましては、イベント発生以前に期待先行で既に割高な水準だということもあるかもしれません。または、イベント発生時には話題になることが予想される銘柄でも、ムード先行で全体が下げるのと一緒に下落し、割安な水準になっているというケースもあります。

そういったことを具体的に考え、検証することは投資の幅を広げることにつながります。

話は変わりますが、引退後は年金のみでも生活できるという時代ではなくなりつつあり、否が応でも「自分の将来には自分が責任を持つ」ことが求められ、「将来の自分は今の自分が支える」必然性に迫られています。

そこでその手段として資産運用があります。資産運用は、資産形成と資産活用とに分けられ、その二つには一般的に下記のような違いがあります。

まず、資産形成とは、一定の収入のある人が毎月一定額を貯蓄や投資に回して長期的に資産の積み上がりを企図するのが典型例で、将来の資金需要に備えます。一方、資産活用とは、今ある資産を効率的に活用して維持と拡大を目指す行為となります。典型例としては退職後の資産運用のケースがあげられますが、この場合は運用以外での積み上がりが期待できないため、資産の寿命をできるだけ長く延ばすことを目的とするのが資産活用です。資産形成と資産運用とではどちらがリスク許容度が高いのか、一般的には前者です。

「投機」と「投資」という言葉がありますが、投機は「機=チャンス」に投じ、投資は「資金」を投じるということであり、言葉は二つですが字面的には同じ行為を違った角度から言っているに過ぎません。しかしながら一般的なイメージとしては、投機は一挙に儲けることを狙う行為であり、投資は計画的な資産運用の下で行われるもので、投機は時間と戦い、投資は時間を見方につける手法です。

形成と活用、投機と投資、いずれにしましても資産全体の設計図と配分、実行と経過評価、定期的な見直し、そして場合によっては修正が必要な時もあるかもしれません。こうした「PLAN・DO・CHECK」が行われてこその資産運用です。

計画と実行がちぐはぐだったり、自分が何をやっているのか分からないところにリスクは存在します。ご自身の運用方針やスタイルを見つめ直す際のヒントにしていただけましたら幸いです。

市場の動きの影響を排除する投資戦略

2010/09/15 No.469

今回は「マーケット・ニュートラル戦略」についてご説明させていただきます。マーケット・ニュートラル戦略は株価の歪みに着目した商いで、売り買いを同額・同時に執行(両建て)するため、マーケットに対し中立(ニュートラル)となります。

以前ご紹介した2銘柄間の価格差(スプレッド)に着目した「スプレッド取引(ペアトレード)や、同じく売り買いを同時に行う「ロング・ショート」も似た戦略ですが(一般的なロング・ショートでは買いポジションの方が大きいため、市場と同じようなパフォーマンスになる傾向があります)、売り買いの額をほぼ同額にして市場の動きに中立であることに重点を置いた戦略が「マーケット・ニュートラル」です。

「買い」オンリーの通常の株式投資では、良い銘柄でも市場全体が下がった場合、その影響を受けてしまうケースが多々ありますが、市場の変動の影響を排除しようとするところがこの手法のミソです。

デメリットとしては、相場全体が上昇した際に、買い銘柄オンリーの時ほどの利益の伸びを享受できないこと。二つの商い(売り買い)を同時に行うため手数料が高いことなどがあります。また、売りは主に信用取引を利用することになるため、信用取引の仕組みを理解しておく必要があります(逆日歩銘柄のカラ売りは避ける等)。

メリットは、相場が下落した場合、買い銘柄の損失を売り銘柄の利益で相殺できるため全体の下げに影響を受けにくいこと。通常の取引では個別銘柄に加え相場全体の状況判断が必要ですが、マーケット・ニュートラルでは相場全体の動きは無視できます。そして、上手く取引できれるようになれば通常の取引よりも利益を確保できるチャンスが広がります。

市場全体からの影響を排除して、どこで利益を得ようとするのかと言いますと、個別銘柄のミスプライシング(間違った値付け)に着目し、割高な銘柄を売り建てる一方で割安な銘柄を同額買い付けることで、互いのリスクヘッジを行うと同時に割高・割安の解消過程で損益を通算して利益を得ます。

売り買いの組み合わせであるため一方の損失を一方の利益が相殺するという点で相場全体の値動きに影響を受けにくい反面、利益・損失ともに限定される商いですが、銘柄選択が投資の優劣を決定するという点では通常の取引と変わらない面白味があります。

マーケット・ニュートラルの場合、銘柄が割高か割安かの判定が最も重要で、そういう意味では同業種で比較するのが最も一般的ですが、二つの銘柄を比較するアプローチとしては以下の4つが考えられます。※流動性の低い(普段の出来高の少ない)銘柄は対象外。

1)テクニカル(主に株価水準)に基づくもの
2)ファンダメンタルズ(PBRやPER等)に基づくもの
3)企業に関するサプライズ(予想外のニュース)が発生した場合の市場の反応を利用するもの
4)イベント(株価指数への組み入れ、株式分割等)によって誘発される相場の歪みを利用するもの

割高銘柄が割高であることを解消するには、下落あるいは指数が上昇してもあまり上昇しないことが必要で、割安銘柄が割安さを解消するという状態は、上昇あるいは指数が下落してもあまり下落しないことを言います。しかし、買った銘柄が下落し売った銘柄が上昇するというケースも考えられますので、通常の取引同様、最低限のロスカット(損切り)は欠かせません。

余談ですが、株式相場は長期的には上昇するという過去の経験則を踏まえ、買いは長期保有で利益増大を計り、売りは比較的短期的な行為となることが多いことから、買いを「ロング」、売りを「ショート」と呼ばれ、売り方の買い戻しのことを「ショート・カバー」と言います。

また、強気を「ブル」、弱気を「ベア」と言うのは、角で下から突き上げる牛に対し、掌で上から叩くという熊の姿を、強気派あるいは弱気派の投資家になぞらえており、牛と熊はニューヨーク証券取引所のシンボルにもなっています。

基本的な指標の見方と意味

2010/09/08 No.468

株式投資に取り組むようになって日が浅い方が多くいらっしゃるようですので、本日は日経新聞株式市況欄の「主要指標」に掲載されている基本的な指標の意味と一般的な見方を改めてご紹介させていただきます。

─【売買単価】───────────

この指標は、市場全体の売買代金を売買高で割ったもので、相場の流れが値ガサ株(高株価の銘柄)にあるのか低位株にあるのかを判断するのに適しています。よく似た指標の「単純平均」は全銘柄の株価の合計を全銘柄数で割ったものです。

例えば今朝の日経朝刊では東証1部の売買単価は633.0円となっています。これは昨日の東証1部では様々な銘柄が売買された結果、平均すると1株当たり633円程度の取引が中心だったことを意味しています。さらにその下に記されている売買単価6日移動平均(当日を含め過去6日間の平均値)と合わせて見ることで、物色の矛先が値ガサ株に向いているのか低位株に向いているのかを知ることができます。

ちなみに売買単価と日経平均株価の間には以下のような傾向がみられます。
(1) 売買単価の上昇は日経平均株価の上昇に先行する。
(2) 売買単価が上昇しないと日経平均は上昇しない。

尚、1999年から2000年にかけてのIT相場では売買単価が2400円台にまで急上昇しました。これは、ソニーやソフトバンクのような値ガサの銘柄が好んで売買された結果であり、このような単価上昇局面では値ガサ株の投資効率が良くなります。その後、ハイテク株の頭打ちとともにしだいに出遅れ感が強い低位の銘柄へ物色がシフトしていき、その段階では低位の銘柄への投資が相対的に投資効率が良くなります。

─【規模別指数】───────────

日経新聞には大型株・中型株・小型株の指数動向が掲載されており、これらの規模別指数は上場株式数に応じて区分され、時価総額に基づいたTOPIX(東証株価指数)の補完的存在です。尚、指数の分類は以下のようになっています。

大型株指数:時価総額及び流動性の高い上位100銘柄で構成
      ※大型株は東証市場第一部時価総額の約6割を占める

中型株指数:大型株についで時価総額と流動性が高い上位400銘柄で構成
      ※中型株は東証市場第一部時価総額の約3割

小型株指数:大型株・中型株に含まれない全銘柄が対象
      ※小型株は東証市場第一部時価総額の約1割弱

この数値の動向を把握することで物色の傾向、時価総額が大きい大型株人気か、時価総額の小さい小型株人気かが分かります。

─【大商い10銘柄占有比率】─────

先導株比率とも言い、その日の出来高上位10社が市場全体の取引の中でどの程度のシェアを占めたかを示しています。株式市場では集中と分散を常に繰り返しており、物色の潮目を判断するのに役立ちます。

占有率が高いときは物色対象がはっきりしているときであり、特定の銘柄に人気が集中しているときです。ただ、その水準が50%以上になりますと偏り過ぎであり、その後は買われる銘柄が徐々に分散し、割安な出遅れ銘柄等に物色の矛先が移ります。一方、占有率が20%を下回るようなときは、物色の対象が分散し、焦点が定まらない状況であると言えます。

─【値上がり・値下がりの銘柄数】───

この数値は騰落レシオを計算する際も使われますが、この数値と日経平均株価の関係には以下のような傾向があります。

(1) その日の値上がり銘柄数が値下がり銘柄数に対し4倍程度になると、指数は目先的に調整する可能性が高い(逆のケースでは反転上昇の可能性)。

(2)指数は小幅安でも、値上がり銘柄数のほうが多いときはその後の日経平均は上昇する可能性が高い(逆の場合は下落を警戒)。

さらに、日々の本誌無料版夕刊に記載しております「新高値・新安値の銘柄数」も相場の温度を計る際の参考になります。

─【NT倍率】─────────────

日経平均株価をTOPIX(東証株価指数)で割ったのがNT倍率です。NT倍率は日経新聞株式市況欄の「主要指標」に常時記載されるものではありませんが、日経でもよく取りあげる指標の一つですのでご紹介しておきます。

この指標についてご説明させていただく前に、日経平均株価とTOPIXの特徴を知っておく必要があります。

まず、日経平均株価は東証1部上場の銘柄から225銘柄を選んで算出した株価指数で、構成銘柄はハイテク株の比率が高くなっています。また、日経平均株価の算出方式は単純平均型で、二つの銘柄の上昇(下落)幅が同じであれば、指数に与える影響は同じになるというのが最大の特徴です。必然的にハイテク株など株価水準の高い(変動幅が大きい)値がさ株の影響を受けやすくなっています。

一方のTOPIX(東証株価指数)は東証1部全銘柄を対象に時価総額の規模に応じて株価を加重平均する算出方式が採用されているため、株価水準に関わらず時価総額が大きい金融株等の影響度が高くなっています。

二つの株価指数の特徴を踏まえ、相場の動向を判断するのに使われるのがNT倍率(日経平均株価÷TOPIX)です。具体的には日経平均の値上がり率がTOPIXを上回る場面ではNT倍率が上昇し、値がさ株が多い電機などハイテク銘柄が人気化している場合がこのケースにあたります。反対に日経平均に比べTOPIXの上昇が顕著な場合はNT倍率が低下し、時価総額が大きい金融株などを中心に物色されているケースです。

また、ハイテクなど外需株中心に軟調な時は倍率が下がり、銀行など内需株中心に軟調な時は倍率が上がり、どちらかの指数の動きが顕著でNT倍率が大きく変化しますとその後修正される傾向があります。

上記にあげました各指標は確認するのが簡単で、大まかな相場の流れを掴むには便利ですので皆様も時折確認してみてください。

大投資家の投資の考え方

2010/09/01 No.467

株式投資で巨万の富を築いたウォーレン・バフェットは、「価値」とは何かかについて、「将来の利益からみた現在価値よりも、安い価格で買える優れた事業」と述べています。つまり、実際の価値よりも大幅に割安となった状態が「価値」であり、それこそが投資の機会であるとしています。

ちなみに、相場の急変に対してバフェットは、そのことを予知したり予測するようなことに労力を使ってはいません。その代わりいくつかのシナリオを考えておき、もしそうなった場合の行動を予め決め、そして実行するのがバフェットのスタイルです。そのことをバフェット自身は「ノアの法則」と呼んでおり、「雨を予知しても意味はない。方舟をつくってこそ意味がある」と解説しています。

バフェットの他にも大投資家と言われる人がどのように相場や投資を認識しているのかについていくつかご紹介したいと思います。

◆(株式相場は)いつも同じサイクルをたどる。
相場が安い時は、割安をねらって一部の人が買いにくる。相場が上がり始めると、ファンダメンタル的に良いとかチャート的に良いとかいってさらに多くの人が買いにくる。
次の段階になると、上がるから買うということになる。そして最後に魔法の段階に到達する。人々はヒステリーのように買いたがる。相場は永遠に上がり続けると思うからだ。そして株価は合理的、論理的経済価値をはるかに超えてしまう。
全く同じプロセスが下向きにも繰り返される。
                       ~ ジム・ロジャーズ ~

ジム・ロジャーズは、ジョージ・ソロスとともにクォンタム・ファンドを立ち上げた人で、投資スタイルは状況に応じてロング(買い)とショート(売り)のどちらでも自在にポジションをとるというもので、対象は株式に限っていません。上記の言葉は、違った表現で他の多くの人も指摘している古今東西変わることのない相場の特性で、現在はどのような状況にあるのかについて考える際のヒントにもなります。

◆株式価値というものは、そこから何が得られるかによって決まる。
雌牛はミルクのため、雌鳥は卵のため。そして株はなんと言っても配当のためだ。
農園は果物のため、ミツバチははちみつのため。そして株はどう考えても配当のためだ。    ~ ジョン・バー・ウィリアムズ ~

◆たとえ千株しか買わないにしても、株主になるというのは会社の小口の旦那になるということです。
番頭である経営者がきちんと仕事をしているかどうかが、配当金の継続に現れます。その上で配当利回りが高いことが、投資対象にするには重要ですね。
借金があまり多くないこと、株価純資産倍率(PBR)が低いこと、そして過去の安値圏水準に近いことも重視しています。 ~ 竹田 和平 ~

竹田氏は言わずと知れた株式市場における大旦那で、上記の言葉は今の相場状況に対する一つの捉え方でもあります。

変動ランキングと出来高から見た投資のアイディア

2010/08/25 No.466

大きな値上がりや値下がりのタイミングを活かした投資のやり方は、最も一般的なやり方の一つです。

例えば、過去1年における上昇率ランキングは成長株などへの投資に活用できます。上昇率ランキングに登場する銘柄は、底値から大幅に上昇してきた銘柄であり、割安感はなくなっているかもしれませんが、成長性が評価されている可能性があるためです。

上昇率ランキングを利用して成長株への投資を考える際には、今期・来期ともに業績拡大が期待できることが前提条件となります。

また、このような銘柄の動きは長期の株価チャートで確認することが重要です。比較的短い期間の株価チャートで確認した場合、安値から見ればかなり上昇してきており上値余地が限定的に見えるものですが、より長い期間でのチャートを見てみますとさらに上を目指して新たな上昇波動の形成を期待できるケースが多々あります。

一方、過去1年における下落率ランキングはバリュー株(割安株)への投資戦略と位置付けることができます。下落率ランキングでは、大きく売り込まれた逆作用として割安さで買える銘柄があるためです。

下落率ランキングには、大まかに言って2種類の銘柄が含まれています。大きな上昇相場が終了した銘柄と、業績悪化や環境変化で売り込まれた銘柄です。

投資対象の選別に下落ランキングを利用する場合には、下落の原因が一時的で、しかも株価が過去の底値圏に到達し底堅さを見せており(長期の株価チャートで確認)、業績的にも底打ち感が出ている銘柄に注目するというのが堅いやり方です。PER(株価収益率)やPBR(株価純資産倍率)など、割安度を判定する株価指標を用いるとともに、事業環境と業績見通しをチェックすることが重要です。もちろん倒産の危険を孕む銘柄は除外することを忘れずに。

ところで、出来高は相場のエネルギーを示しており、出来高の増減は相場の過熱感を示す指標でもあります。

出来高の大きな変化は市場からの何らかのメッセージである可能性が高く、出来高の変化を投資に活かすやり方も一般的です。出来高が急増した銘柄は市場での人気が急激に高まった証しと捉え、そのような銘柄を投資対象にするやり方ですが、出来高急増も相場の局面によって意味が異なります。

例えば、大きく上昇してきた後で出来高が急増した場合には警戒が必要です。出来高が急増しながらも上昇幅が小幅にとどまった場合、上昇エネルギーの出尽くしで天井圏に達した可能性が高まります。出来高が急増した水準をあっさりと割り込むようなことがあれば、下落トレンドへの転換を疑う必要があります。一相場が終わったこの局面で買ってしまい、塩漬け株を増やしてしまうケースが多々ありますので気をつけたいものです。

反対に相当な安値水準で出来高が急増した場合には、「セリング・クライマックス」の可能性が高く、売り出尽くしで底値をつける可能性が高いと言えます。我先にと売りが殺到する中で、皆と同じように安値で売りたたいてしまったというケースもありますので気をつけたいものです。

いずれにしましても、安値圏で出来高が急増したら「注目」、高値圏で出来高が急増したら「警戒」という観点はおさえておきたいポイントです。

成功する人とそうでない人の行動パターン

2010/08/18 No.465

投資で成功する人(以下◎でご紹介)とそうでない人(同●)にはそれぞれに特徴的な行動パターンがありますが、今回はそのいくつかをご紹介させていただきますので、自身の投資行動を振り返る際に参考にしていただければ幸いです。

<行動パターン1>・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
◎ 最も重要なことは元本を減らさないことだと強く信じている。
● 大きな利益を得ることこそが投資の目的。結果としてよく大損をする。

<行動パターン2>・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
◎(考え方1の結果として)リスク回避的である。
● 大きな利益は大きなリスクをとってこそと思っている。あるいは、大きなリスクをとっていることに気づかない。

<行動パターン3>・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
◎ 自分なりの投資の基準やルールをもっている。
● 自分に合った基準やルールを持たない。 実証もせずに他人のやり方を真似る。

<行動パターン4>・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
◎ 投資対象は自分の理解できる範囲のものに絞る。話ではなく事実に基づいて投資を行う。
● 儲かれば何でも良いと思っている。事実を知る努力を怠り、話のみで投資を行う。

<行動パターン5>・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
◎ 自分の基準やルールに適した投資対象や投資機会がなければ行動しない。それが見つかるまで待てる忍耐力を持っている。積極的に調査を行う。
● 宝くじのように安易に儲かるやり方や耳よりな情報を探して動き回り、よく調べることなく頻繁に売買する。自分のやっていることについて深く考えたことがない。

<行動パターン6>・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
◎ 決めたらすぐに行動に移す。
● ぐずぐずして、チャンスを逃す。

<行動パターン7>・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
◎ 自分自身についてもいかなる予想についてもあてにならないことを認識しており、自分で決めたルールに従って手仕舞うため、感情に左右されることがない。間違いはすぐに正し、その結果、小損ですむ。
● 欲得や感情に左右された売買を行いがちで、失敗した投資に長くしがみつく。間違いを正すことができないため、損失を拡大させてしまう。

<行動パターン8>・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
◎ 間違いを学習経験として活かし、同じ過ちを繰り返さない。
● 当たり・ハズレで投資を考えているため、経験から学ぶことがない。結果、同じ間違いを繰り返す。

八百屋の法則

2010/08/04 No.464

売り買いをするということは、キャシュポジション(現金比率)を変動させることでもあります。

多くの場合、株価が下がったのを見て弱気になって売りに走ります。そして、株価が上がったのを見て強気になって買いに走ります。しかもそれらのことはずいぶんと経過(上昇・下落)してから行われがちです。

これをキャッシュポジションの観点から見ますと、高値で目一杯資金を使い、安値で現金比率を高めているということになりますが、お分かりのように本来は逆です。

高く仕入れて、安く売っているようなもので、これでは儲かりません。皆が買っているから(売っているから)という理由で売買するのなら、それは負け組への一本道です。

「人の行く裏に道あり、花の山」の格言のように、市場心理が一方に傾いている時に反対の投資行動をとれれば大きな利益を得ることができます。

「相場は悲観の中に生まれ、懐疑の中で育ち、楽観と共に成熟し、幸福感とともに消えてゆく」

過去5年の日経平均株価のチャート(下記)を見てみますと、高値は1万8300円、安値は約7000円です。現在は安値からの戻り過程にあり、相場はまだ「懐疑の中」(上記格言)にあります。

下を見れば現在の水準から2割の幅に過ぎず、上を見れば現在の水準の約2倍。もっと遡ったチャートもお付けしましたが、つまり現在は安値圏にあるということです。この水準で悲観的になった場合、メリットよりもデメリットの方が大きく、得るものは少ないということを過去のデータが示しています。

悲観的な意見がどうしても気になると言う方は、キャッシュポジションを高め、下落に対する手当てをしておけば済みます。ただし、過度の強気と同じように、過度の弱気も、その代償は大きいということは認識しておく必要があります。

個人としては、中長期的観点からこの水準から再度前回の安値を見にいく可能性よりも、上に行く可能性の方が高いと見ており、さらなる下落を待った場合はタイミングを逸し機会損失につながる可能性が高いと思われます。まだ安値圏にある現在は、下げた場面を狙って株式の比率を徐々に高める時期にあると考えます。

商売の鉄則は安く仕入れて、高く売ること。過度に悲観的になったり、過度に強気になる必要はありません。魚屋でも金物屋でも構わないのですが、仮に「八百屋の法則」と名付けます。要は安く仕入れて、高く売れば儲かるということです。八百屋はモノが腐らないうちに売り切る必要がありますが、株式投資はじっくりと高値を待つことが可能であり、その点では八百屋よりも有利です。

相場をコントロールすることはできませんが、キャッシュポジションをコントロールすることは可能です。現金比率を高める時か否か、チャンスの際の種銭はあるかどうか、裏目が出た場合に窮地に陥らないかどうか等々、売りや買いをキャシュポジションで考えることが重要です。

トレンド転換を確認するツール

2010/07/28 No.463

相場が上昇する際は直前の高値を更新しながら上昇トレンドを形成します。反対に下落相場では直前の安値を更新しながらの動きとなります。

上昇トレンドが下落に転じる際は、上昇傾向を続けた株価が前日の安値を割り込むようになり、さらにその前の安値を下回るといったそれまでと逆の流れとなります。下落トレンドが転換する場合は反対で、安値更新を続けてきた相場が前の高値、その前の高値を次々に抜いていきます。

今回ご紹介する「新値足」は、上記のような相場の転換をつかむ際に利用されるテクニカル手法の一つです。

新値足は日本で生まれた分析手法で、横軸に時間の観念が入らない非時系列チャートです。変動そのものに相場の真の姿を見出そうとする考え方の下に、目先の小さな株価変動に惑わされることなく、相場の転機を知る指標として投資家に広く利用されています。

描く際に必要なデータは終値のみ。終値ベースでの高値あるいは安値を更新する度に陽線(白抜き線)あるいは陰線(黒線)を隣の行に描き足していきます。※新値足の「新値」とは直近の高値あるいは安値を更新した際の値であり、もう少し長い期間で捉えられる一般的な「新値」とはニュアンスが異なります。

よく使われる「新値三本足」を例にしますと、陽線が陰線に、陰線が陽線に転換する際のルールは、過去3本の線の下限を下回った時に初めて隣の行に陰線が描かれ、過去3本の線の上限を上回った際には陽線が立ちます。

描画に関する約束事は上記2点。つまり上昇中は高値を(下降中は安値を)更新した際にのみ新しい線を描き足してゆき、反対方向の動きで直前3本の安値(高値)を抜けた際に初めて逆の線が描かれる(陽転または陰転する)というものです。

株価が小幅な範囲でもみ合っている時は描画されないため多少の反対方向の揺さぶりは無視されることになり、相場がある方向に動こうとする力だけを捉えるていることになるため、トレンドの転換を的確に捉えることができるとされています。

新値足の判断ポイントは陽転と陰転にありますが、経験則から概ね10本程度(ダマシを除く)の連続の後、逆の線がでればトレンド転換と判断されます。陽転または陰転がダマシとなるケースもあるため、反転後の2本連続の陽線または陰線の出現を待って判断するのがより確実です。

なぜなら、今までの動きに逆行する際は、懐疑的な投資家の動きでそれ以前の相場に戻ろうとする力が強く働きますが、2本連続で同じ線(陽線ないしは陰線)が描かれるということは反対の動きを吸収しながら新値を更新したことを意味しているからです。

※ダマシ
結果として嘘のサインで、新値足の場合は陰線連続の後に陽線が出現して陽転しても、その後すぐに陰線が出現して陰転してしまうケースなどです。

新値足には、三本足の他、五本足、十本足などがあり、数が多くなるほど長期のトレンド分析に向いています。三本足は中期トレンドの判断に向いている反面、ダマシが多く、五本足、十本足と数が多くなるにつれダマシは少なくなりますが、転換点を捉えるタイミングが遅くなるという欠点があります。

尚、新値足チャートはオンライン証券の有料情報サービス等で表示させることが可能です。

相場の勢いを計るモノサシ

2010/07/21 No.462

相場の「勢い」を知るための客観的な手がかりとして、上下の振幅の度合いで強弱を示すオシレーター系分析手法の「モメンタム」をご紹介したいと思います。※モメンタムとは、勢いや推進力といった意味。

モメンタムの算出方法は、数あるオシレーター系のテクニカル指標の中で最もシンプルで、現在の株価から過去の株価を引くだけで求められます。例えば25日間のモメンタムを求める際は、今日の終値が500円で、25日前の終値が450円であった場合、計算式は500-450=50となります。この値を点としてつなげたものがモメンタムのグラフとして表示されます。

当然、過去より現在の株価が高ければモメンタムもプラスとなり、逆の場合はマイナスとなります。一定日(週)前の株価と現在の株価を比べた場合の変動幅の大小がそのままモメンタムに反映されます。単純な計算式で求められた指標ではありますが、相場の勢い(エネルギー)とその微妙な変化を捉えるには適した指標と言われます。

モメンタムの一般的な見方は、基準ライン(ゼロライン)を下から上に突き抜け右肩上がりとなれば相場の上昇の勢いが増していることを示し、反対に基準ラインを下に抜けて下方を指向すれば下落に拍車がかかっていることを示しています。

株価が上昇しているのにも関わらずモメンタムが横ばい傾向に移行するような場合は、株価の上昇の勢いが鈍ってきている証左であり、反対に相場が下落しているにも関わらずモメンタムが下値切り上げの展開となっている時は下落エネルギーのピークが過ぎたことを示唆しています。このような相場と指標の背反を「逆行現象」あるいは「離反の原理」と呼びます。

基準ラインの下から上に抜けた時が買いサイン、上から下に抜けた時が売りサインとするとの説明もありますが、実際にこれのみを売買のサインとするのには難があります。理由の一つは、オシレーター系の宿命として「ダマシ(結果的に無用のサイン)」が多いということ。もう一つが、実際の株価の変動が大きくなればモメンタムの振幅も大きくなってしまいトレンドの方向性が分かりにくくなる可能性があるためです。

実戦ではモメンタムを指標として参考にしながら、モメンタムに逆行が生じた際はそれまでの相場の流れや勢いに変化が訪れる可能性が高いと考え、トレンドラインからの逸脱、節目の突破、移動平均線とのクロスやカイリ率、天底形成時の相場パターンなどを確認してから「転換」を判断します。

なお、モメンタムと同じ考え方のテクニカル指標にROC(Rate Of Change)があります。

モメンタムが変動幅を用いるのに対し、ROCは「当日の終値÷N日前の終値」で求められる変動率を用います。モメンタムと同じような曲線を描きますが、株価水準が高くなれば振幅も大きくなるというモメンタムの弱点が改良されています。

それでもモメンタムが指標として生き残っているのは、相場の勢いが増しているのかそれとも減退しつつあるのかを感覚的に掴みやすいためです。

また、一般的なオシレター系の指標では、極点が相場の天底と一致する傾向があるのに対し、モメンタムは相場に先行して天底を示唆する(逆行する)ケースが多いのが特徴です。そのことは「ダマシ」と表裏一体ということでもありますが、相場の勢い(エネルギー)の変化を、相場の基調の変化の前に捉える(売買のタイミングが近いことを感覚的に掴む)ために利用する運用担当者は少なくありません。

ちなみに、上昇した銘柄を買い、下落した銘柄を売るといった順張りで投資を行うことを「モメンタム戦略」と呼ぶこともあります。

カイリ率と相場の関係 ~バンドワゴン効果~

2010/07/14 No.461

移動平均線と株価の関係にはいくつかの法則性がありますが、大幅な乖離(カイリ)は必ず修正されるということも法則の一つです。
ちなみに過去1年の日経平均株価の動きと25日移動平均線とのカイリ率の関係を見てみますと(下記)、日経平均株価は概ねプラス5%(カイリ率)とマイナス5%(同)の範囲内で推移しており、イレギュラーとして一時マイナス10%までカイリ率が拡大しています。→ http://www.aqua-inter.com/special/461h.html
相場の動きとカイリ率との関係を見るとき、上記の図のようにカイリ率がある程度拡大した後、その反動としてカイリを縮小する動きが見られます。こうした高カイリ修正の動きは、相場解説などではよく「自律反発・自律調整」あるいは「テクニカルな動き」などと表現されます。

株価(指数)とカイリ率については、一般的には下記のようなことが言えます。
◎25日移動平均線とのカイリ率がプラス5%以上になったら反落を想定する。
◎ 同         プラス10%以上の時に買わない。
◎ 同         マイナス5%以下になったら反発を想定する。
◎ 同         マイナス10%以下の時に売らない。

尚、カイリが拡大した際に動きが鈍くなり、相場が「足踏み・横ばい」で推移することで高カイリが修正される場合もあります。この場合は縦(値動き)での調整ではなく、横(日柄)での調整となり、一般的に「日柄調整」と呼ばれます。

ところで、下記質問についてどのような回答が多いか想像してみてください。
・あなたはベストセラーという理由で本を買ったことがありますか?
・客のいるレストランと客のいないレストランではどちらに入りますか?

ご想像のとおり、ベストセラーという理由で本を買う、客のいる方のレストランに入る、というのが人の心理です。これは他人の動きに追随することで自己を正当化(将来の後悔を回避)しようとする行動です。
経済学ではこれを「バンドワゴン効果」と呼びます。バンドワゴンとは行列の先頭をいく楽隊車のことで、「バンドワゴンに乗る」とは、時流に乗る、多勢に与するということを意味します。例えば、多くの人が買っているものは良いものに違いないという思い込み(買い物に失敗したくないという心理)がこうした消費行動につながると考えられています。
このような心理が、相場では「買いが買いを呼ぶ」あるいは「売りが売り呼ぶ」展開となって現われます。これが相場の天底でカイリ率が一時的に大幅に拡大する心理的背景です。

カイリ率は、大底や天井付近で高カイリとなることがありましても、それ自体が大底や大天井を示すものではなく、またそれのみで大きなトレンドやその転換を示唆するものではありませんが、大変有効な指標の一つです。
カイリ率を意識することは、急ピッチな上昇・下落に対して警戒を促し、高値で買ったり、安値で売ったりすることを回避するのに有効であるのと同時に、「押し目(上昇途中の下げ)」や「戻し(下落途中の上げ)」を待つ際にも大変役立ちます。

マージン・オブ・セイフティ

2010/07/07 No.460

株式投資で巨万の富を築いたウォーレン・バフェット。その彼の市場に対する捉え方の底流には、以下の三つの観点があります。
まず一つは、市場は常に(あるいは多くの場合)間違っているということ。
次に、市場がどのように変化するかについては予測できないということ。
第三に、市場に影響されるととんでもないことになるということ。

市場は、例えて言うなら病的な気分屋で、正気とは思えないような安い価格がつくこともあれば、ばかばかしい高値で取引されることもあります。そうした歪みは必ず修正されるものですが、それがいつ・どのくらいの幅で為されるかについては予測不可能とするのがバフェットの市場に対する態度です。
バフェットが経営するバークシャー・ハサウェイの年次総会等で投資戦略が語られる時、市場価格に対する予測が全く出てこないのはそのためです。
では何を基準に投資を決定するのか・・・それは投資対象の価値が割安か否かです。バフェットは、株価がその企業価値を大きく下回った時にのみ投資を行っています。
バフェットの考えでは、市場の動きは予測できないものであり、市場の動きに付き合うつもりもなければ、気にする必要もないということになります。単に、割安な価格なら行動する。でなければ行動しない。これがバフェットの行動原理となっています。
バフェットは、自身のこうした投資スタイル(かなり割安な水準でしか投資を行わない保守的な姿勢)を「マージン・オブ・セイフティ(安全余裕度)」という言葉で説明しています。
株価が本来の価値を大きく下回った時に買えば、以前の高値にまで戻らなくても、株価が適正価値を回復するだけで利益になるという考え方であり、投資の安全性を高めた上で利益を増大させるやり方です。
市場の動きを無視して割安になった時にだけ投資を行うというのは、リスク回避にもなっており、バフェットはそれを「利益は買ったときに出ている」と表現しています。
足元の東京市場を眺めれば、東証1部全体のPBR(株価純資産倍率)は1倍そこそことなっており、個別銘柄を見ればPBR1倍割れの(解散価値を下回る)銘柄が6割を超える有様です。解散価値よりも低水準にあり、しかも過去1年間の高値と比べますと大幅に下げた水準にあります。言い換えますと、年に1回あるかないかのビッグチャンス(非常に割安な価格で買えるチャンス)が訪れているということです。
現在の相場状況を喜んでいる人がどのくらいいるかは分りませんが、ちなみに以前、相場が急落してかなりの割安な水準にあった時、バフェットは自身の心境を「売春宿に踏み込んだ性欲絶倫男みたいな気分だ」と表現しています。

分散投資の限度とジョージ・ソロスの黄金律

2010/06/30 No.459

性格の違う複数の銘柄への分散投資、その効用は洋の東西を問わず昔から言われていることです。例えば、ハイテク銘柄と内需関連の銘柄とを持つ場合のように、値動きの違う銘柄に資金を分散することでリスクを抑えるという考え方です。
分散投資と言いましても、あまりに手を広げ過ぎ、結果として管理が行き届かなってしまえばデメリットの方が大きくなってしまいます。
マネープランに基づく資金管理(総資産に占めるリスク資産の割合やその増減、現金比率等)や銘柄管理(タイミング判断も含めて)ができていれば投資対象が多くても問題はありませんが、一般的に保有銘柄が増えれば増えるほど資金管理や銘柄管理をしなくなり(できなくなり)、必然的に対応が後手後手に回ることになります。
もちろん、たくさんの銘柄について管理・判断が可能であれば保有数を限定する必要はありませんが、そうではない一般的な多くの投資家に関しましては投資対象を広げ過ぎの傾向があります。
100の銘柄に分散投資したケースと5銘柄に集中投資した場合で考えてみますと、分散投資の限度というのがよく分るかと思います。
100銘柄に分散投資した場合に(便宜的にすべて同じ投資金額と仮定)、その中の1つの銘柄が2倍に上昇したとすれば資産全体の価値は1%上昇します。一方、5銘柄で構成されるポートフォリオの中に同じ銘柄が含まれていれば資産は20%も増加します。100銘柄に分散したポートフォリオで同じパフォーマンスを得ようとすれば100銘柄中の20銘柄が2倍になるか、あるいは1銘柄が2000倍に上がる必要があります。つまり、2倍になる銘柄を1つ見つけるのと、2倍になる銘柄を20個見つけるのとではどちらが簡単かという問題です。
逆にポートフォリオの中の1銘柄が半分になった場合、100銘柄に分散した投資家の資産は0.5%しか目減りしませんが、5銘柄のポートフォリオにその銘柄が含まれていたとすればその投資家の資産は10%目減りします。
これが分散投資でよく言われる効用です。しかしながら、下がりそうもない銘柄を60個見つけるのと、下がりそうもない銘柄を3個見つけるのとではどちらが簡単かという問題(前述と全く同じ)に置き換えてみますと一般的に言われる分散投資の効用とは違った答えが出てきます。
投資とは、もともとが将来の不確実性(将来は不確定であるということ)に資金を投ずることであり、不確実性というリスクを避けては通れません。ウォーレン・バフェットを含め、投資で巨額の利益を手にした人に共通して言えることは、結果としての集中投資によるリスクを恐れないということです。彼らはリスクを恐れない代わりに、リスクと積極的に向き合い、能動的に避けるという点が一般的な投資家との大きな違いです。
ちなみに上記のような例は銘柄選択の方法が集中投資をもたらすのであり、自分の基準にあった(損する可能性が非常に低い)銘柄とタイミングを探すために時間とエネルギーを集中的に費やし(その状況が訪れるまで待ち)、基準に合えばこそ躊躇せずにリスクをとっています。
ここでは5銘柄への投資を便宜的に(それ以上の数と対比するために)集中投資と呼びましたが、5銘柄にこだわる必要はありませんし、もちろん5銘柄程度でもリスクを分散した投資は可能です。重要なことは、投資家それぞれに管理や判断が可能な銘柄数についてよく考えておくことです。ウォーレン・バフェットは「リスクとは、自分が何をやっているかよくわからないときに起こる」と言っていますが、管理できないほどに手を広げてしまいますとそのような事態に陥ります。
参考までに、ジョージ・ソロスも集中投資で巨万の冨を手にした著名投資家で、その父は彼にいくつかのリスク管理のルール(うち2つが下記)を授けました。このルールは今でもソロスの黄金律になっていると言われます。
1.リスクをとるのはかまわない。
2.リスクをとるのはかまわないが、すべてを賭けてはいけない。

15勝0敗 上昇確率100%

2010/06/23 No.458

2010年は選挙の年です。5月に行われた英総選挙、7月には日本でも参院選が行われ、10月にブラジルの大統領選挙、そして11月には米中間選挙が控えています。今回はこの米中間選挙と株価の関連性について触れてみたいと思います。

まず、中間選挙とは、大統領(任期4年)が就任して2年目に行われる選挙で、上院議員の3分の1と下院議員の全員が改選となり、同時に、任期が満了した州知事の選挙、各自治体の公職に関する選挙が行われます。そのため、大統領の属する政党(今回は民主党)の候補者が、中間選挙でどの程度当選するかによって、大統領の任期前半の施策に対する支持のバローメータとして捉えられます。
ちなみに、中間選挙を控えて内政が上手く進捗していない場合、国民の目を外に向けて人気を回復するための方策として、外国や外国企業を批判の対象にしてやり玉にあげる傾向があります。
さて本題の米中間選挙と株価の関連性についてですが、1950年以降(大戦後)、15回の中間選挙がありましたが、その翌年のNY株は例外なく上昇しています。つまり過去15回において、中間選挙の翌年のNY株は15勝0敗、上昇確率100%で、投資で儲けるには最も確実性の高い時期となっており、中間選挙の年の安値から翌年の高値までの平均上昇率は49%に達します。
尚、過去15回の中間選挙の年において、安値をつけた月は1月が5回、3月、4月、5月がそれぞれ1回、6月が2回、8月が1回、10月が4回となっており、1月と10月に安値をつける傾向があります。
今年については今のところ6月8日につけた9726ドルが安値になっていますが、今年の最安値はこれからだとする意見はニューヨークの市場関係者において少数派です。その根拠は、PER(株価収益率)から見て現在のNY株は歴史的な安値水準にあるということです。
1985年以降のデータで、NY株はほぼ例外なくPER15倍前後の水準が下値となり反発しており、現在のS&P500種指数採用の主要企業の今期予想PERは13倍で、ここから株価が大きく下がりPERがさらに低下する可能性は低いと見られています。
中間選挙の翌年の相場が上昇する要因としては、大統領は就任して前半の2年間で内外の難題をこなし、再選を目指す3年目以降に人気を回復しやすい(消費者や企業にとってメリットがあり、経済成長も期待できる)経済政策を打ち出す傾向があるためです。
なお、米議会では法案通過に専門の委員会が大きな影響力を持っており、委員会で絶対的な裁量権を持つ委員長には上院・下院ともに過半数議席を獲得した政党の委員が就任します。つまり、米議会において、安定的な政治運営の見地から、大統領の属する政党が過半数を維持することが重要視されます。
ところが、今月行われた米ギャラップ社の世論調査では大統領の支持率は就任以来最低の44%に落ち込みこみ、中間選挙についても現段階では民主党劣勢・共和党優勢との見方が大勢です。しかしながら、これは必ずしもマイナス要素ではありません。
オバマ大統領はグリーンニューディールなどの景気刺激策を打ち上げる一方で、国民皆保険制度の導入を図るための医療保険改革法案を成立させ、新たな金融規制法案の成立を目指しているように、歴史的にみて大きな政府を指向する民主党の政策は、環境問題や人権・福祉に関して積極的で、弱者や中小企業の救済に傾き、対外的には保護主義的な色彩を帯びています。対する共和党は、経済面で市場原理主義・新自由主義の立場を取り、環境問題や福祉政策よりも経済効率や大企業の利益を重視する政策をとる傾向があります。
つまり、今の市場で望まれているのは共和党の政策で、中間選挙で共和党が過半数を獲り法案の主導権を共和党が握ることになれば、市場は好感すると見られています。

もちろん上記は必ずこうなるというものではありませんが、東京市場が米株式市場の影響を強く受けることを考えれば、こうしたことも念頭に置いて然るべきです。すぐの成果を望むよりも(「急げばつまずく」を避け)、中長期スタンスで安いところをコツコツ拾って種蒔きをしておくのが得策です。

上がってよし、下がってよしの株価かな

2010/06/16 No.457

会社四季報にはその企業の特色、強みや留意点、業績の推移、配当金、先行きの見通し、株主の分布、財務情報や設備投資額などが簡潔にまとめられており、言わば性能や特色が簡潔にまとめられているカタログ、または企業の通信簿のようなもので、インターネットが普及した現在でも投資家必須の投資ツールとして利用されています。

ちょうど今回は会社四季報の夏号が発売されたばかりですので、四季報の「業績欄」と「コメント欄」について簡単に触れておきたいと思います。

四季報の「業績欄」は企業業績について確認する欄ですが、予想数値は四季報独自の予想となっており、会社側が発表した業績予想と比較して差がある場合にはコメント欄の前半部分で「会社計画は過小(過大)」などとして四季報側の判断により増額(減額)したことを示しています。

また、「コメント欄」には、業績拡大に貢献する可能性のある技術を持っているかどうか、業績向上に貢献する新たな事業展開をしているかどうかという点等、魅力的な企業を探す上で大切なポイントがコンパクトにまとめられています。

四季報で例えますとその企業の特徴が書かれた「特色」の欄や、今後の業績見通しや新しい技術や事業展開について書かれた「コメント欄」は、その企業の今後を占う上で重要な記事が書かれています。

コメント欄に「飛躍」「好調」「期待」などと記載された企業も要注目です。
新技術や新製品の開発、新規事業への参入も好材料となるケースも少なくありません。ちなみにコメント欄の前半部分は主に業績のことか書かれていますが、後半部分には将来の業績や株価に影響しそうな株価材料の最新情報が並んでおり、その部分は「材料欄」と呼ばれています。

ちなみに日本におけるバリュー投資の先駆者、和製グレアムとも呼ばれる竹田和平氏氏(「タマゴボーロ」で有名な竹田製菓の会長)は「投資に必要な情報は会社四季報で十分」としています。

その理由については「将来のことなど分かりません。だから私は直近のバランスシート(貸借対照表)を見て投資しています。つまり四季報です」と言っています。

もちろん竹田氏自身が経営者であるため、経営者の視点から見た企業の実力を計る洞察力も優れてるからこそではありますが、「余計なものを見るといろいろ心配になるから」とも言っています。※心配=心の動揺=一喜一憂

「上がってよし、下がってよしの株価かな」

上記は竹田氏の言葉ですが、その心は「株価上昇(買いたい人が増える)=自分が売って嬉しい=買いたい人も喜ぶ」「株価が上がればもちろん嬉しいが、下がっても買い増しのチャンスだから嬉しい」とのことです。

まさにこれは株式投資の一つの理想形と言えるのではないでしょうか。

一方だけを見るのではなく両面から吟味

2010/06/09 No.456

市場では好材料・悪材料のどちらか一方に注目が集まる傾向があります。そうした材料やニュースに反応して相場は常に変動しますが、どのように動きましても買う人と売る人の両方が常に存在しています。

つまり、悪材料で売る人が多くても、その下げた局面を好機と捉える投資家がいるということであり、反対に好材料で買い注文が増え、その上げたところを売りの好機と捉える人がいます。

市場には悪材料と好材料が混在しいますが、それらは見る角度によって受け取り方が違います。悪材料でありましても、それによって恩恵を受ける業界や企業がないか、あるいは行き過ぎた下落によって株価がディスカウント状態になっていないか・・・等々。市場全体に好材料が出た場合でも、それによって悪影響を受ける業種はないか、あるいは行き過ぎた上昇によって株価が割高になっていないか・・・等々。つまり一つの材料は、プラスとマイナスの両面から吟味が可能だということです。

株式投資では、「皆で渡れば恐くない」は大きなリスクを伴います。雰囲気に流され、皆と一緒に行動を共にする(相場に追随する)ことは、期待と反対の結果となりがちです。

「人も我もで 相場は天底をつける」

上記は相場格言の一つですが、その意は・・・、
相場がまだ若い時というのは物色の柱がはっきりしているものですが、天井圏に入ると物色の対象も広がりだします。多くの投資家が強気に転じ、「人も我も」で誰もがさらなる上値を期待した時に相場は天井となります。

反対に、止まらない下落に恐怖を感じ、もっと下がることへの不安で「人も我も」で売りを出した時が相場が底を打つ時です。

上がるから買っているのではなく、買うから上がるのであり、下がるから売っているのではなく、売るから下がっているという状況の一面を意識することが大切です。

風になびく幡(はた)について「是れ風の動くに非ず、是れ幡の動くに非ず、任者が心動くのみ(風が動くのでもなければ、幡が動くのでもなく、汝らの心が動くのだ)」という有名な禅の公案があります。

その事象を捉えた心の動きがなければ、幡の揺らぎも風の動きさえも存在しないのではないか・・・つまり目に映る何事も心の動きに過ぎない。この公案が本間宗久が相場道に開眼したきっかけとなったそうです。

相場を動かすのは材料でもなく、水準でもない、そこにいる人の心こそ重要な要素です。

移動平均線の意味と特徴

2010/06/02 No.455

前回は「グランビルの法則」をご紹介しながら株価と移動平均線の関係について一般的な傾向をご紹介いたしましたが、今回はその移動平均線の特徴についてもう少し詳しくご説明させていただきます。十分に理解しているという方も復習の意味でおつきあい頂けましたら幸いです。

移動平均線とは、ある一定期間の終値の平均値に過ぎませんが、日々上下している株価の動きを平滑化すことで株価のトレンド(方向)を描画しています。

また、移動平均線は、市場参加者の「平均的な売買コスト」でもあります。
言い換えますと、過去一定期間の投資家の平均的な「トントンのライン」というのが移動平均の水準です。

そのため、株価が移動平均線を下回る水準、例えば株価は25日移動平均線を下回っているとすれば、過去25日間における平均的な市場参加者は損失を被っている状態と見なすことができます。反対に株価が25日線を上回って推移していれば、過去25日間における市場参加者は平均的に利益を上げていると見てとれます。

自身の投資経験を振り返ってみて頂きたいのですが、一般的に利益になっている時には投資に積極的(強気)になり、反対に損失になっている状況下では投資に消極的(弱気)になるのではないでしょうか。実際にそうであるため、株価が移動平均線の上に位置するか下に位置するかは相場の状況を判断する上で重要なポイントとなります。

もう少し具体的に言いますと、相場の下落がしばらく続いた後というのは、トントンであれば手放したい、そう思う投資家増えます。そういった状況により、下落から上昇に転じた場合に、平均的な買いコストである移動平均線の水準に株価の上値を抑えられるケースがあります。そういった意味からも株価が移動平均線を上抜くことができるかどうかというのは相場にとっての一つの試練となります。

その後も上昇してきた株価は、途中途中で休みを入れながら相場を形成していきます。株価が堅調になってきますと今度は、もう一度安くなれば買ってみたい、あるいは前回買った値段になれば買い増したいと思う投資家が増えてきます。それがために平均的な買いコストである移動平均線の水準では買い待ちが増え、結果的に移動平均線が下値支持線の働きをします。しかし、そうならない場合は、それだけ売り圧力が強いということになります。

なお 移動平均線は一定期間の平均値であるという性質上、短期線(例えば日足チャートの25日線や週足チャートの13週線)は中期線(例えば日足チャートの75日線や週足チャートの26週線)よりも株価の動きに敏感に反応するという特徴を持っています。

しばらく下落が続いた銘柄の株価チャートは、下から株価、短期線、中期線の位置関係で、それぞれ右下がりで推移しています。

そして、右下がりだった株価がある時点で上昇に転じた場合、まず株価が短期線を上抜くことができるかどうかが注目され、さらにその位置関係を維持できるかどうかが重要ポイントとなります。下から短期線、株価、中期線という関係が維持された場合、右下がりであった短期線が横ばいに変化し、株価が堅調であれば短期線もしだいに右上がりへと変化していきます。

このように相場の動きとともに、まず株価と短期線と位置関係が変化し、短期線の方向性も変化します。そして次の段階では、株価が中期線を上抜けることができるかどうかが注目されます。上昇トレンドにある銘柄は、株価の一時的な下押し局面(押し目買い好機)はあるものの、中期線の上に短期線、その上に株価という位置関係が成立します。それが「上昇トレンド」と言える状態です。

グランビルの法則とバーゲンセール

2010/05/26 No.454

相場変動の基本的習性とも言える「グランビルの法則」を、再確認の意味で下記に概要を掲載させていただきます。

<グランビルの法則> http://www.aqua-inter.com/special/454h.html

◆上昇のサイン
1.しばらく下落傾向を続けた移動平均線が、横ばいから上向きに転じようとする場面で、株価が移動平均線の下から上に突き抜けた時。

2.移動平均線が上昇基調に変化がない中で、株価が移動平均線を一旦下回るもののすぐに移動平均線の上位を回復するような時。

3.株価が上向きの移動平均線の上位にあり、下げるか横ばいで移動平均線に近づく動きを見せますが、移動平均線を割り込むことなく再度上昇に転じるような時。

4.下落トレンドの中にある株価が、同様に下降傾向の移動平均線から、大きくかけ離れて下落した場合。

◆下落のサイン
5.しばらくの上昇の後、移動平均線が横ばいもしくは下落基調になりつつある場面で、株価が移動平均線を下抜けた時。

6.移動平均線の下落傾向が続いている場面で、株価が移動平均線を上回った時。

7.下向きの移動平均線の下位にある株価が、上げるかほぼ横ばいで移動平均線に近づく動きを見せますが、移動平均線を上に突破することなく再度下落に転じた時。

8.上昇トレンドの中にある株価が、同じく上昇傾向の移動平均線から、大きくかけ離れて上昇した時。

上記は、相場変動において経験則上そうなる可能性が高いという習性の一つで、株式投資を行う上で念頭に置いておきたい知識の一つです。

ところで、足元の相場はわずか2カ月半で日経平均株価がおよそ2千円の急落(5月25日現在)となり、市場は不安心理で覆われていますが、PBR(株価純資産倍率)から見れば数年に一度のバーゲンセール状態となっています。

ちなみにPBRとは、株式の時価を一株当たり純資産(資本金や剰余金などの合計)で割ったもので、PBR1倍で企業の理論上の解散価値を表します。

東証1部に上場する全銘柄の平均PBRは、5月25日現在で1.07倍となっており、この水準はバブル崩壊後の最安値となった2009年3月10日時点(日経平均株価7021円)をわずかに上回っていますが、それ以前の大底だった2003年4月(日経平均株価7603円)のPBR1.18倍を下回る水準です。2003年4月にしましても、2009年3月にしましても悲観一色の状態でしたが、そんな中で相場は底を打ち、その後上昇に転じています。

東証1部上場銘柄を対象にPBR1倍以下をスクリーニングで抽出してみましても、東証1部上場の全銘柄の6割を越す1070銘柄(5月25日現在)がそのようなディスカウント状態となっており、このような状態は長くは続かないというのも相場の習性の一つです。

マーケットで生き残るコツ

2010/05/19 No.453

例えばラッシュ時の地下鉄等で地震などの災害にあった場合には、発生初期の段階ではできる限り人の流れから遠ざかり、冷静に状況を観察することが鉄則だそうです。

恐怖心のままにその場を逃れようとする個々の行動は集団的パニックを引き起こし、その渦の中に巻き込まれることが最も危険だと言われます。昔、滋賀県の錦糸工場やロンドンの地下鉄で火災が起こり多数の犠牲者がでましたが、その殆どは狂乱状態となった人々が出口に殺到したことによる圧死だったそうです。

心の平静さを無くしてしまうことは非常に危険で、特に非常時は冷静に状況を判断できるかが運命を分かちます。非常時に冷静さを保つコツは、日頃においていくつかの事態を想定して対処方をシミュレートしておくことです。

相場の世界でもパニックというのは時々発生します。それは上昇局面でも下落局面でも起こる可能性があり、そういった集団的ヒステリー状態の行動というのは上記の例と同じく望まない結果を招く可能性があります。

ところで、玄人のギャンブラーというのは一つ一つの勝負に関しては意外に淡泊なものです。ギャンブルで生計を立てている彼らは、負けた時にはあとを引かずさらりと場を降り、資金を残します。そうでなければ生計を立ててゆくことは無理な話で、負けをあっさり認める代わりに勝てる時にはたくさん取ってトータルで勝てば良いという考え方です。

反対に一度の勝負に熱くなり、勝ちたい気持ちばかりが先に立ち、負けが膨らんでもその場を降りれないのが素人だそうです。

ギャンブルを一か八かの博打と捉えるか一つの事業として考えるかで結果が大きく違ってくるように、株式投資においてもそのような違いがあります。

プロの勝負師は「流れ」を重視します。ゲームや勝負事に限らず株式投資においても経験や知識、技量は大切ですが、「流れ」というものも結果に大きく影響します。流れは、時には順境や逆境であり、運不運という言葉に置き換えることが可能で、ついていない時は無理をしないというのが生き残りの鉄則です。

有利な状況や不利な状況というのは永遠に続くものではありません。昔から、名人と言われる相場熟練者は相場の流れについてゆくだけです。もちろん、知識や経験、技量という裏付けがあってのことですが、重要なのは天底を当てる能力ではなく、流れを見極める判断力です。流れに乗ればとことん取る反面、分が悪ければ決して無理をせずさっさと降りる、耐えるべき時には耐え、悲観も楽観もしないのが名人の名人たる所以です。

人間である限り喜怒哀楽はつきものですが、それを相場に持ち込んで成功した例はありません。商いは「業(わざ)六分に心四分」と言いますが、実際には「心七分、業三分」くらい、心の保ちようは大切です。

災害にあった時には、すべてを楽観的に考えたり、悲観に染まってしまわないのがサバイバルのコツだそうです。相場も然りで、上昇、横ばい、下落の三つの展開を想定し、それぞれについての判断のポイントと行動を常にシミュレーションしておくことが非常に大切です。

そういったことを常にやっておかないと、急ぐべき時に呑気に構え、落ち着くべき時にパニック状態に陥ってしまうことになり、望まない結果を招くことにもつながります。

反省なきところに対策なし、対策なきところに進歩なし

2010/05/12 No.452

「株券は売り放つまで利益を得たりと思うべからず」

上記はウォール街の格言で、途中経過がいくら良くても実際に利益を出さなければ何の意味もありません。どこまでも騰がり続け評価益も増え続ける相場を夢見ることは自由ですが、「評価益」(今売ればいくらの利益)というのは幻であり「取らぬ狸の皮算用」、どこかで利益を確定して実現益にしないとそれはいつまでも幻のままです。蒔いた種はどこかで収穫してこそ価値が生まれるというものです。

一方、「評価損」というのは冷厳なる現実です。一般的に人は自分に甘くやさしくできており、評価益に対してはもっと増えるだろうとの甘美な夢想にひたり、評価損に対してはいずれ損は消えてなくなるだろうという錯覚に溺れてしまうものです。しかし現実は反対で、評価益はあっという間になくなり、評価損は増えてゆくものです。

安いところで買って、高いところで売るというのは「云うは易し、行うは難し」の類で、多くの失敗例はその反対の事をやってしまうために起こるものです。「合理的にものを考え、つじつまの合わないことをするのが人間」と申しますが、これは多くの投資家に当てはまることで、急いで儲けよう、もっとたくさん儲けようとする心がそのような結果を招きます。

「市場にお金が落ちている」

一般的には投資家にとって「株というものは高いときには最上に、安いときには最低に見えるもの」ですが、一方では相場急落時に「市場にお金が落ちている」と感じる投資家もいます。

相場急落で評価損が拡大し、心が萎える投資家が多い中で「お金が落ちている」と思える投資家は、決して無理をすることはなく、資金的な余裕が心に余裕をもたらしており、急いで儲けようとは思っていません。それ故に、向こうからチャンスが転がり込んでくるという訳です。

「不手際でカネが減ったと悔やむなよ。預けてあると思えばすむなり」

赤ん坊は転ぶことで歩き方を覚えると言いますが、人は経験を積むことで進歩します。失敗を教訓として進歩するからこそ上達します。経験を教訓として活かすには計画が必要で、いつまでも行き当たりばったりで省みることがなければ進歩はありません。

投資においては良し悪し両方のプランを計画し、シナリオに加味すべき新たな要素が出現した場合には修正すべきとことろは修正し、結果に対しては反省と対策を考え、また新たな気持ちで相場に臨む姿勢が大切です。

「計画なきところに反省なし、反省なきところに対策なし、対策なきところに進歩なし」

逆日歩のイロハ

2010/04/28 No.451

信用取引では、資金以上の取引が可能で、相場下落時でも利益を狙う(下落をヘッジする)ことも可能です。

純粋な信用売り(カラ売り)の場合は保有していない株式を売却することになるため、どこからか株券を調達してくる必要があります。通常は信用買いの担保株券がカラ売りに充てられ、その役回りを証券金融会社が担っていますが、カラ売りが増加し株不足が発生しますと証券金融会社は外部から株券を調達することになります。

主な調達先は、多くの株式を保有する生保などの機関投資家で、機関投資家から証券金融会社への株券の貸出料が「逆日歩」となり、カラ売りした投資家が負担することになります。

3月決算期末は、配当や株主優待獲得のために保有している銘柄の下落をヘッジ(リスク回避)するため信用売りが増えるとともに逆日歩銘柄も増える傾向があり、一般に発行株式数が少なく浮動株(実際に市場に流通している株)比率が低い銘柄(品薄株)ほど逆日歩が高くなる傾向があります。

また、機関投資家がまとまった買いを入れる場合、注文を入れた証券会社は自社で調達できない分をカラ売りして対応することになります。そのため、一時的にカラ売りが急増するケースもあります。※4月20日夕刊「バスケット取引」参照

逆日歩が発生した銘柄では、信用取引の売り方が買い方に逆日歩を支払います。買い方はじっとしているだけで日歩が入ってきますが、売り方は日数計算で逆日歩(休日含む)を支払うことになり、それを嫌った売り方による損失覚悟の買い戻しが発生しやすくなります。

例えば株価100円の銘柄に対し1株当り1日1円などという額で逆日歩が発生することもあります。この場合1万株(100万円の売り建玉)に対し1日1万円、逆日歩は休日の日数分も含まれ累積しますので、逆日歩がついたまま休日をまたいだ場合はあっという間に負担が膨らむことになります。

逆日歩状態の売り方の買い戻しがなぜ「損失覚悟」になるかと申しますと、相場が下落すれば売り方は利益確定の買い戻しをしやすくなり、自ずと株不足は解消に向かいますが、逆日歩が増加または高水準で継続する状態というのはカラ売りしたにも関わらず相場が上昇し、新規のカラ売りが増えると同時に売り方の評価損が膨らみ買い戻しのチャンスがないまま経過している状態で、やがて逆日歩の負担が増して窮地に陥った売り方が損失覚悟で買い戻しを急ぐことになるからです。

そうした相場の特性から「逆日歩に売りなし」という格言が生まれましたが、一方で「逆日歩に買いなし」とも言われます。

目先的には売り方の買い戻しで相場が急上昇することも稀ではありませんが、カラ売りの増加(逆日歩の発生)は相場の先安感が強まっている証左とも言え、買い戻しで一時的に相場が上昇しましても、買い戻しが一巡すれば買い手不在となり反動安を招く恐れがあります。

「逆日歩に売りなし、逆日歩に買いなし」の格言は内容的には反対のことを言っていますが、それはどの部分を見るかの違いであり、どちらも相場の特性であることに違いはなく、的を射た格言の一つです。そうした観点から、逆日歩銘柄の目先の急上昇に乗じた素人の深追いは危険です。

尚、逆日歩が発生する前段階として、証券金融会社は貸し株の調達が困難になっていることを知らせるために「注意喚起」を行っています。※4月14日夕刊「信用規制」参照

業績予想情報

2010/04/21 No.450

決算発表シーズンを迎えます。東証1部上場銘柄に限りましても、来週1週間(4営業日)で334社、再来週(2営業日)が134社、その次の週(5営業日)は914社が決算発表を予定しています。

当然のことではありますが、相場は常に先読みで動きます。業績悪化が予想される場合は、事実が発表される前に下落基調となり、逆なら事実が発表される前に上昇基調となります。

また、発表された数値が市場予想と一致した場合はその時点での反応は限定的ですが、場合によりましては材料出尽くしとなり反転するケースがあります。決算内容が市場予想と大きく違った場合には株価は即座に動き、予想と事実の差を織り込み修正しようとします。

会社側が減益見通しを発表しましてもその数値が市場予想を上回れば株価は上昇し、反対に増益見通しでも市場予想との比較で下げる場合があります。企業の決算発表が相次ぐ現在は、業績発表後の選別色が強くなっており、市場予想と実際の数値の違いによって株価が大きく変動することが稀ではありません。

では一般的にいう「市場予想」とは具体的にはどこを見れば確認できるのでしょう? 

予想数値が分からないと妥当な水準(どこまで買えるのか、または売った方がよいのか)が分からず、決算の内容が市場予想を「上回った」「下回った」と聞きましてもどの程度の差異なのかも漠然としたままです。

企業は決算発表の前に、必要な場合は業績見通しの修正を発表します。また、会社四季報や日経会社情報にも独自の予想数値が記載されています。いずれも株価材料(それによって株価が変動する情報)ではありますが、それらは「会社予想」や「四季報予想」であり、一般的に言われる「市場予想」とは異なります。

アナリスト予想は市場予想の一つですが、同一銘柄に対する同一時期の判断でありましてもアナリストによって予想数値が大きく異なるケースがあります。その場合、相場の流れに沿うような数値が材料視される傾向がありますが、一般的で客観的な見方とは言いにくい点があります。

結論としては、投資家が注目する「市場予想」とは、具体的には「QUICKコンセンサス(業績予想)」を指しています。

金融情報を提供しているQUICK社が、独自の取材や分析に基づき企業の業績を予想している証券会社など約30社の直近6カ月以内のアナリスト予想を平均したものがQUICKコンセンサスです。今期と次期について売上高や利益の予想数値の平均値を算出し、予想値に変更があればコンセンサスの数値が更新されます。※但し、全銘柄がQUICKコンセンサスの対象となっているわけではありません。

コンセンサスには「一致」あるいは「合意」との意味がありますが、市場にて使われる場合は「おおよその一致した見方」という意味で、企業業績に関する「市場予想」(マーケット・コンセンサス)は「QUICKコンセンサス」と同義と言っても差し支えありません。

なお「QUICKコンセンサス」は、楽天、イートレード、マネックス、松井等の証券会社の「QUICKリサーチネット」(有料情報)で確認することができます。

相場は、理屈ではなく感情で動く

2010/04/14 No.449

禁煙やダイエットをしたほうが健康に良いと分かっているのに喫煙や間食が止められない。確率が極めて低いにも関わらず宝くじに大金を投じてしまう。底値で売り、高値で買うことがよくある・・・等々、いくらでも例をあげることができますが、「人間は常に合理的な判断をする」ということはありえません。

同じように「合理的な投資家によって効率的な相場が形成される(常に正しい価格がついている)」という効率市場仮説も実際には成り立たないのですが、この効率性の仮説では説明できない、そして統計的に規則性が確認されている現象を「アノマリー(変則性)」と呼びます。

例えば「節分天井・彼岸底」などもアノマリーの一つで、NY株式市場では5月以降弱含むケースをアノマリーとして「5月に売り抜けろ」という格言があり、NY株は10月に安値をつけるケースがあることから10月に買うと儲けやすいという意味の「10月効果」なども有名なアノマリーです。

株式市場では上記以外にもたくさんのアノマリーが確認されており、今回はよく知られているものをいくつかご紹介したいと思います。

【割安株(バリュー株)効果】
低PBRや低PERの銘柄のパフォーマンスが相対的に良いというアノマリーです。今現在キラキラ光っている銘柄が将来においても上昇しているとは限らず、農耕型のバリュー株投資で成果を上げている投資家は少なくありません。

【モメンタム効果】
上がった銘柄を買い、下がった銘柄を売るという順張り投資は市場平均のパフォーマンスを上回るというアノマリー。上昇時を例にしますと、好業績を連想させる断片的な情報を元に株価はしだいに下値を切り上げていきますが、その時点で買いの判断ができる投資家はまだ少なく、情報量が増すごとに参加者も増え株価も上昇傾向を強めます。そういった状況がしばらく続くためにモメンタム効果の有効性がいわれます。
しかし、統計的にモメンタム効果の賞味期限は長くて数カ月から1年程度で、過去数年という長い期間の株価の動きを基にした順張り戦略はマイナス・リターンになるケースが多いことも知られています。

【リターン・リバーサル効果】
市場全体が上昇すれば割安に放置された銘柄も「平均に回帰する」という現象です。上記の割安株効果と類似しますが、過去一定期間においてパフォーマンスが悪かった銘柄や業種は、その後の一定期間で良好なパフォーマンスになることをリターン・リバーサル効果と呼びます。モメンタム効果と比較して、より長い期間で確認できる現象です。
株式市場では、評価の高い銘柄については過大に評価され、評価の低い銘柄は過小評価となり、買われ過ぎ・売られ過ぎの状態になりがちです。そういった時に逆張り的な発想で、買われ過ぎの銘柄や業種の比重を軽くし、売られ過ぎの銘柄や業種の比重を高めるといったポートフォリオの入れ替えが行われます。この運用のシステムを「リターン・リバーサル・システム」または「リターン・リバーサル手法」と呼びます。

他にも1月や4月は上昇しやすいという現象を「1月効果(新年効果)」・「4月効果(新年度効果)」、1月から6月までの年前半のパフォーマンスは年後半のそれよりも良いという「上半期効果」、アナリストが調査対象にしていない銘柄の方が相対的に高いリターンになりやすいという現象などもアノマリーの一つです。

投資家は常に合理的で正しい判断をし、効率的な相場を形成するという仮説では、このような現象は説明できません。古い投資理論はこのような仮説を前提に理論を構築しようとしたために上記のような現象をアノマリーとして例外的な扱いをしました。しかしながら、実際の市場では投資家の自己都合、思い込みや思惑、不安定な心理状態に左右された(経済的合理性に反した)判断が優先されるため上記のような現象が起こります。

為替感応度と業種別2010年度想定レート

2010/04/07 No.448

株価が上昇する際の背景に一つに「業績が伸びる」との期待があります。業績変動の要因はいくつもありますが、輸出型の企業にとっては為替の水準が業績変動の大きな要因の一つで、企業が計画の段階で想定した為替レートよりも現実の為替水準が円安で推移すればその分だけ利益が伸びることになり、株価を押し上げる要因にもなります。

例えば、トヨタ自動車は円ドル相場が年間を通じて想定レートよりも1円違えば通年の営業利益が250億円変動します。トヨタの場合の250億円のように、為替相場が1円変動した場合の利益の増減額を「為替感応度」と言います。

09年は円高が進み、11月には14年4カ月ぶりに1ドル=84円台まで上昇しましたが、企業は下期の業績予想を行う際に想定レートを円高に修正しているため、現在の為替水準は企業業績にとって追い風となります。ちなみに自動車7社の09年下期の想定為替レートと感応度は下記のようになっています。

      (下期想定レート) (感応度:年間)
    トヨタ   90円     250億円
    ホンダ   85円     120億円
    日産自   85円     110億円
    スズキ   90円       6億円
    マツダ   88円      23億円
    三菱自   88円      12億円
    富士重   88円      25億円

尚、インドに足場を固めるスズキはインド・ルピー、オーストラリアで一定のシェアを持つ三菱自動車は豪ドル相場の影響を強く受けます。

また、電気業界の業績も為替相場の影響を受けますが、対ドルと対ユーロとでは感応度が違います。

            (対ドル)  (対ユーロ)
    トヨタ     250億円   50億円
    ホンダ     120億円   15億円
    パナソニック   20億円   13億円
    ソニー      10億円   75億円
    キャノン     91億円   50億円

このように為替相場は企業業績に大きな影響を与えるため、決算発表の際に業績予想の前提として示される想定為替レートは要チェックの項目です。

参考までに、3月時点での大企業製造業(業種別)の事業計画の前提となる2010年度の想定為替レートは下記のようになっています。

   業種       09年度   10年度 (上期    下期   )
 (製造業全体)    92.71→ 91.00(90.97 91.02)

 繊維         93.22→ 91.16(91.07 91.24)
 木材・木製品     92.24→ 91.35(91.36 91.35)
 紙・パルプ      94.34→ 91.64(92.46 90.84)
 化学         93.25→ 91.71(91.68 91.73)
 石油・石炭製品    92.61→ 92.12(91.76 92.42)
 窯業・土石製品    93.28→ 93.41(93.38 93.43)
 鉄鋼         92.42→ 90.17(90.44 89.92)
 非鉄金属       93.08→ 92.32(92.31 92.33)
 食料品        92.69→ 93.02(93.52 92.58)
 金属製品       92.51→ 92.02(92.00 92.04)
 機械         92.62→ 91.00(90.96 91.03)
  はん用機械     92.13→ 90.77(90.88 90.67)
  生産用機械     93.27→ 91.92(91.92 91.93)
  業務用機械     92.24→ 89.89(89.75 90.02)
 電気機械       92.84→ 90.21(90.23 90.18)
 輸送用機械      92.26→ 91.25(91.11 91.38)
  造船・重機、その他 94.20→ 93.46(93.25 93.65)
  自動車       91.86→ 90.80(90.68 90.92)
 その他製造業     93.34→ 92.15(92.01 92.29)
 (素材業種全体)   93.00→ 91.51(91.56 91.46)
 (加工業種全体)   92.64→ 90.87(90.82 90.91)

業界ごとの特色ある指標や企業の収益構造を理解して投資に活かす

2010/03/31 No.447

中長期的に見れば経済の方向性や企業業績の方向性と、株価の方向性は一致します。それ故にわずかな変化の兆候に対しても、相場は期待と不安で常に上がり下がりの変動を繰り返すことになります。

例えば、バルチック海運指数(BDI)の動向が材料の一つとなって海運株が動くケースがあるのもそのためです。

BDIとは、鉄鉱石や穀物など乾貨物(ドライカーゴ)の外航不定期船(ばら積み船)の運賃価格を集計して指数化し、英バルチック海運取引所が日々公表しています。海運株の業績に実際に大きく影響するのは生活雑貨を運ぶコンテナ船事業ですが、ばら積み船が利益稼ぐ事業であることに変わりなく、海運株の収益の方向性を見る上で、BDIは重要な指標となっています。

加えて、BDIは、中国など新興国の資源需要が強弱に影響されるため、世界景気の温度を推し量る指標としても注目されています。

他にDRAM価格と半導体株、貴金属価格と鉱山株などの関係も分りやすいと思いますが、資源価格や製品価格の相場動向、マクロ指標などは企業業績に大きな影響を与える場合が多く、どのような変化でどう反応したかを経験や知識として蓄えてゆくことが株式投資に役立ちます。

製紙業界に目を転じてみますと、業績を左右する要因の一つに原燃料価格があります。紙の原料は木材チップや古紙で、工場のボイラーなどの設備を動かすには原油や石炭といった燃料も必要になります。

紙の製造工程を簡単に説明しますと、まず木材チップと薬品を高温高圧の釜に入れて煮込み、木材繊維を取り出します。雑誌や新聞古紙を原料にする場合は、巨大なドラムの中に古紙と湯を入れ回転させて紙をほぐし、異物を取り除いて繊維を取り出します。その繊維を漂白してパルプを精製し、パルプを熱で乾燥させて表面を滑らかに加工してから薬剤を塗れば紙が完成します。

この製造工程をみれば、木材チップの価格や古紙価格がメーカーの業績に大きく影響するのが分ります。木材チップは海外の製材会社から相対取引で仕入れることが多く、指標的な価格がないため影響を測ることは難しいのですが、データが公表されている古紙価格(古紙問屋店頭渡し価格)については、国内最大手の王子製紙では古紙価格が1キロあたり1円の値下がり(上がり)で約40億円の営業増益(減益)要因になるとされています。

ちなみに、国内の古紙は中国に輸出される分も多く、そのため中国の需要動向に国内価格が左右されます。製紙会社は国内需要の低迷により、新聞古紙の買値は昨春から1キロあたり13円に据え置かれてきましたが、最近は輸出価格が国内価格を上回って推移しており、原料調達の理由から新聞古紙の買値を2円引き上げ1キロあたり15円にする方針を発表しています。

また、製紙業界はエネルギー多消費型産業のひとつで、生産設備や機械の運転に電気を使うほか、木材チップからパルプをつくる蒸解工程や、水に分散させたパルプをシートにし乾燥させる工程で、熱(蒸気)を必要とします。そうした設備を稼働させる電力を作る上で原油価格も業績の変動要因となっており、日本製紙グループ本社では原油が1バレル1ドル下落(上昇)すると年2億5千万円の営業増益(減益)要因になると言われます。

どの業界もそうですが、製品そのものの需要動向によって業績が変動することはもちろんのこと、製品製造におけるコスト変動が業績に影響を与えるということもチェックしておきたいポイントです。

今回は製紙業界を例に述べましたが、業界や企業によって収益構造が異なり、何に収益が影響されるかを予め理解しておけば先行きを見通す上で大変便利です。

理想買いと現実買い

2010/03/24 No.446

相場は様々な材料や思惑で動きますが、ユーフォリア(陶酔的熱狂)的な上昇が長続きすることは稀です。

例えば、マスクの製造・販売を手がけるダイワボウ(3107)はインフルエンザ関連としてイメージが定着しており、09年4月27日、メキシコと米国で感染が広がっている新型インフルエンザ(当初は豚インフルエンザ)について、世界保健機関(WHO)が「緊急事態」であるとの声明を発表したことを手掛かりに急騰しました。2日連続でストップ高、3日目の4月30日は高値引けとはなりませんでしたが一時ストップ高まで上昇しました。

インフルエンザの流行とともにマスクの需要が高まり、マスクの製造・販売を手がける同社の利益が膨らむとの思惑で投資家の買いが殺到、買いが買いを呼ぶ展開となったわけです。

この時の買いは「理想買い」と言い、業績への寄与が明らかでない内に先取りして買ってしまおうという動きです。

(実際には、ダイワボウにとってマスク関連の事業規模は小さく、業績への寄与は限定的で、むしろインフルエンザを警戒して外出が手控えられることで衣料品需要が減少することの方が同社の業績に影響を及ぼします。)

その後、約1月後には高値から46%の下落を演じ、その時の高値449円を抜いたのは3カ月半後の8月半ばのことです。

この銘柄は08年にも鳥インフルエンザで大きな相場を出し、その年の12月には国立感染症研究所がインフルエンザの流行期入りを宣言した翌日に高値514円をつけたものの、09年3月には174円まで急落しました。その時のシコリ(高値で購入し、その後の展開で売りたくても売れずに残ってしまった持ち株)が戻り待ちの売りとなって、相場の上値を抑えることになります。

09年は新型インフルエンザが市場で何度も話題になり、ダイワボウも戻り売りをこなしながら再度下値を切り上げます。そして厚生労働省が「本格的な流行期」と宣言した8月19日に506円の瞬間高値をつけ、その後はつるべ落としの下げとなり、一度もその時の高値を抜くことはありませんでした。

(流行期入り後、実際のインフルエンザの被害は専門家が事前に警告したほどの深刻さはありませんでした。)

相場が急騰する場面は主に短期資金が中心で、物色の変化も急激です。いずれも好材料で飛びついた投資家は、利食いのタイミングをみつけられずに評価損を抱えたケースが多かったはずです。こうした経過を振り返りますと、相場上昇を裏付ける好材料の出現は株価上昇の狼煙(のろし)ではなく天井圏の合図だったことが分ります。

参考: http://www.aqua-inter.com/special/446h.html

バンクーバー冬季五輪の際も、ウィンタースポーツに関連する銘柄が天井をつけたのは五輪が開幕する前の1月で、五輪開催期間中はむしろ売りが先行しました。おそらく株の素人だと思うのですが、天井をつけた後も「オリンピックはこれから始まるのに今売るのはどうかしている」との意見も聞かれたほどです。

一般的な投資家にとりましては、急騰している人気銘柄に飛び乗ることがいかに危ういことかお分かりいただけるかと思います。

理想買いは、時として実際の価値よりも大幅に株価を押し上げますが、期待先行で実態が伴わないと、買いが途絶え、いずれ元の水準に戻るのが相場です。相場格言ではこのようなことを「人気が一致すると裏目が出る」、「大喜びのところが天井圏」、「飛びつく魚は釣られる」、「天底では少数意見につけ」として注意を促しています。

ただ、一時の人気銘柄が全てこのような経緯を辿るかというとそうでもありません。材料が何度も蒸し返され、その都度上昇する銘柄もあります。また、期待先行で上げた後、調整入りとなりましても、業績が伸びれば再び注目される可能性があります。

「現実買い」と言って、好材料を株価に織り込んだ後に一旦その相場は終了しますが、時間の経過とともに業績への寄与が明確になり、それを改めて評価する形で買われ、再び上昇に転じるケースです。

相場は移り気で、物色対象も移り変わってゆきます。注目度の高いテーマでありましても、相場格言にある「売り、買い、休む」を繰り返すことが多く、売買する際は足元の人気はどうなっているかを冷静に観察することが重要です。

テーマを有効に活かすポイント

2010/03/17 No.445

「株価は需給で決まる」と言われますように、買いたい人(需要)が多ければ上昇しますが、買いを誘う要因として最も分かりやすいのが「テーマ」という観点です。

株式市場で言われる「テーマ」とは、政策やイベント、経済環境や時勢の変化等に伴い、収益拡大が期待できる特定の銘柄や業種をくくることを指します。

たとえば、ヒット商品や流行、環境問題、高齢化社会、景気回復に伴う素材需要の増加、オリンピックや万博、巨額インフラ投資・・・等々、これらの事象は関連する企業の収益を押し上げる可能性があり、「○○関連銘柄」として市場で話題になります。

直近では13日付日本経済新聞朝刊の「中国政府がIT(情報技術)を使って電力を効率的に供給する次世代送電網(スマートグリッド)を活用した電力供給体制の整備に4兆元(約50兆円)規模を投ずる方向で検討」という記事が材料となり、関連銘柄が上昇しています。

その他、クロマグロの国際取引が禁止されることへの懸念から「マグロ養殖関連」、環境に対する問題意識の高まりや各国の政策を背景に「原子力関連」や「エコカー関連」など、特定のテーマに沿った関連銘柄がその都度話題になります。

その時々において相場におけるテーマを理解することは、投資効率を上げるための最も有効な手段ではありますが、テーマを有効に活かすには二つのポイントがあります。

一つは、テーマの大きさ、つまり市場規模(経済効果)によって相場への影響度が変わってくるという点です。

例えば選挙が話題になった際に、(政策ではなく)選挙関連として選挙機材などを手がける関連銘柄が物色されることがありますが、それは一時的な相場の幕間つなぎになる可能性があると言えます。一方、世界的な景気回復がテーマとなった場合、具体的には日本における素材メーカーの代表格・新日鉄は2005年7月から07年7月までの2年間で株価は3倍超の値上がりを見せました。

もう一つのポイントは、テーマにも旬があるということです。例えばオリンピックやサッカーのワールドカップなど、スケジュールが決まっているものについては早い段階で物色され、イベントが始まる前に天井をつけるといったケースも少なくありません。こういったケースで相場を後追いすれば投資効率が悪化する恐れがあります。

旬と申しましても、単発に終わる短命のものや、途中上げ下げをしながら長い時間をかけて2倍、3倍に化ける銘柄もあります。単発・短命で終わるか、そうでないかはそのテーマの市場規模や広がりで決まります。

例えば環境というテーマには全世界的な広がりがあり、1年や2年で事切れるような小さな問題ではありません。また、環境というテーマは裾野が広く、例を挙げれば海水淡水化、クリーンエネルギー、電気自動車、蓄電池、スマートグリッド等々、いずれも市場規模が大きく、世界的な流れとして緒に就いたばかりのテーマです。スマートグリッド関連も、電線、電力線通信、電力量計、変圧器・配電機器、開閉器、電力会社等に分類することができます。

本誌スペシャル版では随時「○○関連銘柄」を紹介していますが、これらの多くは政策の後押しのある銘柄で、息の長い相場が期待できるいわゆる「政策に売りなし」の銘柄です。※上記の理由から、以前ご紹介した銘柄を改めて取りあげる場合もあります。

相場は循環しており、息の長いテーマでも関連銘柄は上げ下げを繰り返し、何度も蒸し返されます。つまり、息が長く(持続性のある)大きなテーマの関連銘柄の押し目が狙えば投資効率は格段にUPします。

経済を理解する上で、安上がりでしかも重宝するツール

2010/03/10 No.444

経済指標が発表されますと、事前の予想や前回の数値に比べどうだったかという点のみが注目されがちで、市場は敏感な反応を示しますが、一時的に反応した後は市場はすぐに次の話題に移ってゆくように見えるものです。

株式市場は景気の動向を先読みして動きます。一時的に見える反応でありましても、中長期的には景気や経済のトレンドと相場のトレンドは基本的に一致します。景気や経済の転換点ではそうとも限りませんが、景気や経済がどのくらいの速度でどの方向へ向かっているのかという視点は、株式投資を行う上で欠かせないポイントです。

景気・経済のトレンドを把握する上で非常に役立つのが日経新聞の月曜日朝刊に掲載されている「景気指標」欄です。ここには景気や経済の過去からの推移と現在の状況を把握するのに必要なデータがほぼ網羅されています。

景気指標欄の構成を簡単にご紹介しますと、左半分が国内の経済データ、半分の下半面が内外の商品相場データ、右半分の上半面は2段とも米国の経済データの場合と、米国と欧州、米国とアジアの経済データといった構成が3週で一巡します。景気指標欄のコラムも投資を考える上で役立ちます。

左半分の国内データをおおまかに分類しますと、経済全体を表すもの(GDP等)、企業活動に関するもの(日銀短観、鉱工業生産等)、業種別のデータ(粗鋼生産、小売業販売額、新車販売等)、雇用に関するもの(現金給与総額、有効求人倍率等)、物価に関するもの(国内企業物価指数、消費者物価指数など)、金融に関わるもの(コールレート翌日物、銀行計貸出残高、国際収支など)、他に市場データ(円相場、日経通貨インデックス、東証一部一日平均売買代金等)があります。

ちなみに、日本の経済が拡大しつつあるのか縮小しつつあるのかについては、GDPの増減で判断します。GDPが増加するということは、簡単に言えば給料が増えるということです。

GDPの内訳として最も影響が大きいのが個人消費で、3月8日付け日経朝刊の景気指標欄を見ますと、前年比増減率の数値で示されている消費支出(2人以上世帯)は、発表されている1月までの数値で6カ月連続の増加となっています。個人消費とともに「景気の両輪」とされている設備投資は(法人企業統計)は回復が遅れているものの、減少幅が縮小してることが確認できます。

他に企業活動について押さえておきたいのは「生産」と「在庫」です。景気が拡大する局面では企業は将来の売上増を見越して意図的に在庫を増やす一方、景気が縮小する局面では生産の縮小以上のスピードで在庫が増えてしまうことがあります。同じような在庫の増加局面でもこのような違いがあり、すなわち企業活動を見る上では生産の増減と在庫の増減の両方を見る必要があります。

2008年後半からの景気の落ち込み「100年に1度」と言われましたが、景気悪化の経過は、製品在庫率指数と稼働率指数製造工業の数値にも如実に表れていました。過去の経験したことのないほど在庫が急激に膨らみ、同じ時期に同じように設備の稼働率も急激に落ち込みましたが、両指数ともに09年2月に底打ちしています。

その後、まず在庫調整が進み在庫水準は順調に減少。一方、鉱工業生産指数と稼働率の回復が鈍く、企業は先行きについて慎重な姿勢を堅持している、あるいは現段階では設備の余剰感が解消されていないことが分りますが、両数値とも緩慢ながら上昇傾向を示しています。

景気指標欄には景気動向指数の推移も掲載されていますが、昨日発表された1月の数値(速報値)は99.9にまで上昇しており、リーマンショック以前の2008年7月以来の水準にまで回復しています。

尚、アメリカの経済指標については、最も景気に影響が大きい個人消費は一昨年の12月からマイナスが続きましたが、昨年10月以降は前年比でプラスが続いています。※米個人消費支出については来週月曜日の景気指標欄に掲載予定。

いくつかの例を取りあげてみましたが、景気指標欄で経済の動きを時系列で把握することは経済を読む力を養うことであり、その先にある相場の先行きを見通す上でも役立ちます。

日経の景気指標欄は、経済を理解する上で最も安上がりでしかも最も重宝するツールです。景気指標欄を見るようになれば、それまで別々に捉えられていた個々の経済ニュースもつながりをもって理解できるようになるはずです。

株価変動の限界(標準偏差)

2010/03/03 vol.443

毎朝配信のハロー株式【ミニ】や通常版月曜日夕刊にて、テクニカル上の節目となりえる水準として「+1σ(シグマ)」といった表記をしています。

これはボリンジャーバンドというテクニカル指標で、一般的にボリンジャーバンドが表す水準は相場変動の限界と捉えられています。

ボリンジャーバンドでは、むかし数学で習った標準偏差が用いられています。念のため簡単に説明いたしますと、偏差とは平均値からのデータの離れ具合(誤差)であり、標準偏差とはデータのばらつき具合を表しています。昔懐かしい「偏差値」の話を思い出していただければ分かりやすいと思います。データの分布を表し、平均点付近を頂点に山ようなの形に描かれた曲線の図が「偏差値」について学ぶ際に使われますが、同じ理論がボリンジャーバンドでも用いられています。

偏差値では平均値(偏差値50)から±1標準偏差の間にデータの68.3%のデータが内在し、平均値から±2標準偏差の間にデータの95.4%のデータが内在します。このことから、±2標準偏差を超えるような変動は異常値(ほぼ限界点)であり、そのようなトレンドは長続きしないということになります。

株価チャート上に描かれるボリンジャーバンドにおいて、真ん中の線は平均値であり、実際には移動平均線が用いられます。標準偏差は株価のばらつきが大きければ大きく、少なければ小さくなります。そのため、過去数日の株価変動が大きければ上下の線の幅が広まり、値動きが小さければ幅が狭くなります。

株価の「ばらつきが大きい」とは、株価の変動幅が大きいということであり、「ボラティリティ(価格の変動性)が高い」などと表現し、逆に、株価の変動幅が小さい時は、「ボラティリティが低い」と言います。

標準偏差は“σ(シグマ)”で表され、ボリンジャーバンドと株価の関係については、現在の株価が±2σをはみ出したところにある場合、株価が値動きの限界点にあると見られます。ただし、その時点で必ず株価が反転、もしくは値動きを停止するといった意味ではなく、統計的にそうなる可能性が極めて高いということです。

ボリンジャーバンドの見方は、移動平均線乖離率によく似ていますが、乖離率には様々な場面に通用する具体的な水準というものがありません。しかし、ボリンジャーバンドには常に具体的な水準が描かれているのが特徴です。

ボリンジャーバンドを見る場合は、株価が+2σを超えて行くような場合はそろそろ目先的に上値が重い局面と判断し、-2σを超えて下落するような時にはそろそろ目先の底値圏が近いと判断します。

もちろんボリンジャーバンドにもダマシはありますが、ボリンジャーバンドの幅が狭い状態から、幅が広がってボラティリティが高まる時には相場のトレンドが大きく変化することが多いので要注意です。

尚、ボリンジャーバンドは個別銘柄で使われることは少なく、相場全体の現在位置を確認する程度の利用のされ方が一般的です。計算式等を覚える必要はありませんが、ボリンジャーバンドを見かけた際にはこの話を思い出して頂ければ幸いです。

月別効果と曜日効果

2010/02/24 vol.442

「節分天井・彼岸底」「天神天井・天神底」等々、マーケットにおいては季節性や月別の相場の傾向を示したアノマリーがいくつかあります。

「1月効果」というのもその一つで、過去のデータから1月の相場が高くなる傾向は、世界の主要な市場で観察されます。

また、日本においては「4月効果」も見られます。過去50年の日経平均株価の月別の平均騰落率は1月がダントツの高パフォーマンスですが、1月に次いで勝率(月初に比べ月末が高い)が高いのが4月です。これは、新年度入りの資金流入で上昇しやすいことが背景にあります。

また、NY市場では「Sell in May,and go away」という有名な教訓があります。直訳すれば「5月に売って、どこかへ行ってしまえ」となりますが、通常は「5月に売り抜けろ」と訳されています。一般的にこの根拠はあまり説明されていませんが、1月効果などで相場が上昇し堅調な地合いが続いた場合、その後買い疲れ感などから年央に相場が一服しやすい傾向が指摘されています。

ちなみに「Sell in May,and go away」の後に「butremember to come back in September」 と続き、「5月に売り抜けろ。ただし、9月に戻ってくるのを忘れるな」となります。

1949年5月以降のデータでS&P500種指数とTOPIX(東証株価指数)における「5月末~9月末」と「9月末~翌年5月末」の平均騰落率を比べた場合、どちらも「9月末~翌年5月末」のパフォーマンスが「5月末~9月末」のそれを上回るという結果がでており、上記の教訓を裏付けています。

その他に「10月効果」という現象も指摘されています。10月はパフォーマンスがあまり良くないというもので、「暗黒の木曜日」や「ブラックマンデー」など10月は歴史的に暴落が多い月と認識されているため、投資家はナーバスになりネガティブな材料に敏感になりやすい月と言えます。

また、日本において10月は「稲穂相場」とも言われます。実った稲穂を刈り取る時期(物入りの年末に向けて利益を確定する時期)で、実った稲穂が頭を垂れるように上値が重くなる傾向が指摘されています。反対に10月相場が上昇した場合には、およそ7割の確率で年末相場も高くなり、本来上値の重い10月に上昇する相場はその勢いが年末まで持続する傾向があります。

ところで、相場急落に対して「暗黒の(ブラック)」という表現が使われたのは1929年10月の「暗黒の木曜日」(NYダウが2%下落)が最初ですが、1日での下落率は1987年10月の「ブラック・マンデー(暗黒の月曜日)」(NYダウが22%下落)には及びません。

暗黒の月曜日に限らず、月曜日は相場が安くなりやすいというデータがあり、この「月曜日効果」もアノマリーの一つとされています。

過去50年の日経平均株価とNYダウについて曜日別に調べた騰落率のデータでは、日経平均もNYダウも月曜日のパフォーマンスが最も悪く、水曜日のパフォーマンスが最も良好という結果が得られています。一つには、(投資家が冷静に受けとめる時間を確保するため)週末に悪いニュースが出やすいということがあげられます。

一般的に、気分が乗らず、憂うつな気分で迎える人も多いことから、休み明けの月曜日は「ブルーマンデー」と呼ばれ、方向感が定まらず小安い展開となる週明けの取引を「月曜ボケ」とも言います。アメリカには「マンデーレモン」(レモンは欠陥品を表す俗語)という表現があり、休み明けの月曜日は仕事に対するモチベーションが低く、欠陥品が出やすいことを言い表しています。

また、週末に上昇した相場は月曜日も高くなる傾向があり、週末安は月曜日安になりやすい傾向も指摘されおり、週末の流れが週明けに持続する確率はおよそ6割。それを「週末効果」と呼び、週末の流れを持続した際の月曜日の変動幅は大きくなる傾向があります。

もちろん上記のことは必ずそうなるということではなく、長い期間で見た場合の相場の傾向を示したものですが、興味深いデータの一つと言えます。

備えあれば迷いなし

2010/02/17 vol.441

良薬は口に苦しと申しますが、時として真実を受け入れることは苦痛を伴います。都合の悪いことには蓋をして目を背けたくなるのが人情です。

株式投資を行う際、儲かる算段ばかりが先に立ちますが、上手く行く時ばかりとは限りません。例えば1000万円で200万円儲かることもあれば、残金が200万円になってしまうこともありえるのが相場です。全金融資産が1000万円で2割の損益、つまり200万円の増減は許容範囲でも、800万円の損失という現実は、資金的にも精神的にも立ち直りを困難にさせてしまいます。

故に株式投資では大損を避けることが鉄則となります。古人曰く、

「商い仕掛けたるとき、まず損銀をつもるべし。後悔を先へ慎むべし。」(八木虎之巻)

「最初に計りし損より多く損すべからず。」(商家秘録)

株式投資では利益を得ることもあれば、損になることもあります。それは至極当たり前のことですが、予め損失の許容範囲を見積もり(自身でその状況を想定し)、それ以上に損にならないようにし、後々後悔するようなことは計画の段階で慎む(例えば仕切り直しのための損切り値段を決めておく)べきだということを言っています。後々後悔するようなこととは、大儲けを狙って一挙に全資金をつぎ込んだり、信用取引で買い付けした後に思惑が外れその銘柄が下げるままに損失が大きく膨らんでしまうようなケースです。

この点はどの古典も同じことを言っており、中国の菜根譚には「既に済んでしまった過失を後悔するのは、将来に起こりうる失敗を予防するのには及ばない」とあります。済んでしまった後でああすれば良かったこうすれば良かったと悔やむより、そうならないようにするべきであると。

同じく商家秘録曰く、

「商いに三つの慎みあり。第一油断、第二不巧、第三不敵なり。」

油断して利益確定を怠り、見切る時を外し、慎重さを欠き(不巧)、ムードで売り買いし、思慮浅く相場の上げ下げで迷い、資力不相応な商いをし、それを恐れず(不敵)、わずかの変動でも持ち堪えることができず、結果、利益を得るところを損にて手仕舞い、底値で売って、天井で仕込むようなことが往々にしておこります。それは油断、不巧、不敵が原因であるとしています。

また、水鳥の羽音に驚いて逃げ散った平家の例えよろしく、自信がなく始終迷ってばかりでは戦略も何もありません。

資力不相応に大きな資金を投じてしまいますと、切羽詰まった余裕のなさから少しのことでも動揺し、そこから迷いが生じてきます。迷いは計画と願望とをすり替え、適切な対処を難しくします。端的な例が指し値の変更または取り消しで、それでチャンスを逸してしまうようなケースが多々あります。

思いつきやムードで簡単に変更してしまうような計画は初めから無きに等しく、実行されなければやがて計画することもなくなります。そうなれば終始思いつきの投資ばかりで、向上のチャンスをも逸することになります。

さらに、損した場合にそれを一挙に取り返しに行こうとして、さらに大きな損を被るというケースも少なくありません。勝ちに乗じて油断が生じた時や一発勝負で取り返しに行った時というのは大きなリスクを取っていることが多く、そういった時に大損となりがちです。

初めに書きましたが、大損は避けなければならず、そのような事態にならぬように慎むべきで、事前に計画をしそれを実行することが肝心です。

古人曰く「備えあれば迷いなし」と。

ユニーク検索サービス その2

2010/02/10 vol.440

先日は無料メールマガジンで日経のユニークな検索サービスをご紹介させていただきましたが、今回はその2としましてメディネットグローバルが無料で提供している企業価値検索サービス「Ullet(ユーレット)」をご紹介させていただきます。

ユーレットの特徴は、決算書や業績などの数値を視覚化することで経営状態を一目で分るようにしてある点と、横断的に複数の企業を比較できる点にあり、ほぼ全ての上場企業を対象にしています。

百聞は一見に如かずで、下記サイトで検索ワード上位の企業や検索窓に企業名や銘柄コードを打ち込み、個別企業の画面をご覧くださいませ。

Ullet(ユーレット) → http://www.ullet.com/

棒グラフ化された売上高等の指標は過去5年からの推移が表示され、さらに「詳しく見る」で詳細が表示され、上段の銘柄名の横にある業種をクリックしますと同業種における各経営数値でのランキングが表示されます。

ちなみに経営方針の転換や経営リスクの高まりなどから市場の注目度がアップした際にはトップ画面にある「最新の検索ワード」のランキングに登場します。

決算書の項目はカラーの円グラフで表示され、【左半円:企業のお金の使い道】【右半円:企業に入ってくるお金】といった簡潔な説明の他に、グラフにカーソルを重ねますと項目別の数値があらわれ、決算書が直感的に分るように工夫されており、様々な角度からランキングを表示することが可能で他社との比較も容易になっています。

ニュースやブログで取りあげられればその都度更新され、金融商品取引法に基づく有価証券報告書等の開示書類に関する電子開示システム「EDINET」に提出された書類へのリンクや、企業が発表したニュースリリースなども網羅し、役員の関してはその経歴まで確認できる充実ぶりです。

また、大株主検索もユニークで、ある企業や個人が株主として名を連ねる企業名が横断的に検索できます。例えば「財務大臣」や「スティールパートナーズ」などのキーワードで検索しますと、それらが大株主として名を連ねる企業がたちどころに表示されます。

ユーレットの情報をクリックしてゆくことで、様々な角度からその企業を見ることになり、あるいは企業群を簡単に比較することが可能となっていますので、すぐに使うことがなくても企業を知る上で知っておくと便利なサービスです。

参考としまして、公共工事の入札に参加する業者の企業規模・経営状況などの客観事項を数値化した経営事項審査の観点から企業価値を検索できるサービス「Ullet-経審」もあります。こちらは大企業の他、中小の建設業も含めて全国の約16万社の決算書や評点等の確認が可能となっています。

※参考:Ullet-経審 → http://keishin.ullet.com/

余裕を生む投資のやり方

2010/02/03 vol.439

株価が上昇している時は、さらに上昇しそうだとの期待と焦りが心中を占め、急落している時は底なしのような恐怖を感じる。そのようなことは誰もが経験することです。

株式相場は、いくつもの小さなうねりが集まりさらに大きなうねりを形成していきます。昨日、今日上がっている銘柄もどこかで休息を入れ、休息後にまた動き始めるというようなことの繰り返しです。

総悲観の中にあった2003年4月、7603円を付けた日経平均株価は、その後4年間で2.4倍にも上昇しました。多少の動きに動揺せず、先行きを達観できる投資家は大きな利益を手にするチャンスに恵まれます。

反対に、値動きに動揺しやすい人は、買い値や損益にばかり気を取られ、もっと儲けたい(=損したくない)という思いが強くなりすぎてしまい、そのことがかえって理想に反する結果を生じさせるものです。その習性を客観的に認識し、修正しないと、高値づかみと安値売りが続き、大きな上昇相場でも利益を残せません。

そういった心理から来る失策を防ぐためにどうするか。簡単なことですが、一つは上昇の勢いが強い時に飛びつかないことです。上昇トレンドを形成している銘柄でありましても上昇と下落を繰り返しているわけですから、上昇後に下落し、下落が止まった後、次への動きが見え始めた時に買いを入れることができれば投資効率は高まります。

そしてもう一つの方法は、投資対象の銘柄を複数持ち、そしてそれを継続してウォッチするということです。

日々の相場におきましても、その時々において主役が入れ代わり立ち代りしています。相場全体の動向は指数の動きで知ることができ、個別銘柄も全体の動きの影響を受けますが、実際には個別銘柄はそれぞれ固有のうねりを形成しながら相場を形成しています。

つまりは、銘柄それぞれに売買のタイミングが違って当たり前ということです。例えば異なった値動きの2銘柄を継続してウォッチし(同時に保有するということではありません)、異なる銘柄の売買タイミングのズレを有効に活用することができれば、適度に利喰いを入れながらも投資効率が高まります。

何事も「余裕」が大事です。資金と銘柄を分散させ、尚且つタイミングを分散させることができれば、常に資金的余裕を維持することになり、ひいては精神的余裕さえ生まれます。これと反対に精神的、時間的、資金的余裕のない商いで継続して資産を増やすことはまず無理です。

狙っていたA社株の買い付けができる前に折り悪く急騰してしまったような場合は、それを追いかけずに頭を切り替え、継続してウォッチしていた銘柄の中から安値圏にあるB社を狙うということができるようになれば上々です。銘柄はそれのみではなく、相場はその日だけではありません。チャンスは何度でも巡ってくるという考え方が重要です。そのように考えれば買い焦る必要もなくなり、さらなる高値を望んだばかりに売り逃すということも減るはずです。

できればいくつかの銘柄を継続してウォッチし、それぞれに上下変動のクセ、季節的な変動要因、上昇や下落のきっかけとなった材料等を把握することに努める等、投資においても研究や勉強は必須です。そうすることで様々な投資プランの組み立てが可能となり、ここぞという時にいつでも出動できる態勢を手に入れることができます。

それが、常に余裕を持って楽しみながら投資を行うための秘訣でもあります。

相場は常にあり、決すれば進むべし

2010/01/27 vol.438

相場に関わってきた投資家たちは、長年の経験を踏まえて相場での出処進退の方法や心構えを相場格言として今に残しています。改めて今回はその中からいくつをご紹介させていただきます。

『迷わば休むべし。相場は常にあり、決すれば進むべし』
『時機を逸したる時は次の機会を待つべし』

買おうかどうか迷うことは多々あります。そうして株価を見ているうちにますます上昇を続けます。一大決心して、結果「ジャンピング・キャッチ」してしまうことはよくある話です。
相場は今日だけでなく、銘柄はそれだけでもありません。決心がついた時には機を逃さず進み、決心がつかない時は「休むべし」。迷いに迷って結論を出した時には、すでにタイミングを逸している可能性が高いものです。時機を逸した場合には、発車したバスに慌てて飛び乗るよりも、次の機会・別の機会を待つのが得策です。

『高値圏での好材料発表は売り、安値圏での悪材料発表は買い』

これは「材料出尽くし」「知ったら仕舞い」の、相場ではよくあるパターンで、「買いやすい相場は下がり、売りやすい相場は上がる」とも言われます。一般的に投資家は好材料で強気になり、悪材料で弱気になりますが、それが天底付近での話になりますと、そこは少数意見につくのが相場の鉄則です。

『下げた時、騰げた時に、基本方針を曲げるな』

とりたててこのように言われるのは、投資家は相場の騰落に動揺して「この水準になったら買う」「この水準に近づいたら売る」などといった当初の方針を忘れ去ってしまいがちだからです。「もうちょっと、と思う心(欲)がチャンスを逃す」と言われますように利喰いや損切りのチャンスを逃し、さらには騰勢につられて山(天井)で買ってみたり、下げる相場に怖くなって谷(底)で売ってみたりと、動揺した心のままに動けばとかく逆をやりがちです。これは慎みたいものです。

『天災には買い向かえ、人災には手を出すな』『突発事件は売るな』

大きな災害や突発事件に見舞われた時、一時的に売り一色となるようなケースでも、ファンダメンタルズ(業績や事業環境等)がしっかりしてさえいれば、相場は短時日のうちに冷静さを取り戻します。

投資とは「相場に勝つことはなく、自分自身に克つことである」と、理屈では理解できましても、様々な事象や情報に影響された心理状態によって合理的な判断から遠ざかってしまうのが投資家の常ではありますが、そのようの時にこそ相場格言を思い返していただければ幸いです。

陥りやすい人間心理の罠

2010/01/20 vol.437

その時の思い込みや感情で判断し行動すると、結果として不利益を被ることがあります。つまり人間は間違った判断を犯しやすく、その原因の多くは下記にあげるような人間心理の一般的な傾向に起因しています。

  • ギャンブラーの誤謬
    コインを投げて5回続けて表が出れば、次は裏になる確率が高いという思い込み。1回ごとの確立は五分五分であるにも関わらず、どちらか一方が有利と判断してしまうところに間違いがあり、単に「下げ続けたから上がるだろう」あるいは「上げ続けたから下がるだろう」はギャンブラーの誤謬である可能性があります。
  • 異時間の選択
    時間の経過が意思決定に影響を及ぼす例です。たとえば、1カ月前に必ずやると決めていたことを、毎日「明日からやろう」とずるずる先延ばしてしまうケースです。損切りや利喰いの目標水準を決めておいたにも関わらず、実際には実行できないといった場合です。
  • 所有効果
    一旦所有してしまえば、それ以前と比べてそのモノを高く評価する傾向が誰にでもあります。銘柄に執着してなかなか手放せなくなってしまうのも所有効果の影響とみることができ、保有する前の計画や予測と、所有した後での行動が違ってくるというケースです。
  • プロスペクト理論
    展望理論または期待理論とも言われますが、下記のような例題で説明されます。
    ・例題A まずあなたに1万円を与えます。そして次の二つの選択肢のうち、どちらを選びますか? 1)さらに5千円をもらう。 2)50%の確立でさらに1万円を得るが、50%の確立で何も得ない。
    ・例題B まずあなたに2万円を与えます。そして次の二つの選択肢のうち、どちらを選びますか? 3)5千円の確実な損失。 4)50%の確立で1万円を失うが、50%の確立で何も失わない。
    1と3の回答は結果としてどちらも同じで確実に1万5千円が残り、2と4の結果も同じもので1万円になるか2万円が残るかは五分五分です。しかしながらこの実験では例題Aに対し8割の回答者が1番の「確実な利得」を選び、例題Bでは7割の回答者が「より小さい損失になる可能性に期待」して4を選択しており、全体として全く同じ問題であるにも関わらず正反対の回答結果となっています。
    通常、リスクは回避したがるものですが、実際に自分が持つ銘柄が下がってくるとその銘柄を長く持ってしまう傾向があります。これは先の所有効果とも関係してきますが、一般的に利益は素早く確定し、損失に関しては現実よりも願望を優先させてしまう傾向があるということで、「損切り」が遅れる理由はこの理論で説明されます。
  • 現状維持バイアス
    現在の状況から変化するかしないかの判断に関して、人は現状を維持しようとする傾向があります。
  • 認知的不協和低減
    失敗や不安な心理状態が続きますと、その次はその状態をあくまで正当化しようとする心理が働きます。現状を直視できずに、認めたくないという心の葛藤で、バランスを保とうとするかのように、現状から自分の有利な情報を探し出そうとします。このような、心の不協和を中和しようとする無意識的な心理状態がこれです。そして次第に現実を無視(放ったらかし)します。こうして塩漬けの株ができ、「株は怖い・難しい」という結論に達していきます。

以上、誰もが一度は経験したことのありそうな一般的な傾向をいくつかご紹介いたしました。一般的に人はこういった傾向があることを自覚することが大切で、このような心理状態に陥った時というのは間違った選択や判断をしている可能性が高いと言えますのでご注意ください。

出来高から見た相場の真空地帯とは

2010/01/13 vol.436

相場において、ある一定の水準までくるとそれまでの動きが鈍くなることが多々あります。下落している最中であれば下値の堅さを感じる水準(下値支持帯)、上昇過程であれば上値の重さを感じる水準(上値抵抗帯)です。

平均的な売買コストである移動平均線や前回反転した際の高値や安値などが上値抵抗や下値支持となるケースもありますが、同じように過去の出来高も影響します。

通常の株価チャートでは出来高の推移が時間の経過に沿って横軸に並びますが、株価の水準ごとに縦軸に出来高を配した「価格帯別出来高チャート」もあり、出来高を縦軸(価格帯別の累積出来高)で捉えることでそれぞれの価格帯における抵抗の大きさを測ることができるため、その後の相場展開を推し量る際に役立ちます。

例えば、ある日またはある価格帯において出来高が急増した後に株価が下落に転じた場合、次に上昇に転じて再びその価格帯にまで達すると、高値付近で飛びついて損を被っていた投資家が買い値付近で手仕舞おうとする動き(ヤレヤレの売り)があるため、その水準では上値が重くなる傾向があります。その水準を上抜けするには必然的に出来高の増加を伴います。

反対に、株価が売られる過程で売買高が増加し、下方に累積出来高が多い価格帯がある場合は、その水準では多くの買いが入る可能性を示唆しており、下値が堅い価格帯とみることができます。

また、ある一定の範囲内で動くもち合い相場(レンジ相場)では同じような水準で反転を繰り返すため必然的にその水準(または範囲)での累積出来高が多くなります。

価格帯別出来高チャートでは、どの価格帯でどのくらいの出来高ができたか一目でわかるようになっており、過去にたくさんの商いをした価格帯を探ることにより上値の重さや下値の堅さをある程度推し量ることが可能となります。

過去において大商いをした価格帯というのは、下げるにしましても上げるにしましても抵抗が強く、反対にその水準を超えた場合や、過去において累積出来高の少ない価格帯に差し掛かった場合には、流れに抗する力がなくなり少ないエネルギーでスルスルと動いてしまうものです。動き(流れ)を阻害する摩擦や抵抗が少ないという意味で、こういった価格帯のことを株式市場では「真空地帯」と呼びます。

真空地帯に突入した相場は、信用取引の反対売買(例えば反転上昇したい場合の売り方の買い戻し)が加わることで動きに弾みがつきやすくなります。「ここからの上値には分厚い雲がありなかなか突破できない」「XXX円の壁」「ここから上は真空地帯、上値は軽い」などという相場解説の際の表現は、ほとんどの場合この価格帯別出来高を根拠にしています。

ちなみに、現在の日経平均株価は2008年のリーマン・ショック時に急落した水準に差し掛かっており、累積出来高の少ない真空地帯に達しつつあります。


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